「FXPANSION Geist2」製品レビュー:直感的なGUIとディープな編集機能を備えるビート・メイク用ソフト

FXPANSIONGeist2
FXPANSION Geist2は、ステップ・シーケンサーやサンプラーなどを統合したビート・クリエイター用のインストゥルメント。Mac/Windowsに対応し、スタンドアローンほかVST/Audio Units/RTAS/AAX Native(64ビット)プラグインとして動作します。また容量2.6GBに及ぶサンプラー用ライブラリーが付属し、アカウントにシリアルを登録すると、拡張音源から任意の2つを選んでダウンロード可能。早速レビューします。

GUIの細部まで親切に設計されていて
多機能なのに直感的に操作できる

Geist2では、実にさまざまなことが行えます。例えばステップ・シーケンサーを使うと、ノートのベロシティ/パン/ピッチを調整するようなことから、ステップの細分化や発音タイミングの調整などが可能。サンプラーではブラウザーからバーチャル・パッドにオーディオを読み込んで鳴らせますし、サンプルのスタート・ポイントを調整したり、フィルター・カットオフやレゾナンスのコントロールなども行えます。また“TransMod”モジュレーション・システムでのLFOによるモジュレーションやマクロ・コントロール、数式を使用するディープな加工も特徴です。

サンプラーの各パッドとエンジン(後述)のマスターにはミキサーが装備されており、プリセットのエフェクトをインサートして使えます。エフェクトの種類は、大きく分けるとディストーション/ダイナミクス/EQ/フィルター/FX(ディレイやモジュレーション系)/リバーブの6つに分類され、それぞれ種類が豊富。ソフト音源のエフェクトはオマケになりがちですが、用途に応じて選択でき、さらにはそれぞれにプリセットが備わっていて素晴らしいですね。またバージョン2になって、クリエイティブな音作りが楽しめるディレイ“Bloom”や、マルチバンド・ディストーション/オーバードライブの“Maul”など、初代に無かったものが追加されました。

これらのシーケンサーやサンプラー、ミキサー、エフェクトなどは“エンジン”としてひとまとめになっています。エンジンは全部で8つあり、GUI上部の丸いボタンで切り替えて使用することが可能。それぞれのシーケンサーやサンプラーは独立したもので、作成したフレーズをソング・セクションで組み合わせて再生できます。

こういったソフトを導入した際、使い方やワークフローを理解できずに、そのまま使わなくなることがよくあります。ですが今回、Geist2を手に入れて公式Webサイトのチュートリアル動画を見ながら使ってみたところ、ワークフローを理解するまでに30分もかからなかったのです。GUIの細部まで親切に設計されていて、多機能であることが信じられないほど直感的に操作できました。

音色のレイヤーがスムーズに行える
膨大な素材を読み込んでも動作が軽い

普段キックなどの打楽器に関しては、レイヤーしてさまざまな加工を施していますが、Geist2ならDAWだけでは難しい処理をスムーズに行えます。例えばエンベロープ・フィルターで抽出したキックのアタック成分と、ピッチをチューニングした後に抜き出した低域成分をレイヤーするような処理。もしくは、スネアの胴鳴りを抜き出した素材にハンド・クラップの高域成分を重ね、リサンプリングするような処理です。また音をレイヤーしたいときに、任意のパッドを選択した状態でシーケンサーを再生しつつブラウザーで素材を探すと、そのパッドの音がブラウザー上でカーソルを置いた素材に入れ替わって再生されます。これにより“実際にレイヤーしてみたらうまくなじまなかった”ということが起こらなくなります。

TransModモジュレーション・システムにはサイン波のLFOをはじめ、さまざまな波形のLFOが使えるMORPHING LFO、ランダムな波形を生成できるSAMPLE AND HOLD、数式を使って波形を作れるMATHSなど計8種類のモジュレーターがスタンバイ(画面①)。また16スロット分を同時に使用できるので、さまざまなパラメーターをモジュレートすることが可能です。例えばパンをモジュレートしてオート・パンのように使ったり、SAMPLE AND HOLDで声ネタのピッチを揺らして不思議なボイス・エフェクトを生成するなど、狙った効果を得ることはもちろん、偶発性を楽しむこともできます。

▲画面① TransModモジュレーション・システム。画面は、スロット1にSAMPLE AND HOLDでのLFOをロードしたところ。スロットは全部で16あるので(画面に映っているのは13まで)、さまざまなパラメーターをモジュレート可能 ▲画面① TransModモジュレーション・システム。画面は、スロット1にSAMPLE AND HOLDでのLFOをロードしたところ。スロットは全部で16あるので(画面に映っているのは13まで)、さまざまなパラメーターをモジュレート可能

そして最も驚いたのは、超快適な動作です。サンプラーは、膨大なサンプルを読み込むと重くなるという印象があるのですが、Geist2は多機能ぶりを感じさせないほど瞬時に起動し軽快に動作します。まだまだ紹介し切れない機能がたくさんありますが、ぜひデモを試してみてください。ビート・メイクが楽しくなるお薦めのソフトです。

link-bnr3

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年11月号より)

FXPANSION
Geist2
25,000円
▪Mac:OS X 10.9以降、Core Audio対応のオーディオI/O、スタンドアローン動作およびVST/Audio Units/RTA S/AAX Native(64ビット)ホストに対応 ▪Windows:Windows 7(SP1)以降、ASIO対応のオーディオI/O、スタンドアローン動作およびVST/RTAS/AAX Native(64ビット)ホストに対応 ▪共通:INTEL Core iシリーズ以上のCPU(Core i5以上を推奨)、空き容量4GBのDDR2 RAM