
最大8つのパラメーターをアサイン可能
付属音源の音色は200種類以上
洗練されたシンプルなデザインの箱を開けると、一切の無駄を省いたかのような滑らかなフォルムの筐体が登場。マットな質感で現代的な美しいデザインだ。
構造はスキンと呼ばれる手で動かすコントローラー部分と、感度を調整するダイアル、それと選択ボタンというシンプルな作り。一見するとフット・ペダルのようで少し大きめに感じるが、実際に操作してみると手の動きになじむちょうどいいサイズ感だ。Touchéのスキンは木製であったが、Touché SEは滑らかな触り心地のポリカーボネート製スキンを搭載している。
スキンはマグネットで本体に取り付けられており、簡単に取り外すことが可能。内部には圧力を信号として伝えるシリンダーと、横の可動幅を調節するスライダーがある。可動幅を広げると押し込んだときの反発がゆるくなり、ほんの少しの力を与えるだけでスキンはプルプルと震える。この揺れはモジュレーションの余韻の表現に使えるだろう。逆に可動幅を狭めればメリハリのあるエフェクトがかけられる。接続端子はUSBのみというシンプルな設計。USBでコンピューターへ接続し、バス・パワーで駆動する。


パラメーターのアサインは、付属の専用ソフトLié(リエ)を使用。Lié自体はスタンドアローン、VST/AUプラグインとして動作し、LiéにVSTiが読み込める。パラメーターをアサインできるスロットは全部で8つ。また、付属音源の音色が200種類以上用意されているので、インストール後にスタンドアローンで立ち上げればすぐに使用できる。

パラメーターのアサイン方法は、使用するソフト音源をLiéで読み込み、スロット番号をクリックして操作したいパラメーターをプルダウンから選択。これだけでコントローラーにアサインされる。ちなみにソフト音源の画面を開いて、スロットを選択してからノブをクリックしてもアサインできる。後はそれぞれのスロットに好きな動作を割り当てていく。手の動きをはじめ、パラメーターの最大/最小値、カーブなどを詳細に設定可能だ。
Liéには多くのプリセットが用意されており、UVI FalconやARTURIA、NATIVE INSTRUMENTSといったメーカーのソフト・シンセに対応している。筆者がよく使用するNATIVE INSTRUMENTS Reaktorのプリセットもあって、非常にありがたく感じた。
レスポンスが良く楽器のような感覚
感情に寄り添う有機的な揺れの余韻
実際に使ってみて思ったのは、押し込みに対して非常にレスポンスが良いということ。オートメーションの書き込みに重宝するだろうし、飛び道具として付属の音源も活躍してくれると思う。基本的に片手でキーボードを演奏しながら空いている方の手で操作することになるため、もしライブで使用するならある程度の熟練が必要だろう。そう感じつつ、斬新な動きで音を操作する様子は刺激的で、自在に操る姿を生で見てみたいと思う。
Liéに付属されている音色は、ダイナミックに操作が音に反映されるプリセットが仕込まれている。例えばスキンに触れると音が鳴り、さらに押し込むとフィルターがかかるといった具合だ。スキンの上を細かく指でタップするだけで反応し、さらにその強弱によっても音が変化するので、楽器のような感覚で操作できる。
NATIVE INSTRUMENTS Massiveとの組み合わせでも試してみた。なんとMassiveだけでも20種類以上のプリセットが用意されているのだから驚く。Liéの付属音色のプリセットに比べると若干ダイナミックさに欠ける気がしたものの、Massiveが持つ迫力がしっかりと生きる設定に作られている。
今回Touché SEに触れてみて特に重要に感じたのは、スキンの揺れがもたらす余韻。この有機的な動きが人の感覚に寄り添っていて、“気持ち”が反映されることにつながっている。これによりソフト音源でも直感的かつ衝動的なアプローチが進み、今まで使っていたソフト音源でも新たなインスピレーションが生まれ、フレーズ作りに一役買うことだろう。
手の動きに音が精密に連動することもさることながら、何といっても滑らかなスキンの触り心地が癖になる。この“いつまでも触れていたくなる”ということが、音楽制作に用いるツールにとって大事なことのではないだろうか。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2019年1月号より)