
GainノブとTYPEスイッチにより
サウンド・キャラクターを調整可能
Redd Microphoneは、トラディショナルなラージ・ダイアフラムのコンデンサー・マイクロフォンと、同社の製品であるRedd.47真空管プリアンプをユニークな手法で融合し、NEUMANNのUタイプ(U47やU67など)のクローンとは全く異なるリッチなサウンドとトーンを達成している、とのこと。
この製品の特徴として挙げられるのは、やはりプリアンプ内蔵という点でしょう。微弱信号であるダイアフラム直後の信号をケーブルで引き回すこと無く増幅できるため、一切のロスが無く、ピュアに収音することができます。内蔵プリアンプを最小(+4)に設定すれば従来通りにほかのプリアンプ経由で使用することも可能ですので、普段から使っているプリアンプの色を出す、という使い方もできます。
ミリタリーライクなデザインのマイク本体には指向性切替スイッチ(単一指向性または無指向性)、PADスイッチ(−10dB)を装備。また、内蔵プリアンプのGainノブ(+4〜+33dB)と、TYPE(NORMとDRIVE)スイッチにより、サウンド・キャラクターを調整できます。パワー・サプライにはOUTPUTノブを備えており、最終レベルを調整すると同時に、プル・スイッチによってローカット機能を有効にすることも可能です。これらマイク本体とパワー・サプライ、専用マイク・ケーブル、マイク・ホルダーを専用のカスタム・ケース内に収めることができるので、持ち運びにも非常に便利。おなじみとなったファイアー・パターンのロゴが真っ黒なケースに映えます。

ふくよかでビッグなサウンドながら
フォーカスがしっかり決まっている印象
それでは実際にレコーディングで試してみます。今回は男性と女性、両方のボーカル・レコーディングで試すことができました。試聴はRedd Microphoneの後段に、普段使用しているプリアンプを接続して行いました。
まずは男性ボーカルです。Redd Microphoneのゲインを+30dBに、TYPEはNORM、プリアンプはライン受けに設定します。スピーカーから出てきたサウンドはとてもファットかつ倍音の伸びたものでした。筆者は同社の製品であるRedd.47プリアンプを使用したことがあるのですが、そのときの印象と当然ながら非常に似ています。長いボディの本体の共鳴も相まってか、ふくよかで、口が大きく見える近くてビッグなサウンドながら、音抜けの悪さは感じません。ケーブルによるロスが少ない分、フォーカスがビシッと決まっているような印象を受けます。この状態からTYPEをDRIVEに設定すると、多少ゲインも上がり、真空管をサチュレートさせたようなひずみが加わります。とはいえ非常に音楽的なひずみで、いわゆるディストーション・サウンドでは無く、積極的に使っていけるものだと感じました。
次はRedd Microphoneのゲインを最小の+4dBに、TYPEはNORM、後段のプリアンプのマイク・ゲインでレベルを稼ぎました。“おぉ”と思わず声が漏れます。先ほどの印象にピュアでハイファイなサウンドが足されたようなイメージです。耳の近くで歌っているようなサウンドは若干陰を潜めますが、オールマイティに使える設定はこちらではないかと感じました。ハイファイ・ビンテージとでも表現すればよいでしょうか、とてもバランスの取れたサウンドです(ちなみに、現場で後ろにいたスタッフの方々も一緒に“おぉ”と言っていました)。
女性ボーカルでも同じ設定を試してみましたが、印象としては全く変わらないものでした。現行機のハイファイなマイクロフォンを女性ボーカルに使用する際、ともすると高域に痛さを感じることがありますが、Redd Microphoneではその印象は皆無。ボーカル・マイクとしてどんなジャンルにも対応できそうです。今回楽器に試すことはできませんでしたが、アコギやストリングスなど、生楽器には特に威力を発揮しそうです。
CHANDLER LIMITEDは現代におけるビンテージライクなサウンド・メイクが非常にうまく、かつ何にも似ていない、と感じる製品が多数あります。Redd Microphoneも間違いなくその中の一つ。ビンテージ・マイクのウォームさと現代マイクのハイファイさを併せ持ち、設定の範囲も非常に幅広いためどんなサウンドにも対応のしやすい、“使える”万能選手です。


(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年5月号より)