Ujico*/Snail's Houseが使う「FL Studio」第2回

キャラクターの立ったものが多数!
FL Studioの標準搭載プラグイン

Ujico*/Snail’s Houseです。前回に続き、僕が普段使っているIMAGE-LINE FL Studioについて書いてみます。今回は、標準搭載されている特徴的なプラグインの使い方を紹介していきましょう。

Vocodexに入れたコードやベースを
ボーカル素材でモジュレーション

まずはボコーダーのVocodex。ボコーダーと言えばロボット・ボイスのようなサウンドを生み出す使い方が有名ですが、仕組みとしては、基本となるシンセ音(=キャリア)を人の声でモジュレーションすることにより、ああいったサウンドを生成しています。

▲純正のプラグイン・ボコーダーVocodex。本文で言及している“L-R ENCORDING”のスイッチは画面左上にある(赤枠) ▲純正のプラグイン・ボコーダーVocodex。本文で言及している“L-R ENCORDING”のスイッチは画面左上にある(赤枠)

それでは僕が普段、Vocodexで行っているボーカル・サンプルの処理を解説してみます。ここでは分かりやすいようにFL Studioの純正ツールのみで話を進めてみましょう。まずは3オシレーターのシンセ3X OSCを起動。OSC1をノコギリ波にして、OSC2と3は出力しないように設定し、“Phase Rand”(位相のランダム化)のノブを最大値に振り切ります。次に3X OSCでコードを鳴らし、その出力をミキサーのCh5に設定。チャンネル下部の▲アイコンから“Route to this track only”を選び、Ch5をCh6にルーティングします。この設定によりCh5の音が直接マスターへ行かなくなり、Ch6から出力されます。続いてはCh7にボーカル・サンプルを入れ、同じやり方でCh6にルーティング。Ch5をRch、Ch7をLchに振ります(このパンニングについては後述します)。

▲標準搭載の3オシレーター・シンセ3X OSC。画面下部の“PHASE RAND”ノブ(赤枠)で各オシレーターの位相をランダマイズできる ▲標準搭載の3オシレーター・シンセ3X OSC。画面下部の“PHASE RAND”ノブ(赤枠)で各オシレーターの位相をランダマイズできる
▲Ch5(画面左)をCh6(右)にルーティングしているところ。ルーティングがケーブルのようなグラフィックで表現されるため、分かりやすい(赤枠) ▲Ch5(画面左)をCh6(右)にルーティングしているところ。ルーティングがケーブルのようなグラフィックで表現されるため、分かりやすい(赤枠)

次にVocodexをCh6へ立ち上げ“L-R ENCORDING”をアクティブに。この機能を入れると、Vocodexを立ち上げているチャンネルのRchの音をキャリア、Lchの音をモジュレーターとして使用できます。さっきのパンニングはこのためだったわけですね。これで3X OSCの音(キャリア)をボーカル・サンプルでモジュレーションできるようになります。ただしそのままでは使いづらい音なので、Vocodex上のBandwidthノブなどを回してちょうど良いサウンドになるまで調整してみましょう。

ひねった音にしたい場合は、シンセをSytrusに変更します。FL Studio純正で、マルチシンセシス・エンジンを備えたものですね。例えば“Pulstar”というプリセットを選ぶと、16分音符刻みでボーカルがオン/オフするようなサウンドに。また純正のFruity Reeverbで空間と質感を作れば、オケとのなじみがさらに良くなります。

▲標準搭載されているシンセSytrusは、倍音加算や減算合成、FMなど、さまざまな合成方式に対応する ▲標準搭載されているシンセSytrusは、倍音加算や減算合成、FMなど、さまざまな合成方式に対応する

次はベースの音をキャリアにしてみます。純正シンセのHarmorなどでベース・ラインを鳴らしたら、3X OSCのときと同様のルーティングを実行。次にボーカル・サンプルを選択しプレイリスト(トラック画面)上にドラッグ&ドロップしたら、発音タイミングと長さをベースのパターンに合わせます。長さの調整はタイム・ストレッチ機能で行うため、最初から“あ〜”といったようなロング・トーンを選んでおいた方が音質変化の面でも有利でしょう。この素材をHarmorとは違うミキサー・チャンネルに立ち上げ、あとは3X OSCのときと同じ設定を続けます。

▲ボーカル・サンプル(下のトラック)は、ベース(上のトラック)に合わせて発音タイミングや長さを合わせておく ▲ボーカル・サンプル(下のトラック)は、ベース(上のトラック)に合わせて発音タイミングや長さを合わせておく

さて、ベースをボコーディングすると、低域に暴れが生じがちです。そこでFruity Parametric EQ 2でローカットを施した上で、邪魔な帯域を削っていきます。しかしこの処理で低域が減ってしまうため、その補完として3X OSCのサイン波などをベース・ラインのMIDIで鳴らし、ボコーディングした音とミックスしてみましょう。

▲ボコーディングしたベースの不要な帯域を純正のFruity Parametric EQ 2で処理している画面 ▲ボコーディングしたベースの不要な帯域を純正のFruity Parametric EQ 2で処理している画面

