
測定マイクの個体差も含めて
補正グラフで特性を確認できる
Reference 4はStudio Edition(33,148円)とHeadphone Edition(12,778円)の2種類があります。前者はスピーカー測定ソフトとDAWで使用するスピーカー補正プラグイン、ヘッドフォン補正プラグイン、コンピューターに常駐してくれる補正ソフトSystemwideのセット。後者はヘッドフォン補正プラグインとSystemwideのセットです。Studio Editionには測定用マイクのXREF 20が付属するセット、Studio Edition With Mic(39,630円)も用意されています。この測定マイク、1本ごとに特性が計測されており、その特性データがスピーカー補正時に反映されます。どんなマイクでも個体によってどうしても周波数特性のばらつきが出てしまうのですが、それを抑えてスピーカー補正ができるのはありがたいです。
測定は、XREF 20をオーディオI/Oに接続し、測定ソフト画面の指示通りにマイクを動かして測定を進めれば、あっという間に終わります。測定中にスピーカーから音が出るので、なるべくマイクにほかの音が入らない状況にして、最初の測定位置は普段自分が聴いている正確な場所にセットしてください。ここがずれてしまうと補正の効果が発揮されません。補正のプロファイルはスピーカーの種類ごとに作成できるので、今回は筆者が使っているFOCAL PROFESSIONAL Trio6 BeとMUSIKELECTRONIC GEITHAIN RL906を使って測定しました。
測定結果はグラフで表示されるので、自分のリスニング環境がどういった状況なのか一目瞭然(りょうぜん)です。特性を目で確認できるというのもこのソフトの醍醐味ですね。筆者のスタジオ環境ではTrio6 BeとRL906はほぼフラットな特性でしたが、スピーカー左側にラック機材を積んでいることもあって左右のバランスに若干ばらつきがあることが分かりました。この測定したデータをDAWのマスター・トラックにインサートしたスピーカー補正プラグインで読み込み、CALIBRATIONボタンをオンにすれば、補正フィルターによってフラットな音に近づけてくれます。
ゼロ・レイテンシーの補正フィルターや
位相変化の無い補正フィルターが使える
しっかりと補正してくれましたが、やはりフラット過ぎるのは面白くないので、自分好みに微調整をしていきます。補正目標となるカーブはフラット以外にもあり、“Custom”では高域/低域のバランスを調整できるので、リファレンス曲を聴きながらしっくり来るまで調整するとよいでしょう。DRY/WETというツマミがあり、左に回していくと元の特性に近づけることも可能です。ほかにもプロ用/コンシューマー用のスピーカーやヘッドフォンの特性をシミュレートするカーブも用意されています。
補正後と補正前で一番効果を実感したのは、センター定位のフォーカスがビシっとそろったことです。そしてセンターがそろうことでステレオ感もしっかりするため、音の広がりが増します。実際にミックスなども行ってみましたが、音作りの際の迷いが減りました。
ヘッドフォン補正ソフトでは手持ちのヘッドフォンの特性を新たに計測する必要は無く、既に各社のヘッドフォン特性がプリセットされているので、その中から選択するだけで補正が可能です(プリセット数は本当に膨大!)。もちろん筆者の持っているヘッドフォンのプリセットもすべて用意されていました。補正後の音はスピーカーよりも効果を実感しやすく、より作業しやすくなるでしょう。また、スピーカー/ヘッドフォン補正は付属のSystemwideというソフトを使うことで、DAWのアウトだけでなくコンピューターから出る音すべてに適用することができるため、常に理想的な環境で音を聴くことができます。
Reference 4の特筆すべき点は遅延が0msになったことでしょう。遅延を気にすることなく録音時から使用できるため、補正された環境で常に作業ができるということになります。ゼロ・レイテンシーの補正フィルター以外にもフィルター・タイプが選択可能。シビアなミックスやマスタリング時には、遅延があるものの位相がしっかりそろうLinear Phaseモードが好印象でした。
Reference 4は、現在のモニター環境に不満がある人、自分の環境をどう調整していけばよいか指針が欲しい人、ヘッドフォンの付け心地は最高だけど出音に不満があるという人にぜひ試してもらいたい製品です。


(サウンド&レコーディング・マガジン 2018年1月号より)