GFORCE SOFTWARE Minimonsta2|2020年代生まれのソフト・シンセ12モデルを徹底レビュー

さまざまなメーカーから日々新しい製品が誕生しているソフト・シンセ。しかし数の多さから、まだ十分にその魅力を知られていない製品もしばしば。そこで本企画では、2020年代以降にリリースされたソフト・シンセ12モデルを、シンセに造詣が深い、毛蟹(LIVE LAB.)、Naive Super、林田涼太、深澤秀行の4名が紹介。ここでは、GFORCE SOFTWARE Minimonsta2を毛蟹(LIVE LAB.)がレビューします。

エミュレーションにとどまらない独自性

GFORCE SOFTWARE Minimonsta2|価格:21,998円(価格は為替レートにより変動)

GFORCE SOFTWARE Minimonsta2|価格:21,998円(価格は為替レートにより変動)

Requirements
●Mac:macOS 10.13以降
●Windows:Windows 7以降、2GBのRAM
対応フォーマット:AAX/AU/VST3/スタンドアローン

概要

 1970年に発売され、現在の音楽史上最も有名なシンセの一つと言っても過言ではないMOOG Minimoog Model D(以下Model D)。ソフト・シンセを開発する数多くのメーカーがエミュレーションしたシンセを発表していますが、今回紹介するMinimonsta2もその一つです。開発したGFORCE SOFTWAREは、イギリスに拠点を構え、ビンテージ・シンセを範とするソフト・シンセを多数リリースしています。

収録された音色のバリエーション

 プリセットはブラウザーから検索可能です。フォルダーで大別されていて、オリジナルのModel Dを意識したプリセット集“Classic”、初代にあたる“Minimonsta1”と製品名を冠した“Minimonsta2”に加え、イエスのキーボーディストとして知られるリック・ウェイクマン監修のプリセットも用意されています。“Minimonsta2”プリセットを開いてみたところ、非常に“宇宙的”な印象を感じました。Model Dにはエフェクトが搭載されていないのですが、本製品にはデジタルのリバーブ/ディレイのエフェクトを搭載。これらが“Minimonsta2”プリセットで効果的に多用されていることで、重厚なアンビエンス、空間の広さを感じるサウンドになっていました。作家視点だと、“歌ものに強烈な1トラック”を付加するというより、“劇伴/映像的に空間を構築するトラック”という方向に適性を感じました。

キャラクター

 アナログ・シンセのエミュレーションでありながら、前述の空間系エフェクトもあり、良い意味でアナログ的ではない印象です。ソフトなのでもちろんビンテージ・ハードウェア特有のランダム性からは解放されていますが、ピッチや挙動の不安定さを再現した“VINTAGE”ノブが搭載されていて、音色のキャラクター作りとして活用できます。

操作性

 独自の機能や、前述のエフェクト・セクションなどが実装されていることから、パッと見の操作部、コントロール・ノブの数が多いです。有識者にはなじみ深い外見でもあり幅広く音作りが可能ですが、シンセ初心者の方は慣れるまで多少時間が必要かもしれません。各セクションのノブは感度が高めで変化が分かりやすく、MIDIコントローラーなどの外部デバイスのノブに割り当てれば、実機を触っているような感覚を得られます。

オシレーター

 Model D同様の3VCO仕様。オシレーターの音色自体が、そもそも少し明るめに作られているような印象で、先述の“良い意味でアナログ的ではない”の一番の理由かと思います。OSCILLATOR-1には“Pulse Width”というパルス幅を調整するノブも搭載されており、音作りの幅が広いです。

フィルター/エンベロープ/その他、モジュレーション

 エンベロープやラダー・フィルターのほか特筆すべき点として、パラメーターを独立してLFO、ADSRを調整できる、“X-LFO”“X-ADSR”を搭載。エフェクトを含むほぼすべてのパラメーターにかけられます。あまりにも自由度が高いです。

▼LFOとADSRをほぼすべてのパラメーターに

X-LFO、X-ADSRを使えば、Minimonsta2のほぼすべてのパラメーターに、LFO、ADSRをかけられる。もちろん複数同時にアサインできるので、細部までこだわった音作りが可能だ

X-LFO、X-ADSRを使えば、Minimonsta2のほぼすべてのパラメーターに、LFO、ADSRをかけられる。もちろん複数同時にアサインできるので、細部までこだわった音作りが可能だ

独自の機能/特徴

 Minimonsta2には先にも触れた“VINTAGE”ノブや“X-LFO”“X-ADSR”といった独自の機能を多数搭載。中でもエフェクトはやはり秀逸。リバーブのフィルターやモジュレーションといった音作りの面もさることながら、セクションとして独立しており、鍵マークのロック・ボタンを押すとプリセットを切り替えても設定を維持できるようになっています。外部のエフェクター的な柔軟な発想です。

▼ディレイ、リバーブは設定を固定できる

ディレイ、リバーブそれぞれの枠の右上には鍵のマークのロック・ボタンを装備。こちらを押すと、プリセットを変えた際にもエフェクト設定は固定されるという便利な機能だ

ディレイ、リバーブそれぞれの枠の右上には鍵のマークのロック・ボタンを装備。こちらを押すと、プリセットを変えた際にもエフェクト設定は固定されるという便利な機能だ

総評

 個人的にアナログ・シンセのエミュレーション系は、“シンプルにアナログの操作性やサウンドの良さを維持したまま、どれだけ手軽にそこを逸脱し、アナログでは再現不可能な自由度を得られるか”が肝だと考えています。その意味で、Minimonsta2は実験性にあふれた素晴らしいシンセです。

 

毛蟹(LIVE LAB.)
LIVE LAB.所属の作曲/編曲/作詞家。ReoNaなどさまざまなアーティストへ楽曲提供を行うほか、スマートフォン向けゲーム『Fate/Grand Order』のCMソングやBGMにも参加する。

製品情報

関連記事