
最大8つのオシレーターを使用可能
高域の抜けが良く太さもある音
AvengerはWebブラウザーのタブを増やすようにオシレーターやLFO、フィルター、エフェクトなどのモジュールを追加/削除できるユーザー・インターフェースになっているのが特徴。ウェーブテーブル・シンセシスやFFTエディターで倍音の調整を行って、さまざまな音色を作り出すことができるシンセです。デチューンさせた波形をユニゾンするV-Saw、波形をレイヤーできるSAMPLE STACKER、和音を鳴らすことができるCHORDER、シーケンサー付きドラム・キットなど、多くの機能を備えています。Mac/Windowsに対応し、AAX/AU/VSTで動作可能です。
オシレーター波形はノコギリ波や三角波などが収録されたBasicのほか、ベースやオルガンなど用途ごとに分類されたShapes、その名の通りのWavetables、長めの波形を使ったSamples、クリック/ノイズ波形を含むSpecial Samplesというカテゴリーに分けられ、それぞれに多くの波形が備わっています。近年のシンセサイザーの流れを汲む高域の抜けの良さ、レイヤーせずとも十分な音の太さ、エフェクトによる加工に頼る必要が無いほど全体的にバランスが良い印象でした。オシレーターは最大で8つまで増やすことが可能。一つ一つの音が太くて抜けが良いので、レイヤーしても奇麗になじむところがこのシンセの素晴らしい部分です。
プラグイン画面中央上部やや右側にあるROUTEセクションでは、フィルターやシェイパー、リバーブなど、現在選択しているサウンドがどのようなモジュールにルーティングされて作られているのか一目で分かります。さらにモジュール名の上で右クリック(Macはcontrol+クリック)をすると、そのモジュールのパラメーターが赤枠でズームされるので初心者の方も分かりやすいでしょう。
47種類のフィルター・タイプと
30種類以上のエフェクトを搭載
フィルターは47種類のタイプを収録。ローパスやハイパスなどのノーマルなものから特殊なものまであり、いろいろな効果を生み出してサウンドを作ることができます。例えば、フィルター・タイプのSpecialというカテゴリーに収録されている“VSP TALKBOX”を使うと、近年のEDMのベースに多用される、声を混ぜたようなサウンドが得られます。
プラグイン画面中央下部に表示されるMOD ENVというタブでは、マウスでエンベロープのカーブを書くことができます。操作性がとても直感的で、エンベロープを直接ダブル・クリックすることでポイントを追加したり、ドラッグすることでカーブの角度の調整が可能。最大で8つのモジュレーション・エンベロープを追加できます。エンベロープのプリセットも豊富に収録されており、カーブの書き方が分からない方でも簡単に効果的なモジュレーションを得ることができるでしょう。同列に並んでいるPITCHタブでは、モジュレーション・エンベロープと同様にカーブを描くことでピッチを変化させることが可能です。EDMのメイン・リードによく使われるアタック部分のピッチがグライドするサウンドのほか、リリースに向かってピッチが上がる/下がるサウンドも簡単に作成できます。
Avengerは4つのエフェクト・ラックを備えており、1つのラックにつき8種類のエフェクトを組み合わせることができます。エフェクトは30種類以上あり、ARTSACOUSTICのプレミアム・エフェクトも収録。DISTORTIONやBITCRUSHER、FUZZBOX、VINILIZERなどはナチュラルかつ攻撃的なひずみ方なので、音作りのスパイスとして重宝するでしょう。
1週間ほど使用してみた感想は“できないことが無い!”。搭載された多くの機能によってさまざまな音が作り出せ、なおかつ音が良いため即戦力間違いなしです。万能型シンセという名にふさわしいソフトで、初心者からプロまでおすすめできる製品ですね。


(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年11月号より)