
EQなどのパラメーターをアサインできる
8つのタッチ・センシティブ・ノブ
まずトップ・パネルには、Pro Toolsのミックス・ウィンドウを踏襲したようなデザインのチャンネル・ストリップが8つ並んでいます。最下段には、Pro Tools上で設定されたチャンネル・カラーを反映するトラック・カラー・スイッチ、その上にタッチ・センシティブな100mm長のモーター・フェーダー、続いてソロ/ミュート・ボタン、タッチ・センシティブのロータリー・エンコーダー・ノブ、OLED(有機EL)ディスプレイが、各チャンネルに搭載されています。ディスプレイはやや小さめですが、タブレット端末を接続せずともここで各パラメーターなどの情報を確認することが可能です。各チャンネルの左端には、トラックを録音待機モードにするRecボタンや、機能設定時に使用するSelボタンなどが計4つ配置されています。
トップ・パネル最上段には、左から機能拡張のためのSHIFTボタン、ノブにアサインする機能を設定するためのボタンを9つ、各チャンネルにアサインするトラックを切り替えるためのボタンを4つ搭載。デフォルトでは各ノブにパンがアサインされていますが、先述した9つのボタンを操作することによって、プラグインやEQ、ダイナミクスなどのパラメーターをアサインすることが可能です。その上には、タブレット端末を設置するためのスタンドが備わっています。
さらにS1は、マスター・セクションに特化したAVID Pro Tools|Dockと接続して統合型サーフェスとして使用できたり、S1を最大4台まで連結することが可能です。まさに、自由に拡張できるコンソールと言えるでしょう。
ほかにも、S1はMackieControl/HUIに加えてEuConに対応。Pro Toolsの機能を素早くコントロールすることができます。また、トラック・カラー・スイッチのうち右側にある4つは、User1〜4スイッチとしてもカスタマイズ可能。Pro Toolsのほとんどの機能を割り当てられるので便利です。

フェーダーは0.1dB単位で制御可能
タブレット使用でタッチ・パネル操作を実現
それでは、S1とAPPLE MacBook Proを接続します。使うのは、イーサーネット・ケーブル一本のみ。S1とiPadの接続にはMacを介してWi-Fiを使います。続いてMacBook ProにはEuControlソフトウェアを、iPadには無償アプリのAVID Avid Controlをインストールしましょう。
MacBook Proを再起動すると、画面最上部にあるメニュー・バーにEuControlソフトウェアのマークが現れるので、これをクリックして“Eucontrol Settings”を選択→画面左側にある“All Surface”に表示されたS1とiPadの項目を、画面右側にある“My Surface”に移動するだけでOK。最後にPro Toolsを起動し、設定→ペリフェラル→Ethernetコントローラー・タブを選んで、画面最下部にある“EUCONを有効にする”にチェックを入れれば、すべての設定が完了です。
Pro Toolsを再起動してセッションを立ち上げると、ch1〜8に対応するS1のフェーダーが“ザッ”と動きます。続いてS1に搭載されたノブやフェーダーを触ってみると、Pro Tools側のパラメーターが素早く反応。ここでは、MacBook ProとS1の接続がEuConというのが大事なポイントでしょう。伝達速度がはるかに速いです。
S1のフェーダーはとても繊細で、0.1dB単位でコントロール可能です。現場ではボーカルを0.3dB上げるか上げないかで争ったりしますから、これはとても大切でしょう。また、フェーダー左端にあるSelボタンを押すと、Pro Tools上で対応するチャンネルがすぐに表示されます。逆にPro Toolsの編集ウィンドウでトラックを選択すると、S1ではそれに対応するチャンネルのパラメーターやフェーダーなどの設定が瞬時に反映されるのです。
iPadに立ち上げたAvid Controlの画面には、S1のチャンネル・ストリップに対応するパラメーター類が表示されます。タッチ・パネルなので直感的に扱え、かつ視覚的に確認できるので安心です。iPadを取り外せば、部屋のいろいろな場所で音を聴きながら調整することもできるので良いですね!
僕がフィジカル・コントローラーを使うのは、音楽制作時よりライブのオペレーション時が多く、本番中は瞬時に複数のフェーダーを動かすなんて日常茶飯事。こんなときは特に、ワーク・フローを格段にスピード・アップさせてくれるS1が大活躍してくれるでしょう。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2020年4月号より)