zAk〜音のプロが使い始めたECLIPSE TDシリーズ

TD-M1はメジャーとして信頼できる道具だと思う

タイムドメイン理論に基づき設計されたECLIPSEのスピーカー、TDシリーズ。2001年に最初のモデルがリリースされるやいなや、ミックスやマスタリングなど正確な音の再現が要求される現場で高い評価を獲得。その後モデル・チェンジやラインナップの拡充が続けられ、2014年に登場したTD-M1はアンプやDAコンバーターを内蔵し、これまで以上に幅広い層から人気を博している。そんなECLIPSE TDシリーズの魅力をトップ・プロに語っていただくこのコーナー、今回登場していただくのはzAk氏だ。2000年に自身の拠点であるスタジオ=ST-ROBOを設立、素晴らしい雰囲気と自身の的確なエンジニアリングにより、数え切れないくらいの名作を生み出している。日々、レコーディングそしてPAと大忙しの氏に、最近愛用のモニターであるというTD-M1について話をうかがう機会を得たので、早速ST-ROBOを訪ねてみることにした。

この記事はサウンド&レコーディング・マガジン2017年5月号から編集・転載したものです。

ミックスの際にバランスがとりやすい

ST-ROBOを構えた2年後の2002年から、zAk氏はMUSIKELECTRONIC GEITHAIN RL900Aをメイン・モニターに据えている。現行の901Kにつながる40cmウーファーをいただく3ウェイ・タイプで、ラージ・モニターとしての使用に十分耐え得るスピーカーだ。

「昔からミックスについてはRL900Aで始めたらずっとそのままやりっ放しだったんです。でも、ある時期からリスナーがみんな小さなスピーカーで聴くようになったので、ラージではなく小さなモニターも必要かなと……昔のエンジニアがAURATONE 5Cやラジカセでチェックをしていた感じですね。MUSIKELECTRONIC GEITHAINのスモール・モニターRL906も使っていますけど、あれは普通の人からするとちっともスモールではないのでね」

幾つかの小さいスピーカーを試した後、zAk氏は2年前くらいからECLIPSE TD-M1を使い始めたという。その理由を次のように話し始めてくれた。

「オノ・セイゲンが使っているのを見て興味を持ったんです。それでまずは借りてみて、“なんだこれは! すごく良くできているな”と。USBをつなげられるし、iPhoneをつなげられるし、ミニ・ジャックそしてWiFiでAirPlayもできる。これは便利だぞと」

まずは接続の利便性に驚いたzAk氏だが、もちろん音についても好印象だったという。

「音のバランスがとてもいいと思いました。それこそこのスタジオの中で一番バランスが取りやすいスピーカーかもしれない。今、僕がここでミックスをする場合、最終的なバランスはラージのRL900Aですごく大きな音でやるか、もしくはTD-M1でやるんです」

40cmウーファーを持つ3ウェイのRL900Aと、8cmフル・レンジのTD-M1とで、同じようにバランスをとることができるとは驚きだ。

「もちろんローの量感は違いますけど、普通のキックやエレキベースであればTD-M1で判断できます。さすがにウッドベースやサブベース、そして30~40Hzとかの後でマスタリングで切りたいところとかは難しいですけど、見当は付きますし、カットしてまた戻して、とやれば超低域に音がいるかいないかは分かります」

小さい音量で鳴らしても音楽の全体像が分かる

普段はRL900AとRL906そしてTD-M1の3つを満遍なく切り替えながら使っているという。

「MUSIKELECTRONIC GEITHAINのスピーカーは自分にとって相性がいい……聴いていて気持ちがいいんです。それに対してTD-M1はちゃんとした道具だと思う。メジャーとして信頼できるというか、とても頼りになる感じがします。例えばラージ・モニターで作業していて、ちょっと疲れてよく分からなくなったというときに、TD-M1に切り替えると、“あ、そうか”みたいに解決方法が見えてくることがある。小さい音量で鳴らしていてもそれがすぐ分かるんです。僕はいつもすごく小さい音でモニターしていますね」

ラージは大きな音で鳴らすことが大前提。それに対して、TD-M1は小さい音で鳴らしても音楽の全体像をつかめるのだという。zAk氏はそれはある種の透明性がこのスピーカーにあるからに他ならないと最後に語ってくれた。

「TD-M1はすごくいいスピーカーだと思いますよ。道具なわけですから、音色が好きかどうかっていう話じゃないです。僕は物理は分からないけどその考え方にあこがれます……新しい発見とか、そういうのを追求する人たちのことを信じている。真理を解明しようとしていて、それを応用して何かを作るというのにはウソが無いんですね。人の気分とかが入っていないというか、他意が無いということ。すべてはそこなんですよ」

【PROFILE】PA/レコーディング・エンジニア、プロデューサー。FISHMANSの仕事で注目を集めた後、UA、BUFFALO DAUGHTER、BOREDOMS、坂本龍一、フリクション、原田郁子、相対性理論、やくしまるえつこ、青葉市子、三宅純など、多くのアーティストのレコーディングやPAを手掛けている。2017年1月から3月にかけてはNODA MAPの公演で音響を担当した。

TD-M1

TD-M1_BK_LR_img_white_03 ■スピーカー・ユニット:グラスファイバー製8cmコーン型フルレンジ ■方式:バスレフ・ボックス ■再生周波数:70Hz~30kHz ■定格出力:20W(T.H.D 1%/片チャンネル駆動時) ■最大出力:25W(T.H.D 10%/片チャンネル駆動時) ■高調波ひずみ率:0.08%(1kHz/10W出力時) ■S/N:90dB以上 ■分離度:60dB以上 ■入力感度:950mVrms(20W出力時) ■入力インピーダンス:10kΩ ■消費電力:10W ■待機電力:2.7W(ネットワーク・スタンバイ時)、0.5W以下(完全スタンバイ時) ■外形寸法:155(W)×242(H)×219(D)mm ■重量:約5.3kg(ペア) ■価格:125,000円(ペア)

問合せ:富士通テン http://www.eclipse-td.com/

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