ドラムンベースの最新動向 〜日本のアーティスト DJ AKiが解説!

進化するドラムンベース 〜シーンの最新動向をDJ AKiが解説

コロナ禍でもEDMやダンス/クラブ・ミュージックの進化は止まらない。ここまで最新ダンス・ミュージックに登場するサウンド・テクニックや作り方を紹介してきたが、ここでは日本国内のドラムンベース界の大ベテラン、DJ AKiが登場。近年の洋楽ドラムンベース・シーンで起こっている最新の動向やアーティスト/音源/音作りなどについて語っていただいた。

ドラムンベース・シーン最先端で起きていること

 今UKドラムンベース・シーンの一部がとても面白い動きをしています。それは“変速系ドラムンベース”というもので、ドラムンベースなのにハードコアやサイケ、テクノ系の4つ打ちビートが合間に入るんです。曲によってはそれらの比重が多いものもあり、“これ本当にドラムンベースなの?”という人も居るくらい(笑)。ドラムンベースは1980年代後半にジャングルから派生し、2000年代にはダーク系やハード系へと変化。2010年代にはEDMともうまく共存しながら進化してきましたが、2020年代でこういった方向への進化は全くの予想外でした。自分はDJを始めて26年になりますが、本当にこんなことは初めての経験なので正直とてもワクワクしています!

変速系ドラムンベース誕生のきっかけ

 恐らくきっかけとなったのは、2019年の暮れにリリースされたシングル、Mefjus、Camo & Krooked「Sidewinder」。序盤では上モノからドラムンベースのフィーリングを感じますが、ドロップ部分では完全に4つ打ちの楽曲となっています。1:53辺りからは全体的にドラムンベースに切り替わりますが、この曲が昨今の変速系ドラムンベースの流れを作ったと自分は考えていますね。実際「Sidewinder」のリリース後、イギリスやオランダなどヨーロッパ周辺のドラムンベース・アーティストがまねをし始めたように思います。

 参考音源 

制作環境の変化

 こういった流れとなった背景として、若いドラムンベース・クリエイターたちの影響が強いと考えています。また、制作環境がより身近になったということも大きいでしょう。20年前は何十万、何百万もするミキサーやアウトボード、E-MUのサンプラーなどを使わないとダンス・ミュージックが作れなかった……。コンピューターも今と比べるとロースペックな中で、よくやっていたと思います(笑)。現代はラップトップ一台で音楽が作れ、音楽制作の敷居が低くなった分、クオリティが低い曲も増えた気もします。音楽は学問の一つでもあるので、ちゃんとした知識と技術を持ったクリエイターでないと生き残るのがますます難しい時代になったと言えるかもしれません。またストリーミング配信が中心の今、CD販売の時代と比べて音楽家の収益が下がったため、ますます本物だけが輝ける時代になってきているんだと思います。

これからのダンス・ミュージック

 今の世代のクリエイターたちは、以前にも増してさまざまな音楽を自由に聴ける環境に生きています。なので、そういった背景が今回の変速系ドラムンベースの進化に少なからずとも作用しているのかもしれません。個人的にはもっともっと型にハマらず、好きなように音楽を作ればいいと思います。自分もドラムンベース・シーンで長年DJをやっていますが、本当はカテゴライズするのが好きではありませんから。これからの若いクリエイターたちは、自分自身が“良い”と思う音楽をどんどん探求すべき。それがその人のオリジナリティになるからです。自分もそういった自由なDJプレイを目指していきたいなと思いますね。

 

DJ AKi

DJ AKi
【Profile】DJ/プロデューサー。2001年にニューヨークより帰国後、クラブWOMBで『06S』のレジデントDJとして活動を開始し、国内ドラムンベース・シーンの普及に努めている。またFUJI ROCK FESTIVALやUltra Japan/Koreaなどの大型フェスに多数出演。ストリーミング配信にも力を入れている。

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