SPITFIRE AUDIO Originals Intimate Grand Piano|ピアノ音源14製品レビュー

親しみのある楽器でありながら千差万別。それがピアノの面白さであり、膨大な数のピアノ・ソフト音源が市販されている理由でもあるのでしょう。本企画では話題の14製品をピックアップして、作編曲家の牧戸太郎さんにレビューしていただきました。また、各製品の試聴音源では、牧戸さんにタイプの異なる3つのフレーズを制作していただいたので、好みに合うサウンドを探してみてください!

フィルム・ミュージックでの表現にこだわった個性派

SPITFIRE AUDIO Originals Intimate Grand Piano|3,916円(為替によって変動)

SPITFIRE AUDIO Originals Intimate Grand Piano|3,894円前後(為替によって変動)

 シネマティックな音源を多数リリースしているSPITFIRE AUDIOは、ピアノ音源のラインナップも王道から個性派まで幅広い。ここで取り上げるOriginals Intimate Grand Pianoは柔らかなサウンドが特徴的。ビンテージのSTEINWAY Model Aを収録したサンプリング・ベースの音源で、バイノーラル・マイクのNEUMANN KU100をはじめ、コンデンサー・マイク、リボン・マイクの3種類が使用されている。シンプルな使い勝手も魅力的だ。

ユーザー・インターフェースは至ってシンプル。左側の3本のスライダーでリボン、コンデンサー、バイノーラルという3種のマイクのバランスを調節。右側にはリバーブやアタックのレスポンスを調節するTIGHTNESS、そしてハンマー・ノイズやペダル・ノイズの音量調節がある

ユーザー・インターフェースは至ってシンプル。左側の3本のスライダーでリボン、コンデンサー、バイノーラルという3種のマイクのバランスを調節。右側にはリバーブやアタックのレスポンスを調節するTIGHTNESS、そしてハンマー・ノイズやペダル・ノイズの音量調節がある

サウンドの印象

 ウナ・コルダを踏んだときのような柔らかくまろやかなサウンドをより強調した音作りが施されている個性的な音源です。ウナ・コルダとはグランド・ピアノの3つのペダルのうち左端に用意されているもので、ソフト・ペダル/弱音ペダルとも呼ばれます。優しい表現が必要なときによく使います。

 鍵盤を強く弾けば明るい音色にも変化しますし、実はモジュレーション・ホイールを最大まで上げると、最も強く弾いたときの明るいサウンドのままで演奏できます。画面上で言えば、上段に2本あるスライダーのうちの右側を上げることになります。ただしこの場合、ベロシティによる強弱はなくなります。ベロシティ最大で演奏している状態と考えればよいでしょう。

 プリセットされている音色は、3種類あるマイクのバランスやリバーブなどの違いで、音色そのものは同じです。マイクによる音の違いですが、リボン・マイクは温かく優しい雰囲気で、コンデンサー・マイクはそれよりも明るいサウンドです。バイノーラルは演奏者のポジションで収録しているとのことで、その通りのステレオ感があります。

演奏性

 柔らかい音色を生かした叙情的な演奏に最適でしょう。モジュレーション・ホイールを上げて明るい音にすればリズム・バッキングも可能です。

ジャンル感

 本音源は映画音楽や劇伴などに適しています。例えば、夢の中に入り込んだようなシーンであったり、記憶を探るようなシーン、リリカルな表現が必要なときにはぴったりでしょう。

音作りの自由度

 3種類のマイク・バランスで質感を変えられるほか、4つのパラメーターがあります。REVERBはその名の通りリバーブ、TIGHTNESSはアタックのレスポンスをより速くできるノブで、HAMMERSはハンマー・ノイズのボリューム、そしてPEDALはサステイン・ペダルのノイズ・ボリュームです。

まとめ

 まさにこの音源のような叙情的な音が欲しいというシチュエーションは劇伴の仕事をしていると必ずあります。そんなときに重宝する音源だと感じました。

製品情報

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  • 価格:3,894円前後(為替によって変動)
  • 音源方式:サンプリング
  • 容量:約4GB(ダウンロード時)
  • ベース・モデル:STEINWAY Model A
  • 対応フォーマット:AAX/AU/VST

REQUIREMENTS
●Mac:macOS 10.13〜12(INTEL/ARM、64ビット) ●Windows:Windows 8〜11(64ビット) ●6GB以上のディスク空き容量、インターネット環境

 

牧戸太郎

牧戸太郎
東京音楽大学作曲指揮専攻映画放送音楽コース卒業。その後、作編曲家として活動を開始し、竹内まりや、Hey!Say!Jump、King & Princeなどの編曲を手掛けるほか、映画『兄に愛されすぎて困ってます』、WOWOW『向こうの果て』、テレビ東京『先生のおとりよせ』、日本テレビ『ぴーすおぶけーき』、Hulu『社畜OLちえ丸日記』など多数のドラマ、映画の劇伴でも活躍している。

【特集】ピアノ音源14製品レビュー