モニタースピーカーを購入する際の注意点とは?

モニター・スピーカーを購入する際の注意点とは?

宅録やDTMに最適なペアで約5万円以下のモニター・スピーカー全9モデルを、音楽クリエイター/ギタリストのShin SakiuraとエンジニアのSUI氏が徹底レビュー! 最後はモニター・スピーカーの試聴を振り返り、それぞれが感じたことやモニター・スピーカーの購入を検討しているビギナーたちに向けてのアドバイスなどを語っていただいた。

最後は自分の耳で聴いて納得した上で決める 〜Shin Sakiura

 全9モデルのモニター・スピーカーを試聴する前は、どれも微々たる差だろうと思っていましたが、いざ聴いてみると全く逆でした。当然ながら似た傾向のものも少なからずありましたが、基本的にはそれぞれ音のキャラクターが全然違っていて興味深かったです。試聴では、ボーカルが際立つシンプルなR&Bのウィルム・マインド&ヨヴァン・ペリッツ「Heaven(Reimagined)」や、上下左右にレンジが広いチル系ハウスのセブ「Sun Moon feat. Young Franco & Noé」、そして現在制作中のオリジナルという3曲を流して全スピーカーを聴き比べました。特に「Heaven(Reimagined)」では、ボーカルやドラムの奥行き感、キックとベースのすみ分けや量感などをチェックし、オリジナル曲ではエレキギター・ソロが登場するので中域の解像度や、パンニングしたシンバルの定位感などを確認するのに役立ちました。

 今回の試聴を振り返って思うのは、近年はアンプの性能が向上しているせいか、割とコンパクト・サイズでもパワフルで、上下のレンジも広いスピーカーが増えたように感じます。その上、内蔵DSPでのEQ補正もできるし、価格もペアで約5万円以下という……素晴らしいですね! 僕が初めてモニター・スピーカーを購入したときと比べると、はるかにコスト・パフォーマンスにおいても優れている時代になっているなと感じます。

 現在、どのモニター・スピーカーを購入しようか迷っている方へ。このレビュー記事を参考にしていただくのはもちろんのこと、最後は自分の耳で聴いて、納得した上で決めることをお勧めします。なので、一度最寄りの楽器店で試聴してみましょう。近くに楽器店がない方は、知り合いのDTMerの自宅スタジオを回ってスピーカーを聴き比べするのもよいかもしれません。僕は上下のレンジ、定位感、ゲイン・ノブを回したときの色付き具合などを基準にジャッジしています。皆さんも、自分なりの基準を明確にしてモニター・スピーカーを選んでみるとよいでしょう。

設置方法/環境を工夫して音をさらに追い込もう 〜SUI

 まず思うのは、今回試聴した9モデルは全体的に優れたモニター・スピーカーばかりだったということです。音質面はもちろんですが、内蔵DSPによるEQ補正機能が付いていたり、フロント・パネルにコントロール用のノブがあったりと、宅録ユーザー目線でも便利に使えるポイントが数多く見られます。スピーカーというのはそれぞれサウンド・キャラクターが違うため、それらをしっかり分かっておくことと、自分がどういう用途で使いたいのかを考えておくことが、スピーカー選びの鍵となるでしょう。“モニター”というだけあって、音作りのいいところ/悪いところを正確に教えてくれるものが、最終的には一番良いモニター・スピーカーなのかなとエンジニア目線では思います。音楽制作やミックス作業というのは長時間やるものなので、パッと聴いたときの音の印象も大事ですが、耳が疲れにくいものを選ぶことも大切。そして、原音を必要以上に誇張しないモニター・スピーカーを選ぶということを覚えておくとよいでしょう

 EQをブースト/カットしたときの変化や、リバーブ・テイルの減衰具合、パンニング時の定位感などをどれだけシビアに見せてくれるかといった部分もポイントです。今回の試聴では洋楽ダンス・ミュージックのほか、自分が制作した楽曲におけるAVID Pro Toolsのセッションを開いて、上記で述べたような箇所をパートごとにチェックしていきました。店頭でチェックする際もこういったことができるのであればやった方がいいですし、できない場合でも自分のチェックしたい箇所が確認できるリファレンス曲を幾つか持っておくことが重要です。好きな音楽ジャンルの曲や尊敬するクリエイター/エンジニアが手掛けた曲など、普段からよく聴いているものがいいでしょう。補足すると、スピーカーは設置方法/環境によって大きく音が変わるので、購入したら終わりではなく、そこから+αの微調整をして音を追い込む作業も大切。スピーカーのポテンシャルを最大限に引き出せるかどうかは、ユーザー次第なのです!

レビュワー紹介

Shin Sakiura

Shin Sakiura
東京を拠点に活動する音楽クリエイター/プロデューサー/ギタリスト。2015年より個人名義でオリジナル楽曲の制作を開始。バンド・サウンドからヒップホップ、R&B、エレクトロまで広い音楽性を持ち、自身の作品制作のほか、SIRUPやアイナ・ジ・エンドなどの楽曲制作や海外アーティストとのコラボと活動は多方面にわたる。ギター、ベース、サンプラーなどさまざまな楽器を駆使したライブ・パフォーマンスも注目を集めている。

 Recent Work 

『WILD CHILD feat. brb.』
Shin Sakiura
(PARK)


SUI

SUI
エンジニアのほか、リミックス・ワークも手掛ける音楽クリエイターとしても活動。ギターやベースなどの演奏からプログラミングまでを一人でこなすマルチプレイヤーでもあり、その柔軟なプロダクション・スタイルはメジャー/インディーズ問わず定評がある。近年では作曲家として劇伴音楽にも携わり、ますますその活動の場を広げている。セミナー講師としては自身の技術を惜しみなく講義することも多く、業界内での信頼も厚い。

 Recent Work 

『WATW “ing”』(『Honey, You!』収録)
WATWING
(トイズファクトリー)
※作編曲/エンジニアリング

宅録/DTMに最適なペアで約5万円以下の9モデルをレビュー!