
手のひらサイズのコンパクト感
中低域の押し出しと落ち着いた音質
まず製品の仕様から簡単に見ていきましょう。フル・メタル・シャーシで大人の手のひらサイズというStudio 6|8は、コンパクトな24ビット/192kHz対応のUSB 2.0、MIDI/オーディオI/Oです。フロント・パネルにあるMic/Inst/Line入力の2chと、リア・パネルのMic/Line Inputの2chには、あらゆるタイプのマイクに対応する高品位なマイク・プリアンプをそれぞれ搭載しています。フロント・パネルには、48Vファンタム電源供給ボタンも付いているのでダイナミック・マイクのみならずコンデンサー・マイクも使用可能です。また、リア・パネルには、MIDIおよびステレオS/P DIFデジタルI/Oのブレークアウト・コネクターやヘッドフォン出力などを搭載しています。ThunderboltオーディオI/O接続機器も増えるなか、USB 2.0接続(USB 3.0互換)というのは、今日においてはユーザーも手が伸ばしやすいところでしょう。ドライバーは、Macとの接続においては必要ありませんが、Windowsユーザーは、PRESONUSのアカウント登録をした後にUniversal Controlというハードウェア管理アプリをダウンロードし、インストール。Universal Control上で必要なASIOドライバー設定/管理を行います。
早速、DAWを立ち上げてみましょう。筆書は同社のStudio One 3を使っていて、起動するとデバイスにStudio 6|8が認識されているのを確認。ソング・ファイルを開いて既存の楽曲を再生すると、即座に音を出すことができました。コンピューターと接続してからここまでにかかった時間は、なんとたったの数分! DAWを使うのが初めての学生や、一般ユーザーにとってこんなにうれしいことはありません。DAWは最初の設定でつまづくと、どうしても“難しい”という印象になりがちですが、ここではそのハードルを簡単にクリアしています。
筆者は、自宅作業スペースでは、RMEのFireface UFXを使用していますので、それとの比較となりますが、Studio 6|8の音質は、中低域に押し出し感があり、落ち着いた質感。ハイエンドの解像度は多少落ちるものの、自然な聴こえ方が好印象です。同社の上位機種、Studio 192とサウンドの方向性はよく似ている感じがします。
XMAXクラスAマイク・プリアンプを内蔵
低域から高域までクリアで色付けのない音
次にマイク・プリアンプ部分をチェック。同社はこのマイク・プリアンプ部分に重きを置いているようで、本製品には大きなヘッド・ルーム、より深い低域、滑らかな高域を提供する“XMAXクラスAマイク・プリアンプ”が4基が搭載されています。実際にコンデンサー・マイクをつなぎ、自分の声を録って聴いてみますと、その質感はハイエンドからローエンドまでとてもクリアで色付けが無く、とても好印象で、かなり良い感じです!
フロント・パネルにある4つのLINE/MICノブは、チャンネル1〜4の入力ゲインを−15〜+65dBまで調節できます。また中央のLEDメーターには、それぞれの入力レベルが表示され、実際に目で見て確認することができて便利です。そして、LEDメーターの右上にある“Mon”と記載されているボタンを押すと、コンピューターからの再生音と入力ソース信号を、50:50でミックスした音を聴くことができます。これを使うことで、ダビング時の遅延を気にせず作業ができるでしょう。
さらにその下の“A/B”と記載されているボタンは、ヘッドフォンへの出力ルーティングを切り替えられるというもので、ボタンが消灯している場合は、チャンネル1と2がヘッドフォン出力にルーティングされ、ボタンを点灯させるとチャンネル3と4がヘッドフォン出力にルーティングされるというもの。これは、スピーカーから流れる再生音とはまた別に、ヘッドフォンへの回線が作れるということで“歌うときには聴きたくないけど、スピーカーからは流したい”などいろいろな使い方ができるのではないでしょうか? 惜しいのはヘッドフォン端子がリア・パネルにあるところ。本体形状と内部配線の関係なのでしょうが、ヘッドフォン作業時には、背面からのケーブルの取り回しが少し気になるかも知れません。
しかし、何と言っても本製品の注目すべきところは、このハイクオリティなスペックとコンパクトなサイズで、この価格!なのではないかと思います。Studio 6|8は可搬性抜群、サウンドはスタジオ・レベル。宅録にも向いていますし、価格が3万円台と、はじめてのオーディオI/O購入者にもお薦めです!

(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年11月号より)