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西田修大のプライベート・スタジオ|Private Studio 2023

西田修大のプライベート・スタジオ|Private Studio 2023

今、ライブやレコーディングで最も求められているギタリストの一人、西田修大。中村佳穂、君島大空、KID FRESINO、UA、石崎ひゅーい、SongBook Trio、odol、Ortanceなど、引く手あまたとはまさにこのこと。また荒木正比呂とともに中村佳穂の『NIA』をプロデュースし、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの『プラネットフォークス』ではサウンド・プロデュースを手掛けるなど活躍の場を広げている。そんな西田の創作空間は2つのスペースで構成されていた。

曲作りにはGR-1を多用

 西田がギター演奏のみならず、楽曲制作に本腰を入れるようになったのは、2019年の年末だったという。

 「中村佳穂バンドのリハーサル後に、メンバーみんなでご飯を食べながら、“これからもっと良くしていくにはどうしたらいいだろう?”みたいな話をしてたんです。そのとき、“俺、もっと頑張る”って宣言したんですよ。その場にいた荒木正比呂や北川昌寛、深谷雄一などは機材に詳しいし、制作に対しても深い考えを持っているので、彼らに教えてもらってまずはスピーカーを買い替えるところから始めました。で、その次になぜかSEQUENTIAL Prophet Xを買ったんです」

 そのきっかけは、2020年1月に観たボン・イヴェールの来日公演だったという。

 「そのライブがめちゃくちゃ良くて。自分の理想とするようなサウンドスケープでした。そのステージ上にProphet XやSEQUENTIAL Prophet-6が何台かあったんです。それで俺もProphetがあったらボン・イヴェールみたいな音を出せるんじゃないかと。まあ、出せないんですけど(笑)」

 その後もリズム・マシンのELEKTRON Machinedrumやグラニュラー・シンセのTASTY CHIPS ELECTRONICS GR-1など、ハードウェアの電子楽器を入手したとのこと。

 「自分は曲を作るときに、和音やメロディ、リズムといった楽曲の構造的なものから作るというより、良い音色を見つけたり、イメージした音色を作って、そこに重ねていくことのほうが多いんです。極論を言えば音色ありき。好きな楽器、そして、そこから出る固有の音が大きなモチベーションになっています。だから、GR-1は使用頻度がすごく高くて、楽器を弾いて録ったものやSpliceなどのサンプルを突っ込んだりして加工するのが好きなんです。Prophet Xもサンプルをレイヤーできるところがすごく好きで、そういう機能に自分の作曲はすごく影響を受けています。ハードウェアにサンプルを入れると、自分の体に近づく感じがするんです」

 DAWはABLETON LiveとBITWIG Bitwig Studioをほぼ半々の割合で使い、たまにAPPLE Logic Pro Xも使用するそうだ。

 「LiveはABELTON Push 2を使いたいときによく使います。Push 2では音程が縦に4度間隔で並ぶので、これがギターと同じでボイシングなどが鍵盤よりわかりやすいんです。Push 2を演奏することでの偶発性を楽しみたいときはLiveですね。Bitwig Studioはサンレコでも連載を書かせていただきましたけど、ギターやシンセなどで出したい音があって、それを加工したいときに使う場合が多いです」

自宅スタジオの521 Studio。コンピューターはAPPLE MacBook Pro、その左手のAPPLE iPad Proは楽譜表示用、右手はオーディオ・インターフェースのUNIVERSAL AUDIO Apollo Twin。後ろのディスプレイにはBITWIG Bitwig Studioが立ち上げられている。モニター・スピーカーはFOCAL Shape 50。右側に見えるヘッドフォンは同社Litsen Pro

自宅スタジオの521 Studio。コンピューターはAPPLE MacBook Pro、その左手のAPPLE iPad Proは楽譜表示用、右手はオーディオ・インターフェースのUNIVERSAL AUDIO Apollo Twin。後ろのディスプレイにはBITWIG Bitwig Studioが立ち上げられている。モニター・スピーカーはFOCAL Shape 50。右側に見えるヘッドフォンは同社Litsen Pro

メインのオーディオ・インターフェースとして使用しているUNIVERSAL AUDIO Apollo X6。オーディオの入出力はこちらにまとめられ、Apollo T winはモニター・コントローラー&DSPとして利用

メインのオーディオ・インターフェースとして使用しているUNIVERSAL AUDIO Apollo X6。オーディオの入出力はこちらにまとめられ、Apollo Twinはモニター・コントローラー&DSPとして利用

