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マリオ・カルダートJr.のプライベート・スタジオ|Private Studio 2022

マリオ・カルダートJr.のプライベート・スタジオ|Private Studio 2022

膨大なシンセと楽器をそろえる自宅横の一軒家を改装した創造空間

 ビースティ・ボーイズやジャック・ジョンソンを手掛けてきた音楽プロデューサー/スタジオ・エンジニアのマリオ・カルダートJr.。ロサンゼルスのイーグル・ロックにある自宅の隣の家を、一軒丸ごとスタジオに改造したという。

Interview/Translation:Hashim Bharoocha Photo:Akiko Bharoocha

1階ではレコーディング、2階ではミックスや最終作業を行う

 「3年前に隣の住人が家を売りに出して、幸運なことにその家を買うことができた。20年隣人が引っ越すのを待っていたんだ(笑)。自宅の隣にスタジオがあると便利だよ。周りにあまりほかの家が無いから、夜までレコーディングしていても文句を言われたことは無い。機材はプロ用のスタジオと変わらないんだ」

 

 延床面積は全部で200㎡くらいだという。部屋の使い分け方などについても話してもらった。

 

 「2階にメイン・ルームがあって、ミックス、編集、曲作りの最終作業を行っている。1階はライブ・ルームになっていて、バンドのレコーディングに使うことが多い。テープ・マシンやAVID Pro Toolsにレコーディングするんだ。1階でレコーディングした素材をアナログ・ミキサーでミックスしてそのまま完成させることもあるよ」

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2階メイン・ルームのデスク周り。DAWはAVID Pro Tools|HDを使用している。モニター・スピーカーはATC SCM45A ProとAURATONE 5Cに加えて、GENELEC 1031Aを外側に設置

 2階メイン・ルームのモニター・スピーカーATC SCM45A Proをとても気に入っていると話すカルダートJr.。一方でミックスの際はAURATONE 5Cを使うことが多いという。

 

 「以前はもう少し小さなATC SCM25A Proを使っていたけど、 SCM45A Proはもっとローエンドがフルなサウンドなんだ。リファレンスとしては優れたスピーカーだけど、一般人は同じリスニング環境ではないからAURATONEをメイン・ミックスとバランス確認用に使用している。1990年代初期に買ったモデルで30年もたっているけど、小さいスピーカーの方がバランスを取りやすいし、使い方を熟知しているから作業しやすいんだ。あとは、もう一つ小さいクロック・ラジオを3つ目のモニターとして使っている。このクロック・ラジオですべての楽器の音が聴こえれば、どんなシステムでも聴こえるということだよ。だから1万ドル、200ドル、50ドルのスピーカーを使い分けているんだ」

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2階メイン・ルームのシンセやアウトボード類。左上のMOOG Minimoogはユニークなサウンドが作れるので最も気に入っていると話すカルダートJr.。右隣のKORG ARP 2600は、アンビエントなサウンド・エフェクトやフィルターとして使っている

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2階メイン・ルームに設置されたラック。ROLAND SH-101は気に入っているシンセの一つだそう

 友人のエンジニアに部屋の鳴り方をチェックしてもらったというカルダートJr.。自分たちの耳を使ってパネルやスピーカーの位置をいろいろと調整したそうだ。

 

 「1階のライブ・ルームには、ミュージシャンたちが同時に演奏できるようにアイソレーション・パネルをセットしてある。100%のアイソレーションは無理だけど、パネルを取り入れることで、自然に楽器の音をブレンドできるんだ。壁は防音していないから、外を走るバスやトラックの音が聴こえてしまうこともあるけど、ロック・バンドのレコーディングなら問題にはならないよ」

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1階ライブ・ルームのデスク周り。DAWはAVID Pro Tools|HDを使用している。コンソールはAMEK Einsteinで、ルパート・ニーヴ氏設計のプリアンプとEQを搭載。1980年代後半~1990年代前半のモデルで、ダスト・ブラザーズのマイク・シンプソンから譲ってもらったそうだ。モニター・スピーカーはGENELEC 8050A

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1階ライブ・ルームに設置されたドラム・セットWFL 1958

さまざまな音楽に対応できるレコーディング環境

 リラックスしてレコーディングできる、アットホームなスタジオを作りたかったと語るカルダートJr.。今回のスタジオを作る上でこだわったことは、家の構造を生かしながら機能的なスタジオにすることだという。

