「TRACKTION Waveform 9 Ultimate Pack」製品レビュー:より直感的操作に特化したツールや機能が新たに追加されたDAW

TRACKTIONWaveform 9 Ultimate Pack
1画面構成であらゆる操作が行える斬新なユーザー・インターフェースでコアなファンを持っていたDAWソフト、Tracktion。2017年にTRACKTION Waveformとして刷新され、使いやすいDAWソフトとして新たに人気を博しつつある。それが今回バージョン・アップしてWaveform 9となった。16種類のプラグインと2つのループ・パック、ソフト・シンセのBiotekが付属する最上位版のUltimate Packで、その内容を検証してみよう。

Melodyne Essentialが付属
画面拡大でピアノロールを自動表示

一つの画面内であらゆる機能が扱える音楽制作ソフト、Waveform 9。メイン操作画面となるProjectsタブの左側には、使用しているオーディオやトラックにアクセスしたり、プリセットやプラグインなどを検索することができるブラウザー・パネル、中央にはトラック、右側にはインライン・ミキサー、下部には左からメニュー、プロパティ・パネル、トランスポート、上部にはグローバル機能としてタイムライン、テンポ、マーカーなどが見える。Waveform 9の基本的な使い方は、インライン・ミキサーにプラグイン音源/エフェクトをドラック&ドロップし、コントロール・パネルでそれらの細かい編集などを行うというシンプルなもの。基本的にドラッグ&ドロップで多くの操作がまかなえるので、扱い方を覚えるのは簡単だろう。

ちなみにどのグレードにもCELEMONY Melodyne Essentialが付属しており、オーディオ・ピッチ補正だけでなく、オーディオからMIDIへの変換もとてもスムーズだ。指定したMIDIクリップをレンダー(オーディオ化)するのも簡単で、オーディオ/MIDI間の連携はよく考えられている。

また、MIDIクリップをダブル・クリックしてピアノロール画面を表示させなくても、Projectsタブ内でMIDIクリップを拡大していけば自動的にピアノロール表示になるので、その場で直感的にエディットすることができる。ほかにも、ブラウザー・パネルを複数開きオーディオ・ループ同士を同期させてプレビューしたり、それらをまとめて一度に複数のトラックへドラッグ&ドロップできるのも便利だ。そのほか、Waveform 9はオーディオ・エンジンのクオリティが高いので、オーディオの長さやピッチ変更時の音質劣化が少ない。またソフト全体の動作も軽く、直感的なワークフローにぴったり沿った設計がなされている。クリップごとにプラグイン・エフェクトを設定できる機能もWaveform 9の大きな魅力だ。

全6種類のモディファイアを搭載
コード進行提案などの作曲支援機能

ここからはWaveform 9の新機能を紹介していこう。ソフト・サンプラーのMulti Samplerは、ドラッグ&ドロップで複数のサンプルを読み込ませることができ、リサンプルやWebブラウザーから直接録音することが可能。また読み込んだサンプルを自動スライスし、キーボード・アサインしてくれる機能も魅力的で、ベロシティやアサインする範囲の調整もできる。

また、Waveform 9では以前からあったLFOツールが拡張され、今回は全6種類(LFO/Breakpoint/Step/Envelope Follower/Random/MIDI Tracker)のモディファイアを搭載。あらゆるパラメーターを変化させ、ウォブル・ベースやオート・ワウなど、さまざまなサウンドを演出することができる。

▲Waveform 9で搭載された6種類のモディファイアの一つ、Step Modifierを使って、プラグイン・エフェクトのパラメーターを変化させているところ ▲Waveform 9で搭載された6種類のモディファイアの一つ、Step Modifierを使って、プラグイン・エフェクトのパラメーターを変化させているところ

Plugin Racksという機能は、複数のプラグイン・エフェクトやソフト音源を並列/直列にルーティングでき、複雑なDSPチェインを直感的に構築することが可能だ。例えばボーカルのパラレル処理において、これまでメイン・トラック/高域を強調したトラック/ディレイやリバーブのセンド・トラックと3つのトラックを使っていたものを、すべて一つのラック内で管理することができ非常に効率的である。なお、今回のバージョン・アップでは自動接続機能などが追加された。

新機能の一つとして、作曲支援機能の充実も忘れてはならない。前回まではMIDIクリップ上でコード進行を決定し、さまざまなバッキング・パターンやアルペジオの設定ができたが、今回からはグローバル・トラック上でも同じ操作が可能になり、それら2つのコード進行タイプから好きな方を選択できるようになった。また、次に来るコード進行の提案機能、豊富に選べるバッキングやベース・ラインのパターンなどもあり、ゲーム感覚でコード進行や音楽制作を行うことができる。

マルチトラック・プリセット機能は、複数のトラックをまとめて一つのプリセットにし、それと同時にレンダーされた2ミックス・オーディオ・ファイルをプレビュー・クリップとして保存するというもの。プレビュー・クリップはライブラリー上でブラウズ/試聴することができ、編集画面に追加する際に元のマルチトラック・フォーマットへ展開されるとても便利な機能だ。もちろんプレビュー・クリップだけを使用することも可能。マルチアウトのドラムやストリングスなどをプリセット化しておくと、次回からのセッティングが非常に楽だろう。MIDIやオーディオのデータを含まない、プラグインやミキサーのセッティングだけをプリセット化することもできる。

このほか、複数のプラグインからお気に入りのパラメーターを抜き出し、まとめることができるマクロ・パラメーター機能や、好きなパラメーターだけを選び、自由に再配置してパネル・デザインすることができるプラグイン・フェイスプレート機能など、プラグインを便利に使いこなすための新たな機能も追加されている。

老舗のDAWソフトが成熟し、各機能がどれもあまり変わらなくなってきている中、このWaveform 9は現在のトラック制作にとても適した制作スタイルを提示している。楽曲のアイディア・スケッチからプラグイン・エフェクトを使ったミックスまで、いろいろなエディットを自由に試すことができ、レスポンスも速いので快適に音楽制作ができるだろう。30日間のフリー・トライアル版もあるので、試してみることをお勧めする。

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サウンド&レコーディング・マガジン 2018年7月号より)

TRACKTION
Waveform 9 Ultimate Pack
27,296円
【REQUIREMENTS】 ▪Mac:OS X 10.9以降 ▪Windows:Windows 7/8/10 ▪共通:INTEL Core 2 Duo 2GHz以上のプロセッサー、2GBのRAM(8GB以上を推奨)