XLN AUDIO Addictive Keys Studio Grand|ピアノ音源14製品レビュー

親しみのある楽器でありながら千差万別。それがピアノの面白さであり、膨大な数のピアノ・ソフト音源が市販されている理由でもあるのでしょう。本企画では話題の14製品をピックアップして、作編曲家の牧戸太郎さんにレビューしていただきました。また、各製品の試聴音源では、牧戸さんにタイプの異なる3つのフレーズを制作していただいたので、好みに合うサウンドを探してみてください!

ポップスでリズム・バッキングしたくなる心地良いサウンド

XLN AUDIO Addictive Keys Studio Grand|12,563円

XLN AUDIO Addictive Keys Studio Grand|12,563円

 10台以上ものSTEINWAY製ピアノをオーディションして選ばれたというModel Dをベースに作られた製品。ステレオ2種&モノラルの3ポジションからなるクローズ・マイクがあり、ミッド(ステレオ)/アンビエント(ステレオ)/ボディ(モノラル)の計6ポジションから組み合わせて音作りが行える。ペダル・ノイズのボリュームも用意されているほか、各マイクのチャンネルにはEQやコーラスが、ミキサーのセンド/リターンにはディレイとリバーブも搭載。

エディット画面。左上がペダルなどの楽器設定、その右にピッチ/フィルター/アンプなどのパラメーター、中段にはマイクのチャンネル・ストリップがある。下段左のピアノ図は選択中のマイクを示し、その右にミキサーを配置

エディット画面。左上がペダルなどの楽器設定、その右にピッチ/フィルター/アンプなどのパラメーター、中段にはマイクのチャンネル・ストリップがある。下段左のピアノ図は選択中のマイクを示し、その右にミキサーを配置

サウンドの印象

 “洋楽のポップスをこよなく愛する人が作り上げた製品”という印象を受けました。とてもバランスの良いサウンドです。“スタジオ・グランド”という名前の通り、デフォルトの設定のままポップスを録っているレコーディング・スタジオで演奏しても全く問題ないでしょう。明るいけど、きらびやかすぎず、深みもありますがモコモコはしておらずという音なので、バンドの中で埋もれることはないと思います。

演奏性

 リズム・バッキングに適した音の立ち上がりやリリースの切れ具合を持っています。ポップスのイントロなどを弾くと心地良いでしょう。

ジャンル感

 最もイメージされるのは生ドラムのポップス系バンドでリズム・バッキングするというシチュエーションです。あるいはコード・ワーク中心の弾き語りにも適しています。その上、打ち込みのドラム・サウンドにも負けない存在感があります。そういう意味では幅広く使える製品です。

音作りの自由度

 Tone、Soft/Hard、Timbre、FXという4つのノブがあるのですが、これらはエディット画面に用意されたさまざまなパラメーターと連動しています。ですから、少し音を明るくしたいとか、音の雰囲気を変えたいというときに、エディット画面で細かく設定しなくてもよいので重宝します。特にSoft/Hardというノブでは柔らかい音にするのか、それとも硬めの音にするのかを調節できるのですが、音楽的な変化をしてくれて、同じバッキングでも簡単にニュアンスを変えることができます。

 エディット画面にはペダル・ノイズなど楽器そのものの設定、ピッチ/フィルター/アンプなどのシンセサイザー的なパラメーター、各マイクの音質をEQなどで加工できるチャンネル・ストリップ、そして2系統の“Delerb”などが用意されています(Delerbはディレイとリバーブが直列接続されたエフェクト)。

まとめ

 同社のAddictive Drums 2もバランスの良いドラム音源で、特に加工しなくても良い雰囲気で鳴ってくれますが、それと同じ感覚で使えると思います。当然、両者のアンサンブルも相性がよいでしょう。

製品情報

  • 価格:12,563円
  • 音源方式:サンプリング
  • 容量:1.1GB
  • ベース・モデル:STEINWAY Model D
  • 対応フォーマット:AAX/AU/VST/スタンドアローン

REQUIREMENTS
●Mac:OS X 10.10以降(64ビット) ●Windows:Windows 7〜11(64ビット) ●2GB RAM以上(4GB以上推奨)、インターネット環境

 

牧戸太郎

牧戸太郎
東京音楽大学作曲指揮専攻映画放送音楽コース卒業。その後、作編曲家として活動を開始し、竹内まりや、Hey!Say!Jump、King & Princeなどの編曲を手掛けるほか、映画『兄に愛されすぎて困ってます』、WOWOW『向こうの果て』、テレビ東京『先生のおとりよせ』、日本テレビ『ぴーすおぶけーき』、Hulu『社畜OLちえ丸日記』など多数のドラマ、映画の劇伴でも活躍している。

【特集】ピアノ音源14製品レビュー