
画面上にプリセット音色のアイコンを置き
視覚的に音作りすることが可能
Mac/Windowsに対応し、AU/VSTプラグインとして動作するGalaxynth。画面を見てみると、メインとなるのは“キャンバス”と呼ばれる2次元空間と、その中で自由に動かせる白いドットです。左上のSOUNDS欄をクリックするとプリセット音色のブラウザーが現れるので、そこから好きなものをキャンバスにドラッグ&ドロップし、視覚的に音作りすることができます。そのSOUNDSの上にはEXPLORE、XY PAD、KEYBOARDの3つのモードの表記が並び、クリックすることで切り替えが可能。各モードについて紹介します。
●EXPLORE(上の画面)
プリセット音色を幾つか選んでキャンバスに配置し、基本となるサウンドを作るモード。白いドットをマウス・ポインターで動かし、好みのサウンドが得られる位置を探ります。左上のPRESETS欄にはRandomというコマンドがあり、プリセット音色の組み合わせをランダムに設定できます。Randomの下には楽器のカテゴリーが並び、関連性のある別の音色の組み合わせをロード可能。もちろんイチから組み合わせを作ることもできますが、“おまかせ”のような感じで設定するのも面白いでしょう。
●XY PAD(画面②)
白いドットをホストDAWのオートメーションや内蔵モジュレーション機能(後述)で動かせるモード。音色のブレンドやモーフィングが行えるようになります。

●KEYBOARD(画面③)
選択したプリセット音色のそれぞれを、どの音域に配置するかを決めるモード。鍵盤のグラフィックが描かれていて、例えばピアノ系の音色を高音域に、サックス系の音色を低音域に持ってきたい場合は前者を高音の鍵盤側に、後者を低音の鍵盤側に置きます。これは左右方向の配置ですが、上下方向は音量の軸で、上の方に配置すればするほど、その音色が大きく聴こえるようになります。

モーフィングやブレンドで生み出せる
楽器的でありながらどこか奇妙な音色
では、これらのモードを使って、どのように音作りしていくのでしょうか? 僕が普段使っているDAWソフトのAPPLE Logic Proには、Sculptureという物理モデリング・シンセが装備されています。そのSculptureでは、例えばエレピの音色を生み出す場合も、膨大なパラメーターを設定する必要があります。しかしGalaxynthは、既に作られた音色を組み合わせることが前提で、複雑な設定をすることなく音作りできるのが魅力。異なる2つ以上のプリセット音色を選び、自分好みのサウンドをXY PADやKEYBOARDで探るのが醍醐味でしょう。
またキャンバス下部には、組み合わせでできたサウンドのフォルマントや再生速度を変えられるノブがスタンバイ。その右側にはMODUL-8というタブがあり、モジュレーション・マトリクスにアクセスできます。プリセット音色のブレンドの仕方を変えたり、フォルマントをエンベロープ・ジェネレーターやLFOで動かしたりすると、サウンドに表情を与えることが可能。さらに、SETTINGSというセクションにはアンプ・エンベロープやフィルターが、EFFECTSセクションにはリバーブやディストーションなども用意されているため、かなり作り込むことができます。
生楽器系の音源をよく使う筆者からすると、ブレンドやモーフィングというテクニックによって、楽器的でありながらどこか奇妙な音が作れるという感覚です。また現実の楽器では不可能な音が生み出せる点でも、非常に興味深く感じました。音色から音色への移ろいを手軽に作り出せるのは、何か新しい表現につながるかもしれません。 Galaxynthは、既存の音色を洗練させるような音作りよりは、今までに無かった音を見つけにいくシンセだと感じます。中でも興味深いのは、プリセット音色をランダムに組み合わせられること。このランダム機能による想定外の組み合わせが、それまでの自分の表現を超えられる場合もあるかもしれません。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2018年1月号より)