
GUIの細部まで親切に設計されていて
多機能なのに直感的に操作できる
Geist2では、実にさまざまなことが行えます。例えばステップ・シーケンサーを使うと、ノートのベロシティ/パン/ピッチを調整するようなことから、ステップの細分化や発音タイミングの調整などが可能。サンプラーではブラウザーからバーチャル・パッドにオーディオを読み込んで鳴らせますし、サンプルのスタート・ポイントを調整したり、フィルター・カットオフやレゾナンスのコントロールなども行えます。また“TransMod”モジュレーション・システムでのLFOによるモジュレーションやマクロ・コントロール、数式を使用するディープな加工も特徴です。
サンプラーの各パッドとエンジン(後述)のマスターにはミキサーが装備されており、プリセットのエフェクトをインサートして使えます。エフェクトの種類は、大きく分けるとディストーション/ダイナミクス/EQ/フィルター/FX(ディレイやモジュレーション系)/リバーブの6つに分類され、それぞれ種類が豊富。ソフト音源のエフェクトはオマケになりがちですが、用途に応じて選択でき、さらにはそれぞれにプリセットが備わっていて素晴らしいですね。またバージョン2になって、クリエイティブな音作りが楽しめるディレイ“Bloom”や、マルチバンド・ディストーション/オーバードライブの“Maul”など、初代に無かったものが追加されました。
これらのシーケンサーやサンプラー、ミキサー、エフェクトなどは“エンジン”としてひとまとめになっています。エンジンは全部で8つあり、GUI上部の丸いボタンで切り替えて使用することが可能。それぞれのシーケンサーやサンプラーは独立したもので、作成したフレーズをソング・セクションで組み合わせて再生できます。
こういったソフトを導入した際、使い方やワークフローを理解できずに、そのまま使わなくなることがよくあります。ですが今回、Geist2を手に入れて公式Webサイトのチュートリアル動画を見ながら使ってみたところ、ワークフローを理解するまでに30分もかからなかったのです。GUIの細部まで親切に設計されていて、多機能であることが信じられないほど直感的に操作できました。
音色のレイヤーがスムーズに行える
膨大な素材を読み込んでも動作が軽い
普段キックなどの打楽器に関しては、レイヤーしてさまざまな加工を施していますが、Geist2ならDAWだけでは難しい処理をスムーズに行えます。例えばエンベロープ・フィルターで抽出したキックのアタック成分と、ピッチをチューニングした後に抜き出した低域成分をレイヤーするような処理。もしくは、スネアの胴鳴りを抜き出した素材にハンド・クラップの高域成分を重ね、リサンプリングするような処理です。また音をレイヤーしたいときに、任意のパッドを選択した状態でシーケンサーを再生しつつブラウザーで素材を探すと、そのパッドの音がブラウザー上でカーソルを置いた素材に入れ替わって再生されます。これにより“実際にレイヤーしてみたらうまくなじまなかった”ということが起こらなくなります。
TransModモジュレーション・システムにはサイン波のLFOをはじめ、さまざまな波形のLFOが使えるMORPHING LFO、ランダムな波形を生成できるSAMPLE AND HOLD、数式を使って波形を作れるMATHSなど計8種類のモジュレーターがスタンバイ(画面①)。また16スロット分を同時に使用できるので、さまざまなパラメーターをモジュレートすることが可能です。例えばパンをモジュレートしてオート・パンのように使ったり、SAMPLE AND HOLDで声ネタのピッチを揺らして不思議なボイス・エフェクトを生成するなど、狙った効果を得ることはもちろん、偶発性を楽しむこともできます。

そして最も驚いたのは、超快適な動作です。サンプラーは、膨大なサンプルを読み込むと重くなるという印象があるのですが、Geist2は多機能ぶりを感じさせないほど瞬時に起動し軽快に動作します。まだまだ紹介し切れない機能がたくさんありますが、ぜひデモを試してみてください。ビート・メイクが楽しくなるお薦めのソフトです。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年11月号より)