親しみのある楽器でありながら千差万別。それがピアノの面白さであり、膨大な数のピアノ・ソフト音源が市販されている理由でもあるのでしょう。本企画では話題の14製品をピックアップして、作編曲家の牧戸太郎さんにレビューしていただきました。また、各製品の試聴音源では、牧戸さんにタイプの異なる3つのフレーズを制作していただいたので、好みに合うサウンドを探してみてください!
映画音楽からポップスまで幅広く使えるバンドル製品
STEINWAY & SONSの1963年製Model DをサンプリングしたAcademicGrand、同じく1960年代製でGAVEAUによる小型グランドを収録したA-Pian、KAWAIのコンサート・グランドをベースにしたKawai-EX Pro、1928年製PLEYELグランドを使用したOldBlack Grand、そして古びた味のある雰囲気のアップライトによるB-Pianという5音源を収録したバンドル製品。張りのあるダイナミックな演奏から、ノルタルジックなサウンドまで楽しめる。
サウンドの印象
5つの音源それぞれに良さがあるのですが、A-PianというGAVEAU製グランド・ピアノの音色が魅力的でした。良い意味での揺らぎ感、にじみ感があってビンテージな雰囲気を醸し出しています。“古い箱の中で鳴っている音”がうまく再現されていますね。GAVEAUはチェンバロなども作っていたメーカーだけあって、この音源にも古典的な印象を受けました。バロックなども似合いそうです。
PLEYELをサンプリング元にしたOldBlack Grandも揺らぎ感のある良い音です。映画音楽の回想シーンにぴったりで、ポロポロっと音数少なく弾くだけでも絶大な効果を発揮するでしょう。ペダル・ノイズも良いですね。大きな映画館で流れる音楽ではペダル・ノイズも効果的に聴こえてくるので、そういう曲で映えると思います。
Kawai-EX Proはピアノ音源ではあまり見かけないKAWAI製コンサート・グランドがサンプリング元ということで、まずこの着眼点がいいですね。KAWAIらしい柔らかさがよく表現されていて、自分が認識していたKAWAI製ピアノのキャラクターを再確認することができました。ハンマーの独特な質感までよく捉えられていると思います。
演奏性
A-Pianはダイナミックに弾こうと思えばできますが、淡々と弾いたほうがサウンド的に似合います。それに比べるとOldBlack Grandはより繊細な表現が可能な設定です。AcademicGrandはアタックが速く、明るい音で激しい演奏にも向いています。
ジャンル感
A-PianやOldBlack Grandは映画音楽などの劇伴に最適です。AcademicGrandやKawai-EX Proはポップスで活躍しそうです。
音作りの自由度
ペダル・ノイズ、キー・ノイズ、トーン、リバーブなどの基本的なパラメーターは共通で用意されていて、Kawai-EX Proではクローズ・マイクとプレイヤー・マイク、OldBlack Grandではクローズ・マイクとサイド・マイクのオン/オフやレベル調節が可能です。
まとめ
本格的なオールド・ピアノの音も出せるので、個性が欲しい人にお薦めです。試聴音源は幅広い用途での使用を想定して、Kawai-EX Proを使用しました。
製品情報
- 音源方式:32,970円(2023年3月時点)
- 音源方式:サンプリング
- 容量:A-Pian/820MB(FLAC圧縮:106.7MB)、AcademicGrand/2.8GB(FLAC圧縮:1.11GB)、B-Pian/502MB(FLAC圧縮:231MB)、Kawai-Ex Pro/10.9GB(FLAC圧縮:2.15GB)、OldBlackGrand/12.89GB(FLAC圧縮:2GB)
- ベース・モデル:GAVEAU/STEINWAY D Concert Grand/KAWAI EX Concert Grand/PLEYELなど
- 対応フォーマット:AAX/AU/VST/VST3/スタンドアローン
REQUIREMENTS
●Mac:macOS 10.14以降(64ビット) ●Windows:Windows 10〜11(64ビット) ●4GB RAM(8GB以上を強く推奨)、7,200回転のハード・ディスク/SSD推奨、UVI Workstationインストールの必要ディスク容量:57.8MB以上(各音源の必要容量は“容量”欄を参照)
牧戸太郎
東京音楽大学作曲指揮専攻映画放送音楽コース卒業。その後、作編曲家として活動を開始し、竹内まりや、Hey!Say!Jump、King & Princeなどの編曲を手掛けるほか、映画『兄に愛されすぎて困ってます』、WOWOW『向こうの果て』、テレビ東京『先生のおとりよせ』、日本テレビ『ぴーすおぶけーき』、Hulu『社畜OLちえ丸日記』など多数のドラマ、映画の劇伴でも活躍している。