EASTWEST Quantum Leap Pianos Bundle|ピアノ音源14製品レビュー

親しみのある楽器でありながら千差万別。それがピアノの面白さであり、膨大な数のピアノ・ソフト音源が市販されている理由でもあるのでしょう。本企画では話題の14製品をピックアップして、作編曲家の牧戸太郎さんにレビューしていただきました。また、各製品の試聴音源では、牧戸さんにタイプの異なる3つのフレーズを制作していただいたので、好みに合うサウンドを探してみてください!

有名ピアノ・メーカー4社の特徴をそれぞれ見事に再現

EASTWEST Quantum Leap Pianos Bundle|46,985円

EASTWEST Quantum Leap Pianos Bundle|46,985円

 大容量のサンプリング・ピアノ音源。“BECHSTEIN 280”“BÖSENDORFER 290”“STEINWAY D”“YAMAHA C7”の4製品を、NEUMANNのビンテージ・マイク、MEITNERのADコンバーター、そしてコンソールのNEVE 8078でレコーディングしている。各ピアノの容量は約60GBにも及ぶ。ベロシティ・レイヤーはノートごとに最大18段階で、サステインやスタッカート、ソフト・ペダルなど各ピアノで8種類のアーティキュレーションを収録している。

メイン画面がそのままエディット画面にもなっているというシンプルな仕様。右の画面は上段左が大屋根の開き具合、その右がステレオ感、下段左が3種類のマイク・バランス、その右がマスター・ボリュームとパンをそれぞれ設定するパラメーターだ

メイン画面がそのままエディット画面にもなっているというシンプルな仕様。右の画面は上段左が大屋根の開き具合、その右がステレオ感、下段左が3種類のマイク・バランス、その右がマスター・ボリュームとパンをそれぞれ設定するパラメーターだ

サウンドの印象

 4社のピアノのキャラクターがとてもよく表現されています。これは推測ですが、サンプリング元となったピアノを吟味した結果なのではないでしょうか。つまりメーカーの人たちが、“僕たちにとってのSTEINWAYはやっぱりこういう音であってほしいよね”というイメージを持って収録したからこそ、実際にそういう音が鳴っているのだと思うのです。それこそSTEINWAYであれば、あでやかでまるでウラディミール・ホロヴィッツの演奏をほうふつさせますし、YAMAHAならシャープできらびやかな感じ、BÖSENDORFERは豊かな倍音感などがとてもよく伝わってきます。BECHSTEINは繊細で温かみのあるサウンドですね。これらを順番に弾いていると、まるで4社のピアノの音のカタログを聴いているかのようです。

演奏性

 とても弾きやすく、何も設定しなくても気持ち良い響きが鳴ってくれます。これはEASTWESTのほかの製品にも共通して言える特徴なのですが、周波数的なレンジが広く、レコーディング・スタジオで収録したようなサウンドで演奏できます。

ジャンル感

 デフォルトの音を生かすとすれば、あまりエフェクティブではない、ナチュラルなサウンドの楽曲に合うと思います。例えば、4リズムで演奏するポップスなど、スタジオ・レコーディングの空気感を生かした音作りにはぴったりでしょう。もちろん、ジャズもいいですね。あとは楽曲のテイストに合わせてどのメーカーの音色を選ぶかということになると思います。

音作りの自由度

 クローズ、プレイヤー、ルームの3種類のマイク・バランスを変えて音作りが可能なほか、ピアノの大屋根の開き具合も調整できます。ベロシティ・カーブやエンベロープ・ジェネレーター、リバーブなども用意されていますが、原音が非常に良く作られているので、まずはデフォルトの設定を生かす方向で考えるとよいでしょう。

まとめ

 4つの有名ピアノの音色が、その特徴を保ったまま同じ空気感のレコーディング・スタジオで収録されている、という点が最大の特徴でしょう。まるでコントロール・ルームで聴いているようなサウンドを楽しんでください。

製品情報

  • 価格:46,985円
  • 音源方式:サンプリング
  • 容量:約270GB
  • ベース・モデル:BECHSTEIN 280 / BÖSENDORFER 290 / STEINWAY D / YAMAHA C7
  • 対応フォーマット:AAX/AU/RTAS/VST3/スタンドアローン

REQUIREMENTS
●Mac:OS X 10.8以上、INTEL Core 2 Duo 2.1GHz以上 ●Windows:64ビット版Windows OS環境、INTEL Core 2 QuadもしくはAMD Dual Core 2.1GHz以上、サウンド・カード(ASIO対応) ●4GB RAM、7,200回転以上のハード・ディスク、Play 4.2.2以降、263GB以上のディスク空き容量、インターネット接続環境、iLokアカウント

 

牧戸太郎

牧戸太郎
東京音楽大学作曲指揮専攻映画放送音楽コース卒業。その後、作編曲家として活動を開始し、竹内まりや、Hey!Say!Jump、King & Princeなどの編曲を手掛けるほか、映画『兄に愛されすぎて困ってます』、WOWOW『向こうの果て』、テレビ東京『先生のおとりよせ』、日本テレビ『ぴーすおぶけーき』、Hulu『社畜OLちえ丸日記』など多数のドラマ、映画の劇伴でも活躍している。

【特集】ピアノ音源14製品レビュー