上段は8chのAD/DAコンバーター、BEHRINGER Ultragain Pro-8 Digital ADA8000。Apollo X6で入力数が足りない分を補うためにADATオプティカルで接続して利用。下段はアンバランス/バランス変換器のTASCAM LA-40。DAW内のサウンドをペダル・エフェクターで加工する際に用いている。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのアルバム『プラネットフォークス』に参加した際に、後藤正文より譲ってもらったものだそう。

上段は8chのAD/DAコンバーター、BEHRINGER Ultragain Pro-8 Digital ADA8000。Apollo X6で入力数が足りない分を補うためにADATオプティカルで接続して利用。下段はアンバランス/バランス変換器のTASCAM LA-40。DAW内のサウンドをペダル・エフェクターで加工する際に用いている。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのアルバム『プラネットフォークス』に参加した際に、後藤正文より譲ってもらったものだそう。

キーボード・スタンド上段左からABLETON Push 2、TASTY CHIPS ELECTRONICS GR-1、作曲家/ピアニストの兼松衆から借りているというSEQUENTIAL Prophet-6 Module。下段はSEQUENTIAL Prophet Xで、その右手はELEKTRON Machinedrum。その奥にはKORG Minilo gue(左)とYAMAHA PSS-A50(右)も見える

キーボード・スタンド上段左からABLETON Push 2、TASTY CHIPS ELECTRONICS GR-1、作曲家/ピアニストの兼松衆から借りているというSEQUENTIAL Prophet-6 Module。下段はSEQUENTIAL Prophet Xで、その右手はELEKTRON Machinedrum。その奥にはKORG Minilo gue(左)とYAMAHA PSS-A50(右)も見える

左はサンプラーのROLAND SP-404SX、右は膨大なペダル・エフェクター・コレクションのほんの一部。時計回りにサステイナーのGAMECHAN GER|AUDIO Plus Pedal、ディレイのDIGITECH PDS8000、テープ・シミュレーターのCHASE BLISS Generation Loss MKII、グラニュラー/ディレイのMood

左はサンプラーのROLAND SP-404SX、右は膨大なペダル・エフェクター・コレクションのほんの一部。時計回りにサステイナーのGAMECHAN GER|AUDIO Plus Pedal、ディレイのDIGITECH PDS8000、テープ・シミュレーターのCHASE BLISS Generation Loss MKII、グラニュラー/ディレイのMood

歌録りや配信に利用できる地下アトリエ

 西田の自宅である521 Studioは、もともとアパレル・ブランドphablic×kazuiのデザイナー、TAKIZAWA KAIが住んでおり、TAKIZAWAの小豆島移住の際に借り受けたそう。

 「KAIさんは中村佳穂の衣装を担当されていたことで知り合い、僕も衣装でお世話になるようになりました。しかも、KAIさんは自宅近くの地下にアトリエもお持ちで、そこも移住のときに貸してくださったんです」

 車で5分ほどの距離にあるそのアトリエ、W/M basementには、TAKIZAWAの服や靴、西田の楽器周りを担当しているYOUSAYSOUNDSのビザール・ギターをはじめとする楽器や機材、それに西田のアンプ類などが保管されており、残りの1/3ほどのスペースがスタジオとして確保されている。

 「ここはエンジニアの岡直人、YOUSAYSOUNDSの宇佐美裕聖、Yasei Collectiveのギタリストでカメラマンの斎藤拓郎、カメラマンのKANA TARUMI、それにKAIさんと俺の6人でW/Mというチームを組み共同管理しています。中村佳穂の『NIA』の歌録りに使ったり、君島大空とのデュオやCHAIのユナちゃんとのデュオの配信で使ったりしました。今はパソコンやスピーカーを持ち込んで、そういうことを行っていますが、今後はスピーカーやデスクを常設して、ここで録音したものを自宅で編集したり、逆に家で作ったサンプルをでかい音で鳴らせるようなシームレスな環境を作りたいと思っています」

自宅スタジオの近くにあるアトリエ、W/M basementをスタジオとして使用。ドラムは石若駿が引っ越し祝いに置いてくれたというBONNEY製で、石若駿プロデュース・モデルのプロトタイプ。YOUSAYSOUNDSによるビンテージ・アンプやビザール・ギターも多数保管

自宅スタジオの近くにあるアトリエ、W/M basementをスタジオとして使用。ドラムは石若駿が引っ越し祝いに置いてくれたというBONNEY製で、石若駿プロデュース・モデルのプロトタイプ。YOUSAYSOUNDSによるビンテージ・アンプやビザール・ギターも多数保管

