WARM AUDIO〜パートを問わずマルチに活躍するコンデンサー・マイクを徹底テスト

WARM AUDIO × 中田裕二&エンジニア大野順平 〜パートを問わずマルチに活躍するコンデンサー・マイク編

2011年にテキサスを拠点に誕生したWARM AUDIOは、マイクやアウトボードからエフェクト・ペダル、ケーブルといった多岐にわたるラインナップを有する音響機器ブランド。“良い製品を良い価格で提供する”というコンセプトを掲げ、価格を抑えながらもクオリティ重視の製品をリリースしている。当コーナーでは先月に続き、シンガー・ソングライターの中田裕二とスタジオ・サウンド・ダリのエンジニア、大野順平氏に、同社のコンデンサー・マイクを試してもらった。その性能に二人も終始明るい表情だったテストの模様をレポートしていこう。

Photo:Takashi Yashima

◎ドイツ製ビンテージを意識したコンデンサー・マイク編:

WA-8000 〜ボーカルが際立つ音楽に合っている

高域に存在感と速さのあるWA-8000

 今回はWARM AUDIOがリリースしている3本のコンデンサー・マイクをテスト。いずれもレコーディング現場でボーカルや楽器など、パートを問わずマルチに活躍するマイクを踏襲したモデルだ。それぞれボーカル録音では、前回に続き中田の楽曲「Deeper」のオケを使用。まずはWA-8000を使って歌録りを行い大野氏に話を聞いた。

 「帯域が上下にきっちりと分かれていて、それぞれ別々の存在感を持っているような印象です。高域がとにかく速くて、初めてWA-8000を使ってヘッドフォンで自分の声を出してみたらビックリすると思います」

 続けて「ビートが強めでボーカルがくっきりした現代の音楽にハマりそう」と中田が語る。

 「雑味が一切無くて、しっかりと聴こえてきます。大体ボーカルって中域の処理がすごく難しいんです。アクを取るというか、聴こえやすくするためにカットしないといけないんですけど、そういう処理があまり必要じゃないなと。何もしなくても“おっ、気持ちいい!”となりましたね。Jポップにも合っていると思います」

 さらに大野氏いわく、日本語の発音にも合っているそうだ。

 「特に日本語は母音が強い言語なので、中域の成分が英語に比べてすごく多い。あらかじめ程よくオケになじむように設計されているような感じがあります。中田さんが言うようにJポップ向きだと思うし、これから歌録りを始めるような初心者の方にも間違いなく合うでしょうね」

 次にアコースティック・ギターを録音したところ、中田は想像よりも音の太さを感じたそうだ。

 「SONY C-800Gのような抜けの良さもありつつ太さがあって、弦を指ではじいたり、こすったりする音もすごく奇麗に捉えてくれる。ちゃんとその楽器の音がしていますね」

 「ピアノやウッド・ベースなどにも合うのでは」と大野氏。そのほかコンパクトなルックスといった部分も含め、二人ともWA-8000にはかなり高い評価だった。

WA-8000|オープン・プライス(市場予想価格:158,000円前後)

WA-8000|オープン・プライス(市場予想価格:158,000円前後)

SPECIFICATIONS
●指向性:単一/無 ●周波数特性:20Hz~20kHz ●SN比:76dB(単一)、73dB(無) ●外形寸法:63.5(φ)×190.5(H)mm ●重量:約610g(マイク本体) ●付属品:専用アタッシュ・ケース、電源モジュール、電源モジュール用7ピン・ケーブル、ショック・マウント

WA-251 〜楽器を主役にするひずみの太さ

WA-251 〜楽器を主役にするひずみの太さ

 続いてはWA-251をボーカルでテスト。中田は前回テストしたものも含め、最も驚いたマイクだったと語る。

 「ひずみの感じがすごくしっかりと出ている。いわゆるビンテージという趣が音に現れていると思います。誰の歌声にでも合うというわけではなくて、ソウルとかブルース・ロックとか、歌い上げるような野太い男性ボーカルには抜群なのではないでしょうか。かっこいいサウンドだし、本当に味がありますよ」

 アコースティック・ギターのテストで弾いている最中にも、中田は思わず声を上げるほどその音を絶賛していた。大野氏も同様に感じていたようだ。

 「アコギの収録って難しいんです。おいしい帯域が往々にしてエレキベースとかぶってしまうから、アコギをしっかり出したためにベース・ラインが聴こえなくなることもありがちで。でもこの太さとサチュレーション具合があれば、そこが解消されるのではないかと思います。あと1、2弦の鳴り方……高域の捉え方もすごく独特です。主役にしたい楽器を録るときにいいのではないでしょうか」

