2021年に発表した「Telefon」がSoundCloudの全世界ウィークリー・チャート1位を獲得し、一躍話題となったLAUSBUB。メンバーの岩井莉子と髙橋芽以は札幌在住の現役大学生で、11月に1st EP『M.I.D. The First Annual Report of LAUSBUB』をリリースした。曲作りの中心を担う岩井の、制作拠点となる自宅兼スタジオで、二人に話を聞いた。
アプリでシンセの使い方を習得
二人が出会ったのは高校の軽音楽部。声をかけたのは岩井の方からだったそう。「バンドを組むミーティングみたいなものがあったときに、私が好きなアーティストをいっぱい書いた紙を持ってきていて、それを見て反応してくれたのが芽以だけだったんです」
髙橋も「私はすごく詳しいというわけではなかったんですが、莉子に出会ってからいろいろと興味を持ちはじめました」と語る。それからほどなくしてLAUSBUBとしての制作を始めた二人。それまで岩井は楽曲を作ってはいなかったが、シンセには大きな興味を持っていたという。
「APPLE iPadにシンセのアプリを入れて遊んでいたんです。AUDIOKIT PRO Audiokit Synth One、KORG Module、MOOG Minimoog Model D Synthesizer、IK MULTIMEDIA Syntronikとか……App Storeにあるシンセのアプリは大体インストールしていました。意識的に勉強していたわけではないですが、基本的なシンセの使い方はそこで身に付いたのかなと思います」
LAUSBUBが注目を集めるようになった楽曲「Telefon」は、まだ十分に機材がない中で制作された曲だった。
「最初に「Telefon」をSoundCloudにアップしたときは、芽以のスマホのマイクで歌を録っていました。機材はほとんどLAUSBUBを始めてからそろえていったものです。メディアで大きく取り上げてもらったときがたまたまグッズを展開させた直後で、その売り上げで制作環境を整えることができたので、すごくありがたいなと思っています」
徐々に機材が増えていくことについて、髙橋は「LAUSBUBとして新しくできることや曲の幅が増えていっているので、莉子の探究心というか、その姿勢がすごいと思います。この部屋が機材に侵食されていく過程が面白いです」と語る。
岩井が最初に買った実機のシンセはKORG MS-20 Miniで、「初めて触ったときにめちゃくちゃ感動しました。ずっとシンセを画面の中でしか触ったことがなかったので、ツマミを指で回せるだけでこんなに面白いんだって。音の太さも全然違いました」とのこと。現在のメイン・シンセとなるのはKORG Minilogue XDだ。
「ライブで使うにはプリセットが無いMS-20 Miniだと音作りが大変なため購入しました。AAAMYYYさんや砂原良徳さんが使っているのを見て、“このシンセならこの音が出せるんだ!”と思って購入してみたところ、期待していた通りの音を出してくれています」
曲作りはドラムをすべて打ち込むところから
当初はiPadとiPad用のAPPLE GarageBandで制作していた岩井だが、現在はABLETON Liveを使用している。知り合いから薦められて導入を決めたそうだ。
「実機のシンセを同期しやすいし、あとモジュラー・シンセにも興味があって、後々導入するならLiveを使っといた方がいいというアドバイスを受けて使いはじめました。エフェクト・プラグインやドラム音源もLiveに付属するものを使っていて、まだ全部把握し切れていないのですが、面白そうなエフェクトを選んで試してみるというのを繰り返しています」
制作手順としてはドラムから打ち込むことが多いという。
「ドラムの構成を最初から最後まで全部打ち込んで、上モノを足していっています。それも元々iPadを使っていた影響が大きくて、iPadのスペックが足りなくてドラム以外のパートでGarageBandが落ちてしまうためパートごとに分割して作っていて。そのときの習慣がまだ残っています」
独特な声質と歌唱法に魅力を持つ髙橋のボーカル。その録音についても岩井のこだわりがあると、髙橋は語る。
「6月に発表した「Solaris」の歌はこの部屋で録ったんですが、歌っている途中で“何か違うね”となって、ビョークの動画を見せられたり(笑)。ただ自分でも好きなアーティストの曲を聴いて、“こういう歌い方は面白いな”とか感じたところに影響されている部分もあると思います」
APPLE MacBook Proを中心とした機材類は、2段のキーボード・スタンドに配置。「ライブと同じセッティングになっていて、ライブのたびに解体して持ち出しています」と岩井は話すが、現状MacBook Proはライブで使用していない。
「Liveで作った音源を分割してサンプラーのROLAND SP-404SXに入れて、オケを流しています。みんなパソコンを使っているから、私たちは使わないぞっていう(笑)。無い方がステージ映えするかなと思って今は置いていないんですけど、ちょっと限界なので次からは置くかもしれないです」
結成から2年、LAUSBUBとしてまだ1st EPをリリースしたばかり。これからの可能性に満ちあふれたスタジオは、次に訪れたときにまた別の姿を見せてくれるだろう。
「今のところ制作環境としてはちょうどいいかなと思っています。ゆくゆくはモジュラー・シンセも取り入れてみたいし、ドラムの打ち込みももっとうまくなりたい。いつかMax for Liveも扱ってみたいですね」
Equipment
DAW System
Computer:APPLE MacBook Pro
DAW:ABLETON Live
Audio I/O:STEINBERG UR22C
Outboard & Effects
Chorus:TC ELECTRONIC June-60
Multi-Effects:KORG Kaosspad KP2、LINE 6 M13
Recording & Monitoring
Mixer:MACKIE. Mix12FX
Monitor Speaker:YAMAHA NX-50
Headphone:VICTOR HA-MX100V、SONY MDR-CD900ST
Microphone:AUDIO-TECHNICA AT4040、SENNHEISER E935
Instruments
Synthesizer:KORG Minilogue XD、MS-20 Mini、TEENAGE ENGINEERING OP-1
Groove Machine:BEHRINGER TD-3-AM
Sampler:ROLAND SP-404SX
Guitar:SQUIRE Jazzmaster、FENDER JAPAN Mustang
LAUSBUB
2020年3月北海道札幌市の同じ高校の軽音楽部に所属していた、岩井莉子(右/g、syn)と髙橋芽以(左/vo、b)によって結成。11月に新曲、過去曲のリテイク版、細野晴臣「Sports Men」のカバーなどを収録したEP『M.I.D. The First Annual Report of LAUSBUB』を発表した。
Recent Work
『M.I.D. The First Annual Report of LAUSBUB』
LAUSBUB
(極東テクノ)
次に欲しい機材は…?
モニター・スピーカーのJBL 308 MK2です。EPの録音とミックスをしてくれた齋田崇さんが薦めてくれて、実際に聴いてみたら小さい音でも高域から低域までバランス良く聴こえました。自宅でもスタジオ・レベルで作業ができたらいいなと思っています(岩井)。
特にまだ何にするかは決めていないですが、オーディオ・インターフェースが欲しいです。私も自宅で歌を録れる環境を構築したいので。ABLETON Liveも扱えるようになりたいですね(髙橋)。