「SENNHEISER XSW-D XLR Base Set」製品レビュー:最大5時間連続で使用可能な2.4GHz帯簡易ワイアレス・システム

SENNHEISERXSW-D XLR Base Set
 ヘッドフォンやマイクなどを手掛けるドイツのブランドSENNHEISERが、ギタリストやボーカリスト、映像制作者などに向けたデジタル2.4GHz伝送のワイアレス・システム=XS Wireless Digitalシリーズをリリースしました。シリーズのラインナップは全部で9種類あるのですが、今回私はダイナミック型ボーカル・マイクを容易にワイアレス化してくれる、XSW-D XLR Base Set(以下XLR Base Set)を試してみたいと思います!

約60〜70gの軽量サイズ
送受信機どちらからでもミュートが可能

 XLR Base Setの箱には、寸法が24(W)×102(H)×28(D)mmの送信機(XLRメス)と24(W)×109(H)×28(D)mmの受信機(XLRオス)のほか、充電用USBケーブル(Type-A/Type-C)が1本入っています。マットな黒色の送信機と受信機はどちらも約60〜70gで、それぞれ大人の手の平にすっぽり収まるくらいのコンパクト・サイズです。そのため持ち運ぶ際も全く荷物になりません。

▲XSW-D XLR Base Setの受信機(左)と送信機(右)。受信機をミキサーに、送信機をダイナミック・マイクに接続し、双方の電源ボタンを入れるだけでワイアレスとして使用することができる ▲XSW-D XLR Base Setの受信機(左)と送信機(右)。受信機をミキサーに、送信機をダイナミック・マイクに接続し、双方の電源ボタンを入れるだけでワイアレスとして使用することができる

 使い方はとても簡単。まずダイナミック・マイクに送信機を取り付け、ミキサーのマイク入力に受信機を接続します。そして、それぞれの本体に備えられている電源ボタンを長押しするだけ。これだけで電源が入ると同時に、自動的にお互いを認識し、ペアリングが完了します。LEDランプが緑色に点灯しているのを確認したら、すぐに使用可能です。送信機と受信機の電源ボタンを押してからここまでにかかった時間は、わずか数秒でした。送信機/受信機どちらの電源ボタンを一度押すと、簡単にミュートができます。ちなみにXLR Base Setはファンタム電源の供給には非対応です。

マイク特性まで表現するクリアなサウンド
送受信距離は最長75m

 今回のテストは普段筆者が勤務しているライブ・スペース、水道橋Wordsにて行いました。テストではSENNHEISER E945をはじめ、複数のダイナミック・マイクにXLR Base Setを使用。いろいろと聴き比べてみた結果、XLR Base Setはボーカルにとって必要な帯域をしっかりと残しつつ、マイクの特性も十分に再現するクリアなサウンドです。

 次にダイナミック・マイクは固定で、ワイアレス/ワイアードの状態でそれぞれ聴き比べしてみました。するとXLR Base Setを使ってワイアレスにした方では、100Hz以下の帯域が若干抑えめに聴こえたのです。このことは、ライブで使用することを前提とすれば逆に実用的だと言えるでしょう。なぜなら、普段から筆者はほとんどの場合において100Hz辺りにハイパス・フィルターを用いているからです。またストリート・ライブなどでボーカル・マイクにEQがかけられないときでも、XLR Base Setを使えば良い結果につながると思います。

 またデジタル2.4GHz帯のワイアレス・マイクの場合、通常はできるだけ障害物の少ない環境で使用することが推奨されていますが、今回はあえて2.4GHz伝送がどの程度まで維持されるのか、さまざまな環境で試してみてみましょう。ちなみにBase Setの送受信距離は75mとのことです。

 水道橋Wordsは地下1階にあるのですが、ワイアレス・マイクを持ったまま地上に出ても接続は維持されており、さらにそこから隣の建物まで数m移動したところで接続解除となりました。しかし、また水道橋Wordsに近付くと自動で再接続され、十分にワイアレス・マイクを使うことが可能になったのです。地下から地上までの間には分厚い防音扉やコンクリート壁などがありますが、それらを越えても使用ができ、ペアリングが一度途切れてもまた近付けば自動で再接続するところはとても優秀だと思います。この信頼性の高い技術はXLR Base Setの強みだと言えるでしょう。

 肝心のバッテリーに関してですが、XLR Base Setはリチウムイオン電池を採用しており、USBケーブルで充電すれば最大5時間の駆動が可能です。実際にXLR Base Setをフル充電し、リハーサルから本番終了までの約4時間ほど使用してみましたが、十二分の結果となりました。

 また、XLR Base Setはバッテリー残量の確認方法も簡単です。残量が十分な場合、LEDランプは緑色に点灯し、残量が15%以下に減るとLEDランプは赤色/緑色を交互に点滅します。さらに残量が5%を切るとLEDランプは赤色で点滅するのです。暗い場所でも一目で判断できるのが便利ですね。バッテリー・トラブルが付きもののワイアレス・マイクですが、これだけ容易に確認できれば安心でしょう。

 先述したようにXLR Base Setは非常に軽いため、マイクに装着しても普段と違和感無く使用できます。たったこれだけでお気に入りのダイナミック・マイクのサウンドはそのまま、ケーブルの長さにとらわれない自由なステージングが可能となります。なお、同シリーズにはエレキギターなどに対応したワイアレス・システム=XSW-D Instrument Base Setも用意されているので、ぜひチェックしてみてください。

 ハンドヘルド・タイプのワイアレス・マイクを使ってみたいけれど機器の接続や運用が不安な方、またお気に入りのダイナミック・マイクをそのままワイアレスで使いたい方などに、XLR Base Setはかなりお薦めです。

サウンド&レコーディング・マガジン 2019年9月号より)

SENNHEISER
XSW-D XLR Base Set
37,000円
▪コーデック:aptX Live ▪周波数特性:80Hz〜18kHz ▪オーディオ出力:最大12dBu ▪SN比:106dB以上 ▪全高調波ひずみ率:0.1%未満 ▪レイテンシー:4ms未満 ▪周波数帯域:2,400〜2,483.5MHz ▪送受信距離:75m(最適な条件の場合) ▪RF出力:最大10mW ▪バッテリー:リチウムイオン電池 ▪充電時間:約3時間 ▪動作時間:最大5時間 ▪外形寸法(送信機):24(W)×102(H)×28(D)mm ▪外形寸法(受信機):24(W)×109(H)×28(D)mm ▪重量(送信機):63g(実測値) ▪重量(受信機):67g(実測値)