Roland SR-20HD 〜Rock oN Monthly Recommend vol.51

Roland SR-20HD 〜Rock oN Monthly Recommend vol.51

 注目の製品をピックアップし、Rock oNのショップ・スタッフとその製品を扱うメーカーや輸入代理店に話を聞くRock oN Monthly Recommend。今回はRolandから発売された、ダイレクト・ストリーミング・AVミキサー、SR-20HDを紹介する。パソコンを使用せずにライブ配信が可能で、トラブルを回避するためのさまざまな機能を搭載しているのが特徴だ。Rolandの坂本星児氏、メディア・インテグレーションの松本章吾氏に話を聞いた。

Photo:Takashi Yashima

SR-20HD

SR-20HD|オープン・プライス(市場予想価格:330,000円前後)

SR-20HD|オープン・プライス(市場予想価格:330,000円前後)

 パソコンを使用せずにライブ配信ができるダイレクト・ストリーミング・AVミキサーSR-20HD。Facebook、YouTube Live、Twitch、RTMPでライブ配信ができる。ストリーミング・データを自動的に調整して配信の中断を防ぐアダプティブ・ビットレート機能、アクシデント発生時に映像や音声をスムーズに静止画へ切り替えるセーフティ・ディレイ機能、物理的な回線トラブルが発生した際、スマートフォンを予備回線として使用できるテザリング機能などを搭載し、トラブルを回避して高品質で安定した配信が可能。

リア・パネル。左から接地端子、DC入力、電源スイッチ、スマートフォンやUSBメモリーなどを接続するUSB CONTROL端子、USB Webカメラを接続するUSB VIDEO入力(11月のバージョン・アップで対応予定)、ダイレクト・ストリーム用のLAN端子。上段は左から、オーディオ・レコーダーやスピーカーを接続するライン出力L/R(RCAピン)、ライン入力L/R(RCAピン)、マイク/ライン入力×4(XLR/TRSフォーン・コンボ)、外部ディスプレイなどを接続するHDMI出力(MAIN/PVW)、カメラやパソコンを接続して映像をインプットするHDMI入力×2を備える

リア・パネル。左から接地端子、DC入力、電源スイッチ、スマートフォンやUSBメモリーなどを接続するUSB CONTROL端子、USB Webカメラを接続するUSB VIDEO入力(11月のバージョン・アップで対応予定)、ダイレクト・ストリーム用のLAN端子。上段は左から、オーディオ・レコーダーやスピーカーを接続するライン出力L/R(RCAピン)、ライン入力L/R(RCAピン)、マイク/ライン入力×4(XLR/TRSフォーン・コンボ)、外部ディスプレイなどを接続するHDMI出力(MAIN/PVW)、カメラやパソコンを接続して映像をインプットするHDMI入力×2を備える

本体の手前側面。左から、ヘッドセットやヘッドフォンを接続するHEADSET端子、ヘッドフォンを接続するPHONES端子、ヘッドセットとヘッドホンの音量を調節するツマミ、SDXCカード・スロット

本体の手前側面。左から、ヘッドセットやヘッドフォンを接続するHEADSET端子、ヘッドフォンを接続するPHONES端子、ヘッドセットとヘッドホンの音量を調節するツマミ、SDXCカード・スロット

●SR-20HDの最も大きな特徴は、パソコンを使用せずに配信ができるという点ですね。

坂本 SR-20HDは、パソコン無しで直接LANケーブルを接続することで配信ができるエンコーダーです。今までRolandでは、映像のスイッチングを行うビデオ・スイッチャーや、音声をミックスするミキサーなどを取り扱っていたのですが、それらを集約し“これ1台で配信を完結させられる機材”となるように開発されています。

松本 スペックを見て、“全部がそろっているものを出したんだな”と思いました。オーディオ・インターフェースとビデオ・スイッチャーを組み合わせて配信をするというやり方も主流だと思うのですが、私の経験上、音声よりも映像が遅れてしまうことはよくあるんです。こういうことを回避するという意味でも、一台のハードウェアにすべての機能がまとまっているのは安心できますね。

 

●ワンマン・オペレートをされる方が使うケースが想定されるかと思いました。

松本 音声も映像も一つの画面で見ることができますし、ストリームの状況も確認できるので、ワンオペにもすごく適していると思います。配信をするときは、人が多いに越したことはないのですが、実際のところそこまでマンパワーが集まらないという状況も多いので、そういうときに最低1人居れば作業ができそうな印象を受けました。

坂本 そうですね。より省力化して楽に配信をすることができるようになっていると思います。

 

●配信の際のトラブルを回避する機能が多く用意されているのも魅力です。

坂本 まず、回線が悪くなったらビット・レートを自動で落として配信が途切れるのをなるべく回避する、アダプティブ・ビットレート機能が搭載されています。例えば、映像のビット・レートを抑えて、音声のビット・レートを高めに設定することで、音質重視しつつできる限り途切れさせないようにするといった柔軟な使い方も可能になっています。

 

●スマートフォンをテザリングしておいて、メインの回線に問題が起きた際に切り替えられる機能もありますね。

坂本 メインとしてLAN回線につないでおいて、さらにスマートフォンをテザリングすると、2つの回線が並行して走っている状態になります。例えば、メインの回線でネットワークに問題が発生した場合、SR-20HDは自動的にUSB経由でテザリングされたスマートフォンのネットワークに切り替え、配信を継続できます。