A-251をギター・アンプの録音に試す

 今回WA-251をギター・アンプの録音にも試してみたが、中田の評価はそこでも高かった。

 「楽器のキャラクターをちゃんと抽出してくれていて、頼りがいがありますね。かなり主張を感じるけれども決して大ざっぱではない音楽的な音。WA-251だけで曲の印象を変えるくらいのインパクトを持っています」

 大野氏もローエンドの伸びを評価する一方、使用法の面でもWARM AUDIOならではの魅力を感じたそうだ。

 「アンプとかドラムのキックとか、大きな音にビンテージのマイクを立てるのはあまりよくないという風潮があると思うんです。でもこの価格帯で、現行メーカー品という安心感もあるから、より気軽に使えるというのも魅力の一つ。今までビンテージ・マイクではなかなかできなかった使い方ができて、さまざまな場面でWA-251を使ってみてほしいです」

WA-251|オープン・プライス(市場予想価格:108,000円前後)

WA-251|オープン・プライス(市場予想価格:108,000円前後)

SPECIFICATIONS
●指向性:単一/双/無 ●周波数特性:20Hz~20kHz ●SN比:80dBA ●外形寸法:46(φ)×247(H)mm ●重量:690g ●付属品:専用木製ケース、電源モジュール、電源モジュール用7ピン・ケーブル、ショック・マウント

WA-14 〜原音に忠実なオールラウンダー

WA-14 〜原音に忠実なオールラウンダー

 最後にWA-14をテスト。今回歌った楽曲「Deeper」にとてもマッチしていると中田は感じたようだ。

 「繊細でナチュラルですね。女性のウィスパー・ボイスとか、歌に限らずナレーションも気持ち良く聴こえるんじゃないかなと」

 大野氏もそのナチュラルさから、ソースを選ばないオールラウンダーな印象を受けたと語った。

 「WA-14は元の音をそのまま捉えたいという方に向いています。これが合わないっていうシチュエーションはほとんどないんじゃないかなと。ドラムなどにも間違いなく良いでしょうね。すごくスムーズな録り音です」

WA-251をアコースティック・ギターに試す

 実際アコースティック・ギターとエレキギターにも試したところ、同じく素直で色付けの無いサウンドを収録できた。いろいろな楽器を録ってみたいという方が、1本持っておくのにいいマイクと大野氏は推薦する。

 「先ほどのWA-251とは逆に、主役ではないアコギにも良さそうです。パートによって適材適所で、印象が強ければいいというものではないですからね」

WA-14|オープン・プライス(市場予想価格:65,800円前後)

WA-14|オープン・プライス(市場予想価格:65,800円前後)

SPECIFICATIONS
●指向性:単一/双/無 ●PAD:−10/−20dB ●周波数特性:20Hz~20kHz ●SN比:−115dB ●外形寸法:60(W)×174(H)×48(D)mm(実測値) ●重量:423g(実測値) ●付属品:専用ケース、ショック・マウント


 計8本のWARM AUDIOマイクをテストした当企画。それまでWARM AUDIOを使用したことがなかった中田は「レコーディングしたいと思えるマイクばかりでした」と話す。

 「一つ一つのキャラクターがこんなにも違うんだなと。どれもクオリティが本当に高くて、目標とする音にかなりのスピード感で近付けるんじゃないでしょうか」

 「同じメーカーでここまで違うことにビックリしました」と大野氏も付け加え、最後にこう語ってくれた。

 「マイクごとの音の幅も広いし、何よりビンテージ・マイクへのリスペクトを感じます。特徴をきちんと捉えつつ、かみ砕いて現代の音楽に安定して使えるようにしている。価格的にも素晴らしいですし、できることなら全部試してみてほしい。自分に合うマイクが絶対に見つかると思います」

シンガー・ソングライターの中田裕二(写真左)とスタジオ・サウンド・ダリのエンジニア、大野順平氏(写真右)

中田裕二
【Profile】椿屋四重奏のボーカル&ギター/ソングライターとしてキャリアをスタートし、バンド解散直後からソロ活動を開始。自身のルーツである歌謡曲やニューミュージックを軸に楽曲制作を行う

大野順平(スタジオ・サウンド・ダリ)
【Profile】スタジオ・サウンド・ダリ所属のエンジニア。中田裕二、SUGIZO、浜端ヨウヘイらの作品を数多く手掛けるほか、大森靖子やMAPA、LUNA SEAといった個性的なアーティストの作品に携わる

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