
本体重量はわずか400g
100種類のドラム・キットとドラム・パターン
まず箱から取り出して思ったことは、Uno Drumはとても軽くてコンパクト! 寸法は256(W)×49(H)×150(D)mmで、重量は400gなので持ち運びも楽です。またUno Drumは、同社のアナログ・シンセサイザーUno Synthと全く同じサイズにデザインされているので、両者を並べてセットすると見た目がとてもクール。私的には、これは大事なポイントです。電源は単三電池×4本か、モバイル・バッテリーなどのUSBバス・パワーなので、コンセントが無くても使えます。配線がすっきりするため便利ですね。これなら、DJブースやステージ上などの限られたスペースでも活躍することでしょう。
まずフロント・パネルの最上段中央には、各パラメーター値やプリセットの番号を表示するディスプレイがあり、その右側にはプリセットなどの選択時に使用するDATAつまみのほか、TEMPOやVOLUMEつまみを備えています。
それらの下段には左から、パッドにアサインされた音色/ドラム・キット/ドラム・パターンを編集する際に用いるSOUNDボタン/KITボタン/PATTERNボタンの3つを装備。さらに、ソング・モードに切り替えるためのSONGボタン、再生ステップ数を変更する際に用いるLENGTHボタン、録音時のクリックのオン/オフやMIDI設定などを行うための機能を呼び出すALTボタンが続きます。
ドラム・キットとドラム・パターンのプリセットは、それぞれ100種類ずつ収められているため箱から取り出してすぐに楽しめますし、ライブや制作においても即戦力となること間違いなしです。自分で作ったオリジナルのドラム・キットも保存できるので、これは重宝しそうですね。
さらに下の段には、エディットするパッドを選択する際に使用するSELECTボタン、パッドをミュートする際に用いるMUTEボタン、シーケンサーの録音/再生/停止をコントロールするトランスポート・ボタンなどが配置されています。見ての通りシンプルなので、初見でも比較的分かりやすい操作感と言えるでしょう。
リズムにヨレを与えるヒューマナイズ機能
2種類のベロシティを搭載するパッド
フロント・パネルの左上部分はマトリックス・コントロールと呼ばれるセクションで、DRUMボタン、FXボタン、SEQボタンが配置されています。各ボタンを押すと、それぞれの横列に記載されたパラメーターを上部4つのつまみでコントロールすることが可能です。

例えばDRUMボタンでは、パッドにアサインされたサウンドのレベルやチューニング、ディケイなどを調整でき、FXボタンを押すとコンプやオーバー・ドライブ、スタッターといった3種類のマスター・エフェクトをコントロールできます。
搭載されたコンプレッサーは、コンプレッション量を上げていくとサウンドの輪郭がくっきりしていく印象でした。オーバー・ドライブは最大限にかけても過度にひずまないため、サチュレーションのような感覚で使用できるでしょう。
そしてスタッターは10種類を搭載し、かかり具合も調整できます。この設定は各ドラム・キットに記憶させることができるので、事前にセッティングをしておけばライブ・パフォーマンスなどでも役立つこと間違いなしですね。
SEQボタンを押すと、シーケンサーの拍子を4/4、3/4、6/8、4/8から選択できたり、シーケンサーにかけるスウィングやステップのリズムをズラすヒューマナイズ、各ステップのベロシティをコントロールすることができます。個人的には、ヒューマナイズが自然なヨレ具合を演出できて気に入りました。
SEQボタンの下には、パッドのサウンドやパターンをランダマイズするRANDOMボタンのほか、各ステップのパラメーターをコピー&ペーストできるCOPY/PASTEボタン、各設定などを初期化するCLEARボタンが並んでいます。
次はフロント・パネルの下部中央に並ぶ、12のパッドを見てみましょう。Uno Drumは、アナログ音源6種類とIK MULTIMEDIAのSampleTankシリーズからセレクトされたPCMサンプル音源54種類を搭載しています。アナログ音源にはキック1&2/スネア/クラップ/オープン&クローズ・ハイハットが、サンプル音源には先述の6種類のほか、タム/リム/カウベル/ライド&クラッシュ・シンバルなどが収められています。従って、アナログ/デジタル音源の両方を組み合わせたドラム・キットをこの12のパッドに組むことが可能なのです。また、ハイハットのオープン/クローズは同時に鳴らないように設定されているため、合計11音を同時発音することができます。設定を行えば、パッドの上半分がベロシティ値100で、下半分がベロシティ値50で鳴るようにすることも可能です。こちらの方がビートのバリエーションが増えるため、私は好印象でした。

肝心の音についてですが、ドラムやスネア、ハイハットなど試してみると、しっかりとした分厚いアナログ・サウンドが確認できました。外部出力してエフェクトをかけても、音の芯はしっかりと残るような印象です。マトリックス・コントロールにある上部4つのつまみで素早い音作りができるのも、Uno Drumの特長でしょう。
シーケンサーは最大64ステップまで対応
スタッターやロール・エフェクトを搭載
フロント・パネル再下段に位置する16のステップ・シーケンサーについてですが、同パネル右下にある“>”マークのページ・ボタンを使うと1〜4までのページを切り替えることができ、最大64ステップまで入力することが可能です。入力方法は通常のステップ入力のほか、サンプラーのようにパッドをたたいてリアルタイムで入力することもできます。ちなみに各ボタンは平面かつシームレスな仕様のため、連続したステップの入力は指をスライドするだけでOK!
まさに直感的な操作が可能となっています。また、1ステップごとに最大8つのオートメーションが設定できますので、かなりこだわったビートも制作できるのではないでしょうか。

プログラミングしたドラム・パターンは、ソング・モードにおいて最大64まで管理することができます。このモードでは、各ステップ・ボタンに1つのドラム・パターンをアサインし、ループ再生することが可能です。ドラム・パターンをつなげていけば、1曲分のトラックを作ることもできるでしょう。
ページ・ボタンの上部には、ビート全体にスタッターをかけるSTUTTERボタンと、指定したパッドにロールを施すROLLボタンを搭載しています。ロールの設定では、4つのフィル・イン・パターンも選択でき、ビートに変化を付けたいときなどに有効です。
リア・パネルにはMIDI IN、OUT端子も搭載しているので、ほかのハードと同期すれば音源をトリガーすることも可能です。またはDAWソフト内のシーケンサーで、Uno Drumをプログラミングするのもありだと思います。私としては、汎用性が高くなるため非常にうれしいばかりです。オーディオ・インプット(ステレオ・ミニ)も装備しているので、ほかの音源をUno Drum音とミックスして出力することもできます。ミキサーなどは必要無いので、セッティングも簡単かつ便利ですね。
アナログの太いサウンドと、デジタルのすっきりとしたサウンドを併せ持つUno Drum。見た目はコンパクトですが、その音は本格的です。単純に音源としてでも魅力的なのですが、3万円弱という価格設定も見逃せません。使用方法は説明書が要らないくらい簡単ですので、ハードにあまり興味のない方にもリズム・マシン入門機としてお薦めできるでしょう。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2019年12月号より)