全12種類のエフェクトを
X/Yパッドで扱えるEffector

Vocodexに続いては、Effectorという純正エフェクトの使用法です。ドラム・サンプルをロードしてパターンを鳴らしていくだけだと物足りないときに、質感を変えたり、ひねった音にするのに重宝します。

▲Effectorは、画面下部のアイコンで任意のエフェクトを選び、中央のX/Yパッドで扱える純正のプラグイン ▲Effectorは、画面下部のアイコンで任意のエフェクトを選び、中央のX/Yパッドで扱える純正のプラグイン

まずは基本的なドラム・パターンを構築し、そのチャンネルにEffectorを立ち上げます。次に画面下部から任意のエフェクトを選択。全12種類ですが、ここではLO-FIを選んでみましょう。画面上のX/Yパッドのクロス・ポイントをデフォルトの位置から動かすと、音が変化します。これをキマっていると思える位置に設定した後、オートメーションを描きます。例えば、X軸の値を動かすことで得られる質感変化をオートメーションで制御したい場合、“X PARAM”ノブを右クリックして“Create automation clip”を選択。するとプレイリスト上にオートメーション・クリップができるため、右クリックでカーブを描くことで質感を部分的に変えたりもできます。

チャンネルのルーティングで
サイド・チェイン・コンプを設定

次はFL Studioでの基本的なサイド・チェイン・コンプのかけ方について解説します。一例として、3X OSCのシンプルなサイン波にキックをトリガーとするサイド・チェインをかけてみましょう。まずはトリガーとなるキックを作成。僕はドラム・キットのキックとは別途、トリガー用に短めのキックを用意します。このトリガー・キックのチャンネルを“Sidechain to this track”というメニューで3X OSCのチャンネルにルーティング。マスター・チャンネルには行かず、3X OSCのチャンネルに立ち上げるコンプへサイド・チェイン入力できるようになりました。

▲画面は、Ch10に“Sidechain to this track”のメニューを表示させているところ(赤枠)。このメニューを選ぶと、選択中のチャンネルの信号を任意のチャンネルに挿したプラグインへサイド・チェイン入力できる ▲画面は、Ch10に“Sidechain to this track”のメニューを表示させているところ(赤枠)。このメニューを選ぶと、選択中のチャンネルの信号を任意のチャンネルに挿したプラグインへサイド・チェイン入力できる

使用するコンプは、標準搭載のコンプ/リミッターFruity Limiter。画面上の“SIDECHAIN”を“1”に設定すれば、自動的にサイド・チェイン・モードに切り替わります。あとはトリガー・キックをドラム・キットのキックと同じパターンで鳴らし、コンプの各パラメーターを調整するだけ。使用するキック・サンプルやどのくらいコンプレッションしたいかによって設定が変わるので、出音を確かめながら一番しっくりくるセッティングを作ってみましょう。

▲Fruity Limiterは、標準搭載のコンプ/リミッター。サイド・チェイン・モードは“SIDECHAIN”で数字を選ぶとオンに(赤枠) ▲Fruity Limiterは、標準搭載のコンプ/リミッター。サイド・チェイン・モードは“SIDECHAIN”で数字を選ぶとオンに(赤枠)

最後に少し変わったエフェクト、Gross Beatを紹介。原音の発音タイミングやボリューム・エンベロープに変化を加えられるもので、例えばドラムにかけると簡単にフィルやグリッチを作れます。シンセなどにも同様の効果を与えられるため、普段と違う音が得られるでしょう。 

▲グリッチなどの効果を簡単に得られるGross Beat。FL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)とFL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版:31,000円)に標準搭載されており、FL Studio 12 Producer Edition(24,000円)とFL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)は、単体製品を別途購入する必要がある。上記の製品は、Signature Bundle以外はbeatcloud(https://beatcloud.jp/)でダウンロード購入可能だ。なお、11月30日(木)までに日本国内でパッケージ版を購入した人全員に向けてキャッシュ・バック・キャンペーンが行われている(http://hookup.co.jp/blog/6329) ▲グリッチなどの効果を簡単に得られるGross Beat。FL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)とFL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版:31,000円)に標準搭載されており、FL Studio 12 Producer Edition(24,000円)とFL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)は、単体製品を別途購入する必要がある。上記の製品は、Signature Bundle以外はbeatcloud(https://beatcloud.jp/)でダウンロード購入可能だ。なお、11月30日(木)までに日本国内でパッケージ版を購入した人全員に向けてキャッシュ・バック・キャンペーンが行われている(http://hookup.co.jp/blog/6329

今回はここまでとなりますが、次回もFL Studioについて僕なりの視点で書いていきますので、お楽しみに!

FL Studio シリーズ・ラインナップ

FL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)
FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版のみの販売:31,000円)
FL Studio 12 Producer Edition(24,000円)
FL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)

<<<Signature Bundle以外はbeatcloudにてダウンロード購入可能>>>