VIENNA SYMPHONIC LIBRARY Synchron Fazioli F308|ピアノ音源14製品レビュー

親しみのある楽器でありながら千差万別。それがピアノの面白さであり、膨大な数のピアノ・ソフト音源が市販されている理由でもあるのでしょう。本企画では話題の14製品をピックアップして、作編曲家の牧戸太郎さんにレビューしていただきました。また、各製品の試聴音源では、牧戸さんにタイプの異なる3つのフレーズを制作していただいたので、好みに合うサウンドを探してみてください!

コンサート・グランドが大空間で躍動する豊かな響きを堪能

VIENNA SYMPHONIC LIBRARY Synchron Fazioli F308|43,340円

VIENNA SYMPHONIC LIBRARY Synchron Fazioli F308|43,340円

 VIENNA SYMPHONIC LIBRARYが所有するスタジオ、Synchron Stage ViennaのStage Aにて、FAZIOLIのコンサート・グランド、F308をサンプリングした音源。このスタジオは540㎡の広さと豊かなアンビエンスが特徴とのこと。クローズやルーム、デッカツリーなど5種類のマイク位置を備え、エクステンデッド・ライブラリ(37,840円)を追加すると11種類まで拡張される。これらを駆使することで、Auro 3DやDolby Atmosでのミックスも可能となる。

各マイクのミックス・バランスを調節するMix画面。Room-Mix(ステレオ)、Condencer(クローズ)、Mid 1(チューブ)、Main(デッカ・ツリーL/R)、Main-C(デッカ・ツリー・センター)が標準搭載で、そのほかはエクステンデッド・ライブラリのマイク

各マイクのミックス・バランスを調節するMix画面。Room-Mix(ステレオ)、Condencer(クローズ)、Mid 1(チューブ)、Main(デッカ・ツリーL/R)、Main-C(デッカ・ツリー・センター)が標準搭載で、そのほかはエクステンデッド・ライブラリのマイク

サウンドの印象

 最初に読み込まれるプリセット“01 Concert Room-Mix”を弾くと、この音源が目指す方向が見えてきます。これは完全にクラシック・コンサートでのピアノの音です。特に、近年のクラシック作品でよく耳にする、ホールの響きを生かしたレコーディングの音に近いと感じました。もちろん、リバーブの有無や5種類のマイクのオン/オフで空間の響きの量は変わり、ルーム・マイクをオフにしてクローズ・マイクだけにすれば空間の広さは減少します。しかし、せっかく広い空間で収録されたサウンドが持ち味なので、それを生かす方向で活用したほうが楽しいでしょう。もちろん、FAZIOLIのきらびやかで華やか、そしてスタイリッシュなサウンドも見事に再現されています。

演奏性

 スタッカートの表現が素晴らしいです。短い音価や速いパッセージをナチュラルに表現できます。本製品のWebページには記載がないのですが、同じSynchron Piano Playerエンジンを使用したSynchron Concert D-274のWebページには“リリースの速度に応じた100以上のリリースサンプルを提供”とあるので、恐らく同じことが本音源でも行われているのではないかと推測しています。

ジャンル感

 独奏、それもスタッカートなどの高い演奏技術を求められる楽曲で使用すると、本製品の良さが発揮されるでしょう。Synchron Stage Viennaという空間のキャラクターもほかでは得がたいので、それも含めた表現が欲しいときに有効だと思います。実際、ドラマや映画などの劇伴でも、そういうシチュエーションが求められることはあります。もし、ポップス等でリズミックな演奏を行いたい場合は、クローズ・マイクの音だけにするとよいでしょう。

音作りの自由度

 5種類のマイク設定を駆使することで、さまざまな空間表現を行えます。またFAZIOLI独自のFourthペダルを使うと、ソフト・ペダルよりもさらに柔らかい表現が可能です。

まとめ

 どんなピアノ音源であっても、そのメーカーが考えるピアノ像に基づいて開発されていると思いますが、この音源も主張がよく伝わってくる製品です。大空間でのコンサート・グランドの音が欲しい方はチェックしてみてください。

製品情報

購入はこちらから

  • 価格:43,340円
  • 音源方式:サンプリング
  • 容量:174GB(ダウンロード時)
  • ベース・モデル:FAZIOLI F308
  • 対応フォーマット:AAX/AU/VST

REQUIREMENTS
●Mac:macOS 10.13〜12(64ビット) ●Windows:Windows 8〜11(64ビット) ●16GB RAM以上(32GB以上推奨)、174GB以上のディスク空き容量(SSD推奨)、INTEL I5/I7/Xeon以上を推奨、iLokアカウント

 

牧戸太郎

牧戸太郎
東京音楽大学作曲指揮専攻映画放送音楽コース卒業。その後、作編曲家として活動を開始し、竹内まりや、Hey!Say!Jump、King & Princeなどの編曲を手掛けるほか、映画『兄に愛されすぎて困ってます』、WOWOW『向こうの果て』、テレビ東京『先生のおとりよせ』、日本テレビ『ぴーすおぶけーき』、Hulu『社畜OLちえ丸日記』など多数のドラマ、映画の劇伴でも活躍している。

【特集】ピアノ音源14製品レビュー