 

 「ミュージシャンにはここをスタジオだと思わせたくないんだ。プロフェッショナルなツールはそろっているけど、高価なスタジオに居るような感覚にはならない。そんな心地良くて、リラックスできる空間にしたかった。あまり改造はしていないけど、少しガラスを取り入れたりもした。外の景色や空が見えるようにした方が、心地良くレコーディングできると思ったんだ。数年前にここで『ツギハギカラフル』をレコーディングした東京スカパラダイスオーケストラも、楽しんでくれたようだったよ」

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上からROLAND Juno-60、HOHNER Clavinet D6、RHODES MK1 Suitcase Seventy Three。Juno-60はよく使うものの一つだという

 近年はブラジルやアフリカのアーティストを手掛けることの多いカルダートJr.。もう一つのテーマとして、あらゆるジャンルをレコーディングできる環境にしたかったという。

 

 「メロウな音楽、ジャズ、ブラジル音楽、アフリカ音楽もここでレコーディングしたことがある。Jupiter & Okwessというアフリカのアーティストの最新作もここでレコーディングしたよ。コンゴ出身の7人編成のバンドで、みんな一緒にライブ演奏をしてレコーディングしたんだ。オーバー・ダビングもしたけど、ドラム、パーカッション、ギタリスト2人、ベースがみんな同時に演奏して一発録りした。アフロ・ロック系のバンドだったよ」

 

 システム全体のルーティングについて尋ねてみると、このスタジオにおける次の目標についても話してくれた。

 

 「2階中央にあるボーカル・ブースがメイン・ルームとアシスタント・エンジニアのサブルームにつながっている。ボーカル・ブースではボーカルをレコーディングしたり、パーカッションやキーボードを追加するんだ。実はまだ1階と2階はルーティングしていないから、Danteネットワーク・システムを取り入れてすべての部屋のインターフェースをつなげることが次のステップだよ」

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2階のボーカル・ルーム。マイクはNEUMANN U87をセッティングしている

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2階にあるアシスタント・エンジニアのミックス・ルーム。モニター・スピーカーはATC SCM25A Proを使用している

Equipment

 DAW System 
Computer:APPLE Mac Mini
DAW:AVID Pro Tools|HD
Audio I/O:AVID 192 I/O
Controller:ICON Platform M+

 Outboard & Effects 
Mic Preamp:NEVE 1073、API 512C、EMI TG2-500、TELEFUNKEN V78、AEA RPQ 500
Compressor:MANLEY Stereo Variable Mu Limiter Compressor、EMI TG12413 Zener Limiter、GATES Level Devil M5546A、UNIVERSAL AUDIO 1176、NEVE 2254、609、etc.
Reverb:DEMETER RV-1 Real Reverb、FURMAN RV-1、EMT 140、etc.

 Recording & Monitoring 
Mixer:AMEK Einstein
Monitor Speaker:ATC SCM45A Pro、SCM25A Pro、AURATONE 5C、GENELEC 8050A
Monitor Controller:HERITAGE AUDIO RAM System 2000
Microphone:NEUMANN U47、M49、U64、U87、EARTHWORKS SR30、SENNHEISER MD421、E409、AKG D12、SHURE SM57、SM7、AUDIO-TECHNICA AT4050、 GEFELL UM57、ROYER LABS SF-12、etc.
Headphone:AUDIO-TECHNICA ATH-M70X

 Instruments 
Keyboard & Synthesizer:MOOG Minimoog、ROLAND Juno-60、SH-101、KORG ARP 2600、RHODES MK1 Suitcase Seventy Three、WURLITZER 200A、etc.
Rhythm Machine & Sampler:UNIVOX SR-55、ACE TONE Rhythm Ace、ROLAND TR-808、TR-909、TR-727、AKAI PROFESSIONAL MPC60、E-MU SP-1200、etc.
Drums:WFL 1958

 

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マリオ・カルダートJr.

ブラジル出身の音楽プロデューサー/スタジオ・エンジニア。ビースティ・ボーイズやジャック・ジャクソン、Gラヴ、マニー・マーク、デイ・ワンなどの作品を手掛けたことで知られる。

 Recent Work 

『80 Anos』
Orquestra Afro Brasileira
(Day Dreamer / Amor in Sound)

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