
24ビット/96kHzで12trを録音可能
ダイナミック・レンジが広くシャープな音
実機の見た目はコンパクトかつかなりの高級感があります! 電源を入れてちょっと触っただけで、説明書を見なくても一通りの機能を理解できました。筆者が同社のマルチトラック・レコーダーR24の所有者ということを差し引いても、かなり分かりやすいユーザー・インターフェースだと思います。
ではそれぞれのモードを見ていきましょう。まずはミキサー機能です。マイク/ライン入力に対応した8chのXLR/フォーン・コンボ端子は、ch1~2がHi-Z対応となっています。それぞれのフェーダーに用意されているつまみは、ゲインとワンノブのコンプレッサーの2つのみ。パンや3バンドEQ、センド・エフェクトなどは操作したいチャンネルのセレクト・ボタンを押して、パネル中央やや右側にあるチャンネル・ストリップ・セクションで調整します。EQはHIGHとLOWがシェルビング、MIDがピーキング。センド・エフェクトには、16種類のリバーブとディレイがあります。また、フェーダーの状態やEQ、パンの設定などをシーン・メモリーとして9つまで保存可能です。
次はレコーダーとしての機能です。最高24ビット/96kHzに対応。96kHzでは12tr(各入力チャンネル)、44.1/48kHzでは14tr(各入力チャンネル+ステレオ・マスター)の同時レコーディングが可能です。ch1~8はモノラル、ch9~12とマスターがステレオWAVファイルとしてSDカードに保存されます。もちろんパンチ・イン/アウトにも対応。入力レベルに応じて自動で録音を開始してくれる機能や、レコーディングが始まる2秒前にさかのぼって録音してくれるプリ録音機能も装備しています。突然演奏が始まったときなどに便利ですね。コンピューターが必要無く、単体で12trを24ビット/96kHzで録音できるというだけでもかなり魅力的。小~中編成バンドの一発録音やドラムのマルチマイク録音をハイクオリティに行うことができますね。
実際にベースを録音してみました。かなりダイナミック・レンジも広く、シャープな音の印象です。次にマイクでボーカルも録音。96kHzで録ったということもあり、繊細さを感じます。コンプレッサーは効きがなかなか絶妙で、ほんのちょっとコンプレッションしてリミッター的に使うと良い感じでした。
また、コンピューター/iOSデバイスとUSBで接続して14イン/4アウトのオーディオ・インターフェースとしても使用できます。各入力チャンネルとステレオ・マスターをコンピューターに送り、コンピューターからの信号をch9〜12へ割り当てて出力することが可能です。
5系統のモニター・アウトを装備
個別のミックス・バランスを出力できる
LiveTrak L-12の最大の特徴はモニター機能。ミキサーの各チャンネルはマスターから出力されますが、それ以外にA〜Eまでのモニター・アウト5系統に送ることが可能です。モニター・アウトの端子はAがフォーンL/R+ヘッドフォン・アウト、B〜Eがヘッドフォン・アウトのみとなっています。マスターと同じバランスを出力できるほか、それぞれ個別のミックス・バランスを送ることもできます。PAミキサーならAUXアウトなどを使ってミュージシャンに個別のバランスでモニターを返す、というのは当たり前ですが、このクラスのミキサーにモニター機能が備わっているのはかなり画期的ではないでしょうか。
例えば、なかなか大きな音が出せない場所でのバンド練習を想定してみましょう。ドラムは電子ドラムで、ギターやベース、キーボードなどはラインでLiveTrak L-12に入力すれば、おのおのの音をヘッドフォンで聴きながら演奏することができるわけです。ちなみにフェーダーのバランスは出力ごとに調整できますが、EQなどは変えられません。また、個別のバランスでモニターする場合は、モニター音に内蔵エフェクトはかからない、などの制約はあります。それでもドラマーはベースを大きく返してもらったり、ボーカルは自分の音を下げてもらうなど、よくある要望にも対応できてとても便利に使えると思います。
録音できるミキサーというメリットを生かして、ハード・シンセなどをたくさん持っている人にもお薦めです。サブミキサーは要らないし、複数台のシンセを同期してパラ録音、なんてことも可能。また、小規模なライブ・ハウスなどであればPAミキサーとレコーディングの両方をLiveTrak L-12だけでまかなえるかもしれません。シーン・メモリー機能でバンドごとのメイン・バランスやモニター・バランスを記憶させておけるのも便利です。
このようにLiveTrak L-12はいろいろな使い方の可能性がある製品です。コンパクトな筐体にさまざまな機能を盛り込んだ意欲的なミキサーと言えるでしょう。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年11月号より)