松本 “2つの回線を同時に走らせることで、配信の際のリスクを回避できる”ということをうたっているのは、Rolandの中ではおそらくSR-20HDが初めてなのではないかと思います。リスクヘッジとしてかなり大きな特徴ですね。

 

●配信を60秒間まで遅延させることができるセーフティ・ディレイ機能も、リスク回避のために用意されています。

坂本 配信中に予期せぬトラブルが起きてしまった場合に、不適切なコンテンツが配信されないようにする機能です。静止画への切り替えと音声のミュートが、一つのボタンですぐに行えます。

 

●映像を音声に合わせて自動で切り替えてくれる機能は、スイッチングの必要がないので便利だと思いました。

坂本 マイクからの音声に連動して映像を切り替える機能は、VR-1HDなどにも付いており、これをSR-20HDにも盛り込みました。誰でも配信ができることを目標に開発した製品なので、オペレート無しでそのまま配信できるように、話している人に合わせてカメラが自動で切り替わります。この機能を使えば映像の切り替え操作が要らないので、いろいろな現場で活用していただけるんじゃないかと思っています。

 

●画面の合成やタイトルの合成をプリセットにあらかじめ登録しておけるのも、初心者にとってはうれしい機能です。

坂本 そうですね。あらかじめ設定さえしていただければボタン一つで呼び出せるので、使いやすいと思います。

 

●かなり機能が盛りだくさんですが、操作性についてはいかがでしょうか?

松本 シンプルにまとまっていると思います。配信用の製品は、ディスプレイをつながないとメニューが出ないものもあったりしますが、これは既にディスプレイが付いていますし、物理フェーダーも付いていて操作しやすいです。これだけ多くの機能がコンパクトにまとまっていて直感的な操作ができるのはすごいと思います。

坂本 Rolandは電子楽器を作っているメーカーで、例えばシンセサイザーの場合はツマミをリアルタイムに操作して音色を変化させて演奏すると思うんですが、配信機材においてもリアルタイムで直感的な操作性にするというのは、開発陣の中でかなり意識しているところなのかなと思います。

松本 個人的にはSR-20HDの見た目にもすごく引かれますね。過去にRolandから発売されたMTR、VS-2480によく似ているんです。

 

●配信したものはMP4(H.264)形式でSDXCカードに録画できますね。

坂本 録画の機能に加え、11月のアップデートで録画した動画ファイルや取り込んだ動画ファイルの再生にも対応する予定です。動画ファイルをボタンで呼び出すことで、配信の冒頭でオープニング・ムービーを流したりすることができるようになります。

松本 ミュージック・ビデオのようなデータをSDカード内に入れておいて、それを再生しながらアーティスト同士が話をする配信イベントなども可能になりますね。

 

●EQやコンプレッサーなどのエフェクトがそろっていて、音楽系の配信にも活躍しそうです。

坂本 音楽の配信にはもちろん、セミナーなどでより音を聴き取りやすく調整するという使い方もできます。また、XLRの入力端子が付いている配信機材はあまり多くないので、そういった面でも、音質については有利だと思います。

松本 Rolandの製品は、楽器はもちろん、映像配信の機材においても、音にこだわりを持って開発されているんだというのをすごく感じました。また、案外スイッチャーにはヘッドフォン・アウトが付いていないことが多いんです。SR-20HDにはヘッドフォン・アウトがあるので、音を確認できるのが良いですね。カメラのマイクや外付けのマイクから入ってくる音声を確認できるので、それがどういう形で外に配信されるのかを予想しながら音作りをすることができます。やはりRolandの製品は、音を扱っている人間にとって非常に使いやすいです。もちろん映像にも妥協が無いので、両者のバランスがすごく良いと思います。RolandのMTR、VSシリーズの開発陣の方々も開発に携わっていると聞きました。

坂本 そうですね。VSシリーズを作った方々がまだ開発の方に残っていますし、音響系のミキサーを開発しているチームも製作に関わっています。やはり音に関わる部分が充実しているのがRoland製品の一番の強みだと言えますね。

 

●SR-20HDをどんな場面で活用してもらいたいですか?

坂本 音楽シーンにおいては、ライブ・ハウスやレコーディング・スタジオなどの配信にお薦めです。また、最近ではコロナ禍も多少は落ち着き、リアルのイベントが徐々に増えてきている一方で、配信も定着しつつあり、リアルと配信のハイブリッド型のイベントが多くなってきています。会場演出用のメイン・スイッチャーの後にSR-20HDをつなぐことで、配信に必要なミキサーやエンコーダー、スイッチャーなどの細々した機材を持っていかなくて済むので、まさにハイブリッド型のイベントで活躍するのではないかと思います。

松本 坂本さんに思っていたことを全部言われてしまいました(笑)。音楽を作られている方が別の表現方法としてライブ配信を考えているなら、もちろんお薦めできますし、映像をメインで扱われている方が音声のレベル・アップを目指すためにもお薦めです。また、収録機としてもうまく使えると思うので、自分が演奏してる内容を撮影してYouTubeにアップするのもよいでしょう。もちろん音楽だけでなく、トーク・セッションにも使えます。これ一台とマイク、カメラがあれば、想定しうる大抵のイベントはまかなえるんじゃないかなと思いました。

Rolandの坂本星児氏
メディア・インテグレーションの松本章吾氏
Rolandの坂本星児氏(写真左)、メディア・インテグレーションの松本章吾氏(同右)

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