「UNIVERSAL AUDIO UAFX Golden Reverberator」製品レビュー:全9種類のビンテージ・サウンド・モデリングを搭載するリバーブ・ペダル

「UNIVERSAL AUDIO UAFX Golden Reverberator」製品レビュー:全9種類のビンテージ・サウンド・モデリングを搭載するリバーブ・ペダル

 UNIVERSAL AUDIOからペダル・エフェクトUAFXシリーズが登場。リバーブのUAFX Golden Reverberator、ディレイのUAFX Starlight Echo Station、モジュレーション系のUAFX Astra Modulation Machine(価格はすべてオープン・プライス:市場予想価格各46,200円前後)の3機種がラインナップされています。いずれもギターはもちろん、ライン・ソース全般に使えるので、筆者の領域であるPAの視点からUAFX Golden Reverberatorを試してみたいと思います。

スプリング/プレート/デジタル・リバーブの各アルゴリズムに3種類のバリエーション

 UAFX Golden Reverberatorは、3種類のビンテージ・リバーブ・モデリングを搭載しています。まずは1960年代のアメリカ製ギター・アンプのスプリング・リバーブを再現した“SPRING 65”。次に1950年代後半のドイツ製プレート・リバーブから作られた“PLATE 140”。そして1970年代後半のデジタル・リバーブの名機をモデルにした“HALL 224”です。近年のUNIVERSAL AUDIOと言えば、ハードウェアをち密に再現したUADプラグインが人気。その開発で培った技術力をコンパクトな筐体に生かしたのが、UAFXシリーズと言えるでしょう。

 

 これら3種類のモデリングには、それぞれ3パターンのバリエーションが用意されており、パネル右側のA/B/Cスイッチで切り替えることができます。つまり、全部で9種類のリバーブから好みのものを選べるわけですね。またDECAY(リバーブ・タイム)、PREDELAY、BASSとTREBLE(トーン・コントロール)、MOD(モジュレーション)などをノブで調整できるため、プラグインなどよりもダイナミックな操作が可能。ステレオ入出力にも対応し、先述の通りギター用エフェクトとしてだけでなく、音楽制作やPA時のミックスにも使えます。

 

 電源は、アイソレートされたDC9V/400mAのパワー・サプライが必要。製品には付属していませんが、純正オプションとしてPSU-GP1-WW(オープン・プライス:市場予想価格3,300円前後)が発売されています。電源部の下には、USB Type-C端子を装備。これはMac/Windowsでの製品登録やファームウェア・アップデートに使います。

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リア・パネルには、左からライン・インL/R(フォーン)、9VのDCイン、USB端子(USB Type-C/製品登録やファームアップ時に使用)、ライン・アウトL/R(フォーン)、製品登録やバイパス/フット・スイッチ・モードなどのグローバル設定を行うためのPAIRボタンがレイアウトされている

深くかけたり極端な設定にしても、違和感が出にくいユニークな特性

 それでは実際に使用してみます。ここ最近はPAの現場にノート・パソコンとUNIVERSAL AUDIOのDSP搭載オーディオI/O=Apolloシリーズを持ち込み、UADプラグインを外部エフェクトとして使う事例が増えているようです。確かにサウンドに定評があるので、ライブ・ミックスでの活用にもうなずけます。ただ、パソコン+I/Oのシステムだと現場でのセッティングに手間がかかったり荷物としてかさばりやすいため、UNIVERSAL AUDIOのリバーブのみを使いたいのであれば、UAFX Golden Reverberatorを使用することで手軽さがアップするでしょう。

 

 ミキサーのAUXアウトをUAFX Golden Reverberatorにモノラルで入力し、ステレオでリターンしつつチェックします。まずは個人的によく使うプレート・リバーブを試してみたく、 PLATE 140をボーカルとスネアに使用。かなり好印象です。デジタル・ミキサーの内蔵リバーブやプラグインのリバーブに比べて、深くかけたりプリディレイを極端に長くしても違和感が無く、楽曲にきちんとなじむサウンドだと感じます。“リバーブを深くしたいけれど、かけ過ぎると違和感が出てしまう”といった、よくある悩みも解消できるかもしれません。ノブの設定を固定しつつバリエーションを切り替えてみたところ、ボーカルには“C”、スネアには“B”が合うと思いました。また、ミキサー内蔵のリバーブは往々にして操作性があまり良くないと思うのですが、本機なら直感的に音作りが行えます。

 

 次に HALL 224。良いです! 名称からLEXICON 224のモデリングと思われ、歌に深めのホール・リバーブをかけて浮遊感を出すような使い方にバッチリだと思います。PLATE 140しかり“ほかではなかなか出せない感じ”のユニークな音ですね。

 

 そして SPRING 65。筆者は時々ギターを演奏するので、スプリング・リバーブと言えばエレキギターというイメージから、ギターのチャンネルを送ってみました。これこれ!という感じです。深めにかけても音が遠くならず、広がりが大きくなっていくような変化。ノブでモジュレーションを加えていくと、よりビンテージ的なテイストにできるのも面白いですね。

 

 さて、ここでSTRYMON BlueSkyと比較してみました。PAの現場でも、よく使われているリバーブ・ペダルです。聴きなじみのある音で使いやすい感じですが、その反面、ほかのリバーブでも同様の音が作れないことはないという印象。一方UAFX Golden Reverberatorには“やはりこれじゃないと出せない音だな”と感じます。そして音色の幅が広く、いろいろなソースに対応できそうですね。

 

 なお、UAFX Golden Reverberatorにはストア機能があり、PRESETスイッチでお気に入りの音色1種類を登録&呼び出し可能となっています。つまり、そのとき設定しているノブ位置での音色とユーザー・プリセットを切り替えて使えるのです。切り替えの際は、ノイズなどが乗ることもなく非常にスムーズ。これも現場にうれしいポイントです。

 

 総じて、オリジナリティの高いサウンドがコンパクト・サイズで手に入るという印象のUAFX Golden Reverberator。PA用としても、もちろんギター用としても、音のキャラクターが好みであれば同時にコスト・パフォーマンスの優秀さも感じられる一台だと思います。

 

西川文章
【Profile】大阪を拠点に活動するPA/レコーディング・エンジニア。大小さまざまな会場を回り、豊富な経験を持つ。かきつばたやブラジルなどのプロジェクトで、ギタリストとしても活躍している。

 

UNIVERSAL AUDIO UAFX Golden Reverberator

オープン・プライス

(市場予想価格:46,200円前後)

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SPECIFICATIONS
▪リバーブ・アルゴリズム:スプリング/プレート/デジタル ▪音声入出力:ライン・イン/アウトL/R ▪入力インピーダンス:500kΩ(モノラル)、1MΩ(ステレオ) ▪出力インピーダンス:500Ω ▪最大入力レベル:12.2dBu ▪最大出力レベル:12.1dBu ▪周波数特性:20Hz〜20kHz(±3dB) ▪電源:アイソレートされたDC9V/400mA(最小)/センター・マイナス/2.1×5.5mmバレル・コネクターの電源(純正品PSU-GP1-WWが発売中) ▪外形寸法:92(W)×65(H)×141(D)mm ▪重量:567g

製品情報

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www.snrec.jp