ノイズ・フロア4.5dBのNT1
専用ウィンド・スクリーンも付属
箱を開けてまず目に留まるのは、1インチ・ダイアフラムを搭載したコンデンサー・マイク、NT1。RODEは2001年に初代NT1を発売していますが、今回のバンドルに同梱されたNT1はリニューアルされたモデルで、ノイズ・フロアがわずか4.5dBのスペックを持っているということです。
RYCOTEの技術を採用した専用ショック・マウントも付属しており、これがまた優れもの。NT1をセッティングするとマイクの下部分がしっかりと固定され、サスペンションとともにあらゆる振動からマイクを保護してくれます。
また、ウィンド・スクリーンも付いていて、ショック・マウントに差し込んで使用。従来のマイク・スタンドに取り付けるタイプのウィンド・スクリーンは、適切な位置へセッティングするのに時間がかかったり、ぶつかるとマイクとの距離が変わってしまったりしますが、この構造なら簡単に取り付けられるだけではなく、常にマイクとウィンド・スクリーンの適正距離が保たれるので安心です。質の高い付属品には感動しました。
次に注目したのはコンパクトなオーディオI/OであるAI-1。フロント・パネルにはXLR/フォーン・コンボ入力端子が1系統とゲイン・ノブ、ヘッドフォン・ボリューム、フォーンのヘッドフォン・アウト、またリア・パネルにはフォーンのアウトを2系統備えるというシンプルなものです。NT1と同様、つや消しの黒に金色の装飾を施したボディは高級感があります。コンピューターとの接続端子もUSB Type-Cになっている点が新しいですね。従来のUSBポートを搭載しているコンピューターをお持ちの方も、変換ケーブルが付いているのですぐに使用することができます。
NT1とAI-1をつなぎコンピューターに接続すると、コンピューターが自動認識するので、ドライバー不要でうれしいですね。また、AI-1のフロント・パネルに設置されたマイクのゲイン・ノブを押すと、48Vファンタム電源がオンになります。これで録音する準備が完了。セットアップの工程が非常にシンプルで分かりやすいところも特筆すべき点かと思います。
クリアで温かみのあるサウンド
プリプロから本番録りまで対応
今回はAPPLE MacBook ProにAI-1とNT1をつなぎ、APPLE Logic Pro Xで男性ボーカルを録音。音の第一印象としては、高音のギラつきや低音の不自然な膨らみは感じられず、非常に素直な音が録れるオーディオI/Oとマイクだと思いました。中域に関しても色付けは無いので、さまざまな録音に使用できるでしょう。
もう一つの特徴としては、非常にノイズが少ない点が挙げられます。そのためカブりや環境音などに気つをけて録音すれば、録音後にEQで高音をブーストしても不自然なノイズが上がってこないですし、明りょうさは割と保たれたままなので、ミックス時における自由度も高いと言えるでしょう。
全体的には比較的温かみのある音だと思いますが、ノイズが少ないためか、そこに明りょうさが加わったような印象。低価格帯のマイクは高域に不自然なギラつきがあったり、逆に高域が落ちたり、ノイズが大きかったりするのですが、そのような明確な欠点も無く、NT1とAI-1の組み合わせはプリプロから本番録りまで、十分に対応できる音質だと感じました。
今回は男性ボーカルに使用しましたが、ほかにもソウルフルな女性ボーカルや厚みのあるギター・サウンド、ドラムのルーム・アンビエンスにも使ってみたいですね。NT1+AI-1は幅広い楽器に使用できると思いますが、ドンシャリで激しめなサウンドよりは、ミッドに寄った音楽に合うかと思います。ジャンルで言うとジャズ/ソウルのボーカルやギターなどのレコーディングにはバッチリでしょう。
もちろん、マイクやオーディオI/Oには人それぞれの好みや相性があると思いますが、価格帯を考えるとここまで優れたクオリティで素直なサウンドが録音できるバンドル製品はなかなか無いので、万人にお薦めできます。これからホーム・レコーディング環境を整えようとしている方はもちろん、オーディオI/Oが小型で持ち運びもしやすいため、移動先でしっかりとした録音をしたい方にも向いているでしょう。
また、NT1単体でも十分に良いものですので、既にさまざまなマイクをお持ちの方もぜひチェックしてみてください。付属するショック・マウントとウィンド・スクリーンも非常に優秀なので、私はNT1+AI-1 Interface Bundleを買ってしまいそうです。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2018年4月号より)