視覚的な操作系を持つAIアシスタント搭載リバーブ〜iZotope Neoverb

iZotope Neoverb 〜視覚的な操作系を持つAIアシスタント搭載リバーブ

 Reviewed by 
林憲一
【Profile】ビクタースタジオでサザンオールスターズなどの音源制作に携わった後、フリーのレコーディング・エンジニアとして独立。近年はmiwaや石崎ひゅーい、DISH//、村松崇継らの作品を手掛けている。

初期反射+2種類の後期反射で音作り
画面中央のパッドで直感的にブレンド

 近年、AIによるアシスタント機能を精力的に取り入れているiZotope。同社がEXPONENTIAL AUDIOの技術を採用しつつ開発したAI機能搭載リバーブがNeoverbだ。Mac/Windows対応で、AAX/AU/VST2/VST3に準拠する。

 

 基本機能であり最大の特徴は、3系統のリバーブをブレンドして残響を作り上げる点だろう。一般的なリバーブでは、あくまでパラメーターの一つとして扱われることの多い“初期反射”を独立した残響としてフィーチャーし、それとは別に用意された2つの異なる後期残響とフレキシブルに混ぜ合わせることで、より複雑な残響の生成を可能としている。

 

 我々プロも、一つのソースに対して複数の後期残響……ルームやプレート、チャンバー、ホールなどを組み合わせて求める奥行きを作り出すことが多い。その場合、当然数種類のプラグインが必要となるのだが、Neoverbがあれば一つで済んでしまう。“そもそもリバーブはパラメーターが多くてよく分からないのに、それが3種類なんて……”と尻込みする方も居らっしゃるかもしれないが、操作系が非常に分かりやすく、直感的に作られているので心配無用だ。

 

 3系統のリバーブ・エンジンは色分けされており、視覚的にとらえやすい(トップのメイン画面)。青が初期反射を扱うReflections、紫にRoomやMiddle Chamber、Plateという小〜中規模残響3種、オレンジにはHallとLarge Chamberといった長く深めの残響2種が用意され、各空間の大きさを調整するSpaceパラメーターとともに表示されている。

 

 これらのエンジンを頂点にした三角形が“Blend Pad”というメイン・パラメーターとして中央に配置され、エリア内のボールをドラッグすることで、カラー・サークルで好みの色を作るようにシームレスに残響のブレンド具合を追い込める。Blend Pad以外はPre Delay、Dry/Wet、Levelなど触る頻度が高いパラメーターだけが表示されているので、見た目は大変シンプル。このすっきりとしたデザインのおかげで、聴いた印象のみに集中して、求める残響感を探ることができる。もちろん、より細かく作り込むことも可能。Advance Panelを開けば各エンジンの詳細なパラメータが表れるので、残響への飽くなき追求にも応えてくれる(画面①)。

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画面① 画面上半分に展開されているのはAdvance Panel。初期反射および2種類のリバーブ・エンジンの各種パラメーター(タイム、サイズ、ディフュージョンなど)が表示され、それぞれを詳細にエディットできる

4つのパラメーターとオートのEQ機能で
イメージに沿う音響的に優れた残響を生成

 “いやいや、それでもリバーブは難しい。ルームもホールもプレートもよく分からない……”という方のために用意されているのがAI機能=Reverb Assistantである。使い方は極めて簡単。Reverb Assistantを起動し、Neoverbにソースを入力。出力を聴きながらStyle、Size、Dry/Wet、Toneといった4つのパラメーターをイメージに沿って調整していくだけだ(画面②)。どのパラメーターも違いが分かりやすいので、短時間で追い込める。設定後はNextボタンを押すことで“Auto Cut”と“Unmask”が実行され、Neoverbが導き出したリバーブ・セッティングが提示される。

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画面②  Reverb Assistantでは、Style(Realistic〜Dramatic)、Size(XS〜XL)、Dry/Wet、Toneという4つのパラメーターだけで音作りが可能

 Auto Cutは、リバーブがかかることで特定の帯域が強調され過ぎないよう入力ソースにEQを施す機能。Unmaskは入力ソースとエフェクト音の間で生じるマスキングを抑えるために、リバーブ音にカットEQを入れるものだ。また入力信号/エフェクト音だけでなく、同時に立ち上がっているほかのiZotopeプラグインとの干渉を読み取らせることも可能。Auto CutとUnmaskは、Reverb Assistant上だけでなく、自分で作った設定においても機能する。その解析および提案は的確で、残響がもたらすオケの中でのよどみや濁りが上手に排除されるので大変有効だ。

 

 また、Reverb Assistantでは提案されないが、入力ソースのトランジェントをコントロールするSmoothingというパラメーターがある。アコギのストロークなど、アタックが連続するようなソースに使用することで、残響がバタつくのを抑えるのに役立つ。これもまた使える機能だと感じた。

 

 求める残響にたどり着く早道は、用意されたプリセットを片っ端から聴いて探す……というのがこれまでのリバーブの使い方だった。このNeoverbでは、音を聴きながらほんの数ステップを踏むだけで簡単にそれに到達できる。まさに次世代のリバーブである。

 

iZotope Neoverb【AI搭載】

28,820円

 Requirements 
■Mac:macOS 10.13〜11(Intel Macのみ対応、ARM非対応)、AAX/AU/VST2/VST3(64ビット)対応のホスト・アプリケーション
■Windows:Windows 8〜10、AAX/VST2/VST3(64ビット)対応のホスト・アプリケーション

 

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