
着けているのを忘れるほど軽量
イア・フックやブームは左右どちらにも対応
MicroLite Seriesはイア・フック型のEC、ヘッドウォーン型のHC、ラベリア型のLCがあり、それぞれ単一指向と無指向が用意されています。今回テストするのはEC81 MD(単一指向)、HC82 MD(無指向)、そしてLC81 MD(単一指向)の3機種です。どれも音楽PA用というよりはMCや演劇、映像収録などを視野に入れた製品とのこと。それぞれ型押しスペーサー付きの専用マイク・ケースに入っています。マイク自体がとても壊れやすいので、こういったケースがある気配りに感心しました。
ケースから取り出したマイクは、びっくりするくらい超軽量で細いワイアーの中に配線が入っているのが信じられないほど。ケーブル込みの重量は、ラベリア型は4gまたは6g、イア・フック型は8g、ヘッドウォーン型は12g。試しに筆者が着けてみましたが、着けていることを忘れてしまうほど軽くて自由に動けて抜群の装着感です。
マイク端子はMicrodotコネクターが採用されており、端子部分が簡単に脱着できます。付属している端子はAKG製ワイアレス・システムにそのまま接続できるミニXLR。またオプションのアダプターと交換すれば、AKGだけでなく、AUDIO-TECHNICA、BEYERDYNAMIC、LECTROSONICS、SENNHEISER、SHURE製のワイアレス・システムとも組み合わせて使用できるようになっており、とてもよく考えられていてポイントが高いです。
さらに、耳に掛けるフック部は柔軟性に優れた素材で、位置も自在に調整可能。顔の大きさや耳の位置に関係なく、最適な場所に固定できます。イア・フックやヘッドウォーンのブームは左右どちらにでも取り付け可能です。

色付けの少ないスムーズで自然な音
ハウリング・マージンも取りやすい
スペックを把握したところで、実際に音を出してみましょう。現場はショッピング・モールの野外イベント・ステージ。常設スピーカーはステージ・ルーフにフライングしてあります。スピーカー位置と立ち位置はかなり近く、スピーカーの真下でしゃべることもあります。会場のワイアレス・システムがSHURE製でしたので、アダプターでSHURE用のTA-4F端子に変換してテストしました。
最初に無指向のHC82 MDから試してみました。ヘッドウォーン部のワイアーはとても細いのですが強度もあり、頬の良い位置にマイクをセットできます。マイク本体がとても小さいにもかかわらず、音色は素晴らしいです。不必要にハイファイではなく、色付けの無いスムーズで自然な音色。試しに客席エリアに降りてマイク・チェックをしてみましたが、ハウリングが全く無く普通に使用できるのに驚きました。無指向性マイクの場合、ハウリング・マージンを取るのが大変厳しいのですが、このマイクなら過酷な環境でも使用できそうです。
続いて、単一指向のEC81 MDに付け替えてのテストです。こちらは思ったよりも指向性が狭く感じました。付属のウィンド・スクリーンを装着して、マイク位置を口の横くらいに持っていかないと、あまり収音されない印象です。これは利点でもあり、ひょっとしたらボーカルなどのモニター環境に配慮した設計かもしれません。セッティングもうまくできたのでチェックしてみましたが、ハウリング・マージンも高く、80Hzのハイパス・フィルターを入れただけで、EQ無しでも十分使える音になっているのに驚きました。
最後にラベリア・タイプのLC81 MDをチェックしてみました。ここまでテストしていると、大体サウンドが想像できてくるので楽しくなってきます。たぶん声の収音について使いやすいように周波数特性を調整してあるのでしょう。先の2機種と同じく軽やかなサウンドと申しましょうか、使用環境を問わない、プロ・ユースとしての十分なクオリティを感じました。
同価格帯には他社のマイクも多く存在しますが、周波数特性を丁寧にコントロールして使いやすい音を生み出してくれるMicroLite Seriesは、フィールドや劇場空間での大いなる選択肢の一つに成り得ると感じました。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年5月号より)