
各チャンネルに3バンドEQを装備
ch1〜8にはワンノブ・コンプも搭載
インプットはch1~8のモノラル8つと、ch9/10~13/14のステレオ3系統で計14ch。マイクプリ(XLR)は10ch分用意されており、すべて使用する場合はステレオのch9/10とch11/12をモノラルとして運用します。ライン入力はch1~11/12がTRSフォーン端子で、ch13/14がRCA端子とステレオ・ミニ端子。ch13/14はBluetoothオーディオ入力にも対応しています。
操作子を上から見ていきましょう。赤いゲイン・ノブはそばにインジケーターが付いているので、入力信号を確認できます。ファンタム電源の供給は、全チャンネル一括仕様です。ゲイン・ノブのすぐそばにローカット・スイッチ(100Hz)がスタンバイ。その後段には水色の3バンドEQが搭載されています。ch1〜8は緑色のワンノブ・コンプを搭載する上、EQは中域の周波数帯域が変更可能。2系統のセンドと内蔵エフェクトへの送り量を調節するオレンジ色のつまみ、白いノブのパンと続き、60mmフェーダーへと流れます。
右上のアウトプットはメインL/R(XLR)とサブL/R(TRSフォーン)、コンロトール・ルームL/R(TRSフォーン)、ヘッドフォン(ステレオ・フォーン)を用意。AUX(TRSフォーン)はモニターが2つ、FXが1つ装備されています。マスター・アウトまたはモニター・アウト用の4バンドEQも注目すべきポイント。中域の2バンドは周波数帯域が可変になっている上、Q幅をそれぞれ太めと細めに変えて設定してあり、TASCAMの熱意を感じました。

16種類のデジタル・マルチエフェクトも内蔵。空間系エフェクトとコーラス、フランジャーに加え、コンビネーションのプリセットも収録されています(写真①)。
そして本機の大きな特徴は、最大24ビット/48kHz対応のSDカードへのレコーディング機能。新規ソングを作成し、録音したいチャンネルのRECボタンを押せば録音準備可能です。パンチ・イン/アウトにも対応しており、別売りのフット・スイッチも使えます。全14ch+マスターに対応する16tr録音が可能です。
USB端子を用いてModel 16とMac/Windowsにつなげば、最高24ビット/48kHzまで対応する16イン/16アウトのオーディオI/Oとしても機能します。各チャンネルのモード・スイッチを“PC”に切り替えるとDAWへ行った音がチャンネルに戻ってくるので、それに対してEQやエフェクトをかけられます。デフォルトだとローカットとコンプはかけ録りですが、EQは再生音にのみかかる設定です。メイン・フェーダーの上にあるPOST RECボタンを押すと、EQとマスター・フェーダーを通った音が録音できるようになります。
自然でクリアなマイクプリとシャープなEQ
フラットな音色でSDカードに録音できる
サウンドは価格以上の品質だと言えます。マイクプリは非常にナチュラルでクリア。ワンノブ・コンプはアタック速めで、リミッター的な使い方もできそうです。スレッショルドを超えたときに点灯するインジケーターがノブの隣に用意されていますが、光る以前からコンプ感があるので最終的には耳でかかり具合を調整すべきでしょう。
EQも非常に素晴らしく、位相があまり崩れずシャープな印象。高域を上げてもピーキーにならないため、積極的に音作りが行えます。
内蔵エフェクトはリハーサル・スタジオなどで使うときの雰囲気作りなら、必要十分な役割を果たしてくれそうです。
SDカードに録ったサウンドはミキサーから直接出ている音と印象が変わらず、クセの無いフラットな特性。内蔵A/Dの性能の良さを感じさせるクオリティと言えます。MacでDAWへの録音も試してみました。レイテンシーをあまり感じないので、バッファーが低めならボーカル・ダビングでも使用できると思います。Bluetooth Audioも問題無し。APPLE iPhoneを試しにつないでみたところ、“Model 16”という名前で認識されて、すんなりとch13/14chに音が流れ込んできました。
実際に試してみて、この価格でこの機能とサウンドは驚異的だと思いました。相当な機能を盛り込んでいるためSN比が若干悪くなるのは致し方ないですが、使わないチャンネルをミュートするなどの方法で対策するのは、アナログ・ミキサーならではと言えるでしょう。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2020年3月号より)