
アフタータッチなど鍵盤の感触が良好
タッチ・スライダーや自照式ボタンを装備
従来、作編曲や録音という作業は幾つものデバイスを要することであり、スタジオや特定の場所で行われるものでした。しかしキーボード・コントローラー+オーディオI/OのIRig Keys I/Oとノート・パソコンがあれば、数少ないデバイスで場所を選ばずに作業できます。
IRig Keys I/Oは、Mac/WindowsはもちろんiOSにも対応しています。パソコンとの接続に使用するのは、付属のUSB/ミニDINケーブル。またLightning/ミニDINケーブルも付いており、APPLE iPadやiPhoneに接続する際も変換アダプターなど無しに直接つなげられます。さらにiPadやiPhoneを設置するためのスタンドも同梱されているので、ちょっとした作業の際も便利です。
25鍵と49鍵の2機種が用意されており、25鍵モデルには同社のワークステーション音源ソフトSample Tank 3のフル・バージョン、ソフト・シンセのSyntronik Pro-V、プラグイン・エフェクトのバンドルT-Racks CS Deluxe、DAWソフトABLETON Live 9 Liteのライセンスが付属。49鍵モデルには、これらに加えてオーケストラ音源Miroslav Philharmonik 2 CEが付きます。
今回は、49鍵モデルを使って使用感をチェックしました。まずキーボード・コントローラーとしてのIRig Keys I/Oは、鍵盤のタッチがとても良くて弾きやすいです。レスポンスも良く、特にアフタータッチの感触が秀逸で、微妙な演奏の表情を付けやすいよう設計されていると感じます。そして、ピッチ・ベンドとモジュレーションのコントロールがタッチ・センスのスライダーになっているのが今風です。個人的に、こういったスライダーはホイールやスティックよりも繊細なニュアンスを作りやすいと感じています。特にピッチ・ベンドは、グラデーションのように段階的な変化はもちろん、音階を飛び越えるような効果も指先で作れてしまうので、タッチ・センスならではの面白い表現が容易です。パッドは適度に柔らかく、ベロシティによりバック・ライト色が変化。この辺りも現代のクリエイター目線で、暗いライブ・ステージでも使いやすそうです。
96kHzに対応した内蔵オーディオI/O
ACアダプターや電池など多彩な電源
続いては、注目のオーディオI/O機能を見てみましょう。音声入力は、XLR/フォーン・コンボのマイク/ライン・インが1つだけ。潔いですね。内蔵のクラスAマイクプリは48Vのファンタム電源を備えているため、コンデンサー・マイクも接続できます。またHi-Zに対応しているので、エレキギターなどを直接つなぐことも可能。ゲイン・レンジはマイク入力時が46dB、楽器入力時が27dBとなっており、最高24ビット/96kHzのAD/DA分解能をサポートしています。音質は、曲のスケッチを録るには十分なクオリティだと思います。
このオーディオI/O機能ではバッファー・サイズを32サンプルまで下げられるため、極めて低レイテンシーで作業することができます。例えばノート・パソコンに接続し、弾き語りでスケッチを録るなんてことも可能です。
さらに小さな構成としては、iPadやiPhoneとの併用が挙げられます(写真①)。専用のACアダプターを使えばiPhoneを充電しながらどこでも作曲できるので、これはなかなか優れもの。単三電池×4本でも駆動するため、その場合はACアダプターさえ要りません。パソコンと接続すれば、USBバス・パワーで動作します。
またドライバーをインストールする必要がなく、デバイスに接続したそばから認識される辺り、音楽制作ビギナーの方でもすぐに使い始められそうな一台です。テクノロジーの進化はすごいですね。個人的にはIRig Keys I/Oとノート・パソコンのみで、パワー・スポットや雑踏の中で作曲してみたいものです。



(サウンド&レコーディング・マガジン 2018年1月号より)