
出力はXLRのライン・アウト2系統
個別にグラウンド/リフトの設定が可能
PCDIはファンタム電源や電池が必要無いパッシブ・タイプのDIです。重量は一般のDIと同等の611gで、外形寸法は92(W)×44(H)×127(D)mm。外観はチープな感じではなく、しっかりとした作りになっています。インプット側のパネルにはRCAピン端子×2、ステレオ・ミニ端子×1、フォーン端子×2の3種類を用意。これは他社のDIには見られない独特の仕様ですね。PCDIは入力側のRCAピンとステレオ・ミニの入力信号がリンクしているので、お互いにTHRUアウトとして使用できますが、フォーン入力は完全に独立していて、バランス出力にのみ信号が送られるようになっています。また、パネルの右側には20dB PADとMONO/STEREO切り替えスイッチを搭載しています。
アウトプット側のパネルには、赤白に色分けされたローインピーダンスのバランス信号出力(XLR)×2系統を用意しています。ステレオでの出力だけでなく、MONO/STEREOスイッチを押すことでステレオ入力をモノラルにまとめて、それぞれのアウトから出すことが可能。ライブ・ハウスなどで“卓のチャンネルが足りない!”といったような場合に非常に重宝する機能です。そして、それぞれの出力チャンネルに独立したグラウンド/リフト・スイッチが付いています。これも他社製品には見られない仕様で、この製品のこだわったポイントになっていると思います。別々の楽器や機器を入力しても、それぞれの入力に対してグラウンド/リフトの設定をどうするのか決めることができるので、ノイズが乗った場合は個別に対応できるのです。
スピーカーに張り付くような
どっしりとした存在感のある音
実際に、コンピューターのステレオ・ミニ出力からステレオRCAピン・ケーブルを使ってPCDIに接続し、音を出してみます。現在、PAの現場でもSEや同期トラックをコンピューターやiPodなどで再生することが多くなってきました。私の個人的な意見なのですが、そういった機器のステレオ・ミニ出力の音質は、PAを通した大きな音で再生するとどうしても高音がシャリシャリし過ぎていて、芯が無い音になってしまうと感じています。しかし、このPCDIを通して再生してみると余計な高域が目立つことなく、スピーカーに張り付くようなしっかりとした音になりました。どっしりとして存在感があるように聴こえますね。
次はエレキギターをつないでハイインピーダンスの楽器の音質もチェックしてみます。音量を上げていくと……おっと! キーンという高周波ノイズが乗っていたので、チャンネルのグラウンド/リフト・スイッチをリフトへ切り替えます。そうすると見事にノイズが無くなりました。ノイズ対策用にグラウンド/リフト・スイッチが各チャンネル別々に付いているのは非常にありがたいですね。ギターの音は、ラインでミキサーに直接つなげたときのような、こもった感じのペラペラな音ではなく、ギター・アンプで鳴らしたようなサウンドになって好印象でした。PCDIはしっかりとしたトランスの設計がされているのだろうと思います。
PCDIは入力端子の種類も多く、音質も素晴らしい製品です。バンドの同期用やDJミキサー用、コンピューターからの音源再生用のDIとしてバッチリだと思います。また、最近のデジタルPAミキサーの入力にはXLR端子しか無い場合も多いため、卓側でコンピューターやiPodを再生するときのXLRへの変換器としても使いやすいと思います。前述の通り、フォーン入力2系統に別々の楽器/機器をつないで2個のモノラルDIとして使う場合、それぞれにグラウンド/リフト・スイッチが使えるのでノイズ対策の信頼性がかなり高いという点もポイントです。マルチケーブルやスプリッターなどの製品でプロフェッショナルから高い信頼を得ているWHIRLWINDの製品ですので、安心して使えますね。

撮影:川村容一
(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年8月号より)