Vienna Suite Proを土台にした
高品位プラグイン8種類を内蔵
まず、VEP7とはそもそもどのようなソフトウェアなのでしょうか。CPU負荷の大きなプラグイン・エフェクトやインストゥルメントを多数使用した場合、DAWの動作が重くなったり不安定になった経験がある方は多いと思います。そんなとき、これらをDAW内ではなくVEP7に立ち上げて使うことでコンピューターのCPU負荷を分散させ、最良のパフォーマンスを引き出すことができるのです。さらにイーサーネット・ケーブルで接続された複数のコンピューターにVEP7を立ち上げ、それぞれのCPUを使ってプラグインを活用することもできます。またVEP7はMac/Windowsに対応し、両OS間で相互通信することも可能。スタンドアローンのほか、AAX/AU/VSTプラグインとして動作します。
筆者的に、今回のバージョン・アップで追加された主なポイントを5つにまとめてみました。まず最初は同社のプラグイン・バンドルVienna Suite Proを土台とした、高品位プラグイン・エフェクトが内蔵されたこと。コンプ、EQ、エキサイター、リミッター、アナライザーの5種類と、サラウンドに特化したパンナーやミキサーなどのプラグイン3種類がミキサーに搭載されています。それぞれアナライザーや波形表示機能が付いているため視認性が向上し、作業がとてもはかどりました。個人的にEqualizer Proは、少し大胆にブースト/カットしてもかかり具合がスムーズなのでお気に入りです。
次に同社のオーケストラ音源Epic Orchestra 2.0とプレイバック・エンジンVienna Synchron Playerがバンドルされたこと。Epic Orchestra 2.0のライブラリー容量は、以前の約6.2GBから10倍以上の約73GBに増え、新しい楽器やアーティキュレーションのバリエーションが追加されたり、Vienna Synchron Playerに対応したりと大幅に拡張されています。特にEpic Orchestra 2.0では、管弦楽器のベロシティに対するアタックや音量のレスポンスが向上し、速く駆け上がるようなパッセージに対応できるパッチが増えているような印象。これだけでも購入価値が大いにあると思いました。
DAWとオートメーションの連携が強化
プラグイン管理機能の向上
3つ目はオートメーションに関する改良です。VEP7側にあるLearnボタンをクリックしてプラグインを操作するだけで、簡単にオートメーションが作成できます。DAW側では該当するパラメーターが自動的に設定されるため、DAWで内部完結しているときの操作感とほとんどギャップがありません。今回のアップデートでは、これが一番うれしかったです。
続いて4つ目はプラグイン・マネジメント機能の追加。プラグイン・リストが作成できたり、よく使うプラグインは自動的にプラグイン・リストの上部に表示されるようになりました。さらにプラグインの表示/非表示が選択でき、ネーム検索も可能に。操作性が格段に向上しただけでなく、ユーザーにとって使いやすい環境を簡単に構築することができます。
最後の5つ目は、チャンネル・ビューとインターフェースの改善です。チャンネル・ビューでは、各チャンネルごとにエフェクトのかかり具合やVienna Synchron Playerのアーティキュレーションが表示されるようになりました。また、インスタンスごとにCPU使用率やMIDIの受信などが確認できるようになったのもうれしいです。
これらのほか、使わないインスタンスを無効にし、作業状況に応じてCPU負荷を細かく調整できるなど、かゆいところに手が届くような機能がまだまだたくさん追加されています。
大編成のオーケストラ・サウンドが求められる映画やドラマなどの劇伴作家にとって、VEP7はマスト・アイテムと言っても過言ではありません。複数の音源をレイヤーした音作りや、ミュート/ソロで使用音源を比較する作業などはVEP7を使った方がはるかに素早く効率的に行えます。そのため、音作りにこだわるすべてのクリエイターにもお薦めです。ユーザーの工夫次第でいろいろな使い方ができるVEP7は、これからの制作フローを確実に進化させてくれるツールでしょう。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2019年8月号より)