 プレイヤーとして多忙な日々を送りながらも、ギタリストの枠を飛び越えたクリエイティビティを発揮し続ける西田。そのモチベーションの原点について尋ねると、まず「人柄も魅力的で、作るものも素晴らしい友達に恵まれているというのは大きいと思います」と仲間の存在を挙げた。さらに、続けてギターの重要性についても言及する。

 「より単純にエゴイスティックな動機としては、ギターをもっとかっこよく響かせたいから、というのもあるんです。そもそも曲がかっこよくないと、ギターもかっこよくはならないと思っていて。トラックが良くないのにギターだけかっこいいってないんじゃないかなと。だから、単にギターのためだけでも、もっといろんなことをやりたいんです」

右から西田のメイン・ギター、1959年製のFENDER Jazzmaster、EPIPHONE Zephyr、FENDER Bass VI

右から西田のメイン・ギター、1959年製のFENDER Jazzmaster、EPIPHONE Zephyr、FENDER Bass VI

ギターは1959年製Jazzmasterに次いで使用頻度が高いというMARTIN GT-70、アンプはライブで使用しているMAGNATONE Super Fifty-Nine M-80 Combo

ギターは1959年製Jazzmasterに次いで使用頻度が高いというMARTIN GT-70、アンプはライブで使用しているMAGNATONE Super Fifty-Nine M-80 Combo

西田の所有ギターの一部。手前はFENDER Custom Shop Jazzmasterで、エレクトリック・シタールやGIBSON Firebird、ASTURIASのガット・ギターなども見える

西田の所有ギターの一部。手前はFENDER Custom Shop Jazzmasterで、エレクトリック・シタールやGIBSON Firebird、ASTURIASのガット・ギターなども見える

ギター録りでメインに使用しているというUNIVERSAL AUDIO OXとコンボ・タイプのギター・アンプ、CARR Viceroy。前面にもSTRYMON BlueSky(リバーブ)、Dig(ディレイ)などのエフェクターが並ぶ

ギター録りでメインに使用しているというUNIVERSAL AUDIO OXとコンボ・タイプのギター・アンプ、CARR Viceroy。前面にもSTRYMON BlueSky(リバーブ)、Dig(ディレイ)などのエフェクターが並ぶ

西田のエフェクタ−・ボード。ライブからレコーディングまでこの2つは必ず使用しているとのこと

西田のエフェクタ−・ボード。ライブからレコーディングまでこの2つは必ず使用しているとのこと

Equipment

 DAW System 
Computer:APPLE MacBook Pro
DAW:ABLETON Live、BITWIG Bitwig Studio、APPLE Logic Pro X
Audio I/O:UNIVERSAL AUDIO Apollo X6、Apollo Twin
Controller:ABLETON Push 2

 Outboard & Effects 
Mic Preamp:BEHRINGER Ultragain Pro-8 Digital ADA8000
Low Impedance Adapter:TASCAM LA-40

 Recording & Monitoring 
Monitor Speaker:FOCAL Shape 50
Microphone:AKG C214
Headphone:FOCAL Listen Pro

 Instruments 
Keyboard & Synthesizer:SEQUENTIAL Prophet X、TASTY CHIPS ELECTRONICS GR-1、KORG Minilogue、YAMAHA PSS-A50
Rhythm Machine & Sampler:ELEKTRON Machinedrum
Guitar & Bass:FENDER Jazzmaster(1959年製)、Custom Shop Jazzmaster、Stratocaster、Custom Shop Telecaster、Bass VI、GIBSON Firebird、EPIPHONE Zephyr、MARTIN GT-70
Amplifier:CARR Viceroy、MAGNATONE Super Fifteen Combo、UNIVERSAL AUDIO OX

 

西田修大

西田修大
ギタリスト、プロデューサー。中村佳穂のアルバム『NIA』ではギタリストとしてのみならず、盟友の荒木正比呂とともにプロデュースを務めたほか、君島大空、KID FRESINO、UA、石崎ひゅーい、SongBook Trio、odol、Ortanceなどの作品やライブで活躍。

 Recent Work 

『NIA』
中村佳穂
(SPACE SHOWER MUSIC)

次に欲しい機材は…?

 現在のアトリエは防音していないので、夜にドラムをたたくのは控えているのですが、今後は夜にもドラムをたたいたり、サブウーファーを鳴らしながらミックスできる環境にしたいと思っています。また自宅のほうは新しいモニター・スピーカーの導入を検討していて、同軸のGENELEC The Onesシリーズが気になっています。合わせてGLMを使ってキャリブレーションも行ってみたいです。

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