AUDIO-TECHNICA AT5045 ~【10~20万円台】ワンランク上のコンデンサーマイク15本をレビュー

ワンランク上のコンデンサー・マイクで歌録りのパフォーマンス&録り音を向上させたい方向けに、10~20万円台の現行モデル15機種をエンジニア&ボーカリストがレビュー!ここでは、長方形ダイアフラムを備えたAUDIO-TECHNICAのコンデンサー・マイク、AT5045を紹介します。

長方形の大きなダイアフラムを備えつつコンパクトさも重視

AUDIO-TECHNICA AT5045

 ラージ・ダイアフラムに迫る面積の“長方形ダイアフラム”を搭載するFET/トランジスター仕様のモデル。149dBの最大SPLや8dBの等価ノイズ・レベルを実現し、管楽器や弦楽器、パーカッション、ボーカルなどに向けている。ディスクリートの電子部品も特徴だ。

オープン・プライス(市場予想価格:206,668円前後)

●発売年:2014年 ●ダイアフラム面積:415.2mm2 ●指向性:単一 ●アンプ回路:FETとトランジスターを使用 ●ハイパス・フィルター:非搭載 ●PAD:非搭載 ●出力インピーダンス:100Ω ●外形寸法:約25(φ)×177(H)mm ●重量:197g

【Engineer】キラキラしつつも柔らかく聴こえる 〜中村公輔

 ペンシル型マイクのような見た目なので、ボーカル録りに向くのだろうかと半信半疑だったのですが、実はダイアフラムが長方形で十分な面積を確保しているのですね。

 音を聴いてみると、ピュアとしか言いようがない清水のようなサウンドで、ほかにあまりない独特のキャラクターです。ダイアフラムの形状によるものか、音の“粒子感”がサラサラしていて、きめ細かい印象。スペック上は5kHz周辺が少し持ち上がっていますが、ひずみっぽさが全くないので、キラキラしていながらも柔らかく聴こえるという不思議な質感です。子音も柔らかく聴こえるくらいでした。リボン・マイクとは別の方向で、耳への痛さを感じない一本ですね。例えば、アンビエントやシューゲイザーのオケに合わせるボーカルを気持ち良く録音できると思います。

【Male Vocalist】低音域で歌う男性ボーカルに合うと思う 〜高畠俊太郎

 高域が際立った印象で、特にサ行の音がよく分かる。ピッチが取りやすかったです。また、息の感じをよく捉えるので、シューゲイザーの女性ボーカルやウィスパー系の声にマッチしそう。男性ボーカルについては、声を張るアップテンポな曲より、低音域でささやくように歌うスタイルに合うと思います。高域が自然と補完されるでしょうから、このマイクの良さを生かせそうですね。

【Female Vocalist】女性ボーカルの魅力的な部分を引き出す 〜シバノソウ

 すごく歌いやすくて、好みのマイクです。自分の声の出したい成分を整音してくれるイメージで、声の輪郭がしっかりと見えてきました。それによりテンションが上がり、歌がうまくなったような気分に浸れたので、このマイクを使うとパフォーマンスにも良い影響が出てくると感じます。歌っていて楽しく、女性の声域のおいしい部分を奇麗に聴かせてくれる一本だと思います。

製品情報

レビュワー紹介

中村公輔

Engineer|中村公輔
特集のイントロでも健筆を振るってくれたエンジニアの中村公輔氏。今回は、普段からエンジニアリングで携わっているボーカリスト2名を招いて、モニター音やプレイバックを聴き、各マイクを評価した


高畠俊太郎

Vocalist|高畠俊太郎
LOOP LINE PASSENGERで活動中のボーカリスト/ギタリスト/ソングライター。今回は、同バンドのミドルテンポ・ロック・チューン「life」を歌い、各マイクを試した


シバノソウ

Vocalist|シバノソウ
アーティスト/シンガー・ソングライター。2020年にリリースしたアルバム『あこがれ』からエモーショナルなポップ曲「あこがれの先」を選び、製品チェックに臨んでくれた

サウンド・チェックをした場所:マジコンスタジオ

マジコンスタジオ

製品チェックは、am8でのアーティスト活動で知られる冨田恭通氏が主を務めるマジコンスタジオで敢行。写真は、SSLのアナログ卓AWS900(初期型)を擁するコントロール・ルームの様子。各マイクをNEVEのマイク・プリアンプ1073で増幅し、AVID Pro Tools | HD I/Oを介してPro Toolsへ24ビット/96kHzで録音した

マジコンスタジオのボーカル・ブース

ボーカル・ブース

特集|ボーカル用マイク、次はどれにする? ワンランク上のコンデンサーマイク15本をレビュー