
高品質なコンプやリミッターを搭載
サイド・チェイン・エフェクトとしても機能
PunishはMac/Windowsに対応し、AU/VST/AAXで動作するエフェクト・プラグインです。アナログ機材をモデリングした5種類のエフェクトを搭載しており、画面中央に設置された“Punishノブ”に各エフェクトのパラメーターをアサインすることで、それらを一括でモジュレートすることができます。画面左側にCOMPRESSORとSATURATION、右側にTRANSIENTS、EQUALIZER、LIMITERがあり、それぞれのパラメーターで細かく設定も可能。搭載されているエフェクトは音の変化が感じやすく、とても効きが良いものばかりです。特にコンプやリミッターは高品質なものが備わっており、他社の専用プラグインにも負けないエッジの効いたサウンドを作り出すことができます。Punishノブを一ひねりすれば、チューブ・プリアンプによるウォームで温かなサウンドや、激しいサチュレーションとコンプレッションで、パンチの効いたサウンドにも変化させることが可能です。またPunishノブの下には入力音量、ドライ/ウェットのバランス、出力音量を調整するノブが備わっています。
ベースやドラム、ボーカル、マスタリングなど8つのカテゴリーに分けられた90種類以上のプリセットも用意されています。使い方がいまいち分からないという初心者から、自分仕様にカスタマイズできる上級者まで、すべての方の即戦力となるでしょう。それに加え、なんとサイド・チェイン・エフェクトとして使用可能なのです。キックに合わせてベースがダッキングするようにコンプをかける、というような使い方もできるので、ダンス・ミュージックでも大活躍間違い無し。僕は全トラックにインサートしてしまうかもしれません(笑)。
簡単に迫力あるサウンドに変化
楽器からマスター・トラックにまで使える
実際にトラック・メイキングで使用してみましょう。まずはドラムにフォーカスしてみます。現代ではさまざまなドラム・サウンドがあり、打ち込みで作っている方もいれば、生のドラムをレコーディングしている方もいると思います。ビートを作ってみたのはいいが、どうしても迫力が出なかったり、フレーズは良いんだけど音像がイメージと違う……という感じになって悩んでいる方も多いでしょう。Punishなら打ち込みでも生ドラムでも、いろいろなサウンド・イメージへ変化させることが可能です。今回は生ドラム系の音源をチョイスして、オーソドックスなビートを打ち込んでみました。そこにPunishを立ち上げて、プリセットの“Drums”のカテゴリーから“Flash Fried”を選択し、Punishノブを一気に0%から100%へ回してみると、普通のドラムの音からコンプレッションされてひずみも加わった、とても派手な音へと劇的に変化しました。こういった処理は普通、幾つものプラグインを組み合わせて面倒なセッティングをしなければいけないのですが、Punishなら中央のノブだけで制御できるのです。Punishノブは、かかり具合によって画面中央のビジュアルが変化するので、分かりやすくてよいですね。この設定のまま、音だけをドラムからシンセ・ベースに変えて、Punishノブのオートメーションを書いてコントロールしても面白いサウンドが模索できそうです。ライブのときはMIDIコントローラーのツマミにアサインして、演奏しながら操作してもよさそうですね。
Punishは、個々のサウンドを大胆に変化させるエフェクトとしての使用以外に、マスター・トラックに挿して使うこともできます。このプラグインには多数のマスタリング・プリセットが収録されているので、その中から一つを紹介しましょう。マスター・トラックにPunishをインサートして、プリセットの“Mastering”のカテゴリーから“Punch Top End”を選択します。多少ミックス・バランスが崩れていたとしても、このプリセットを選んだ時点でPunishに搭載されている上質なコンプとリミッターによりとてもリッチな音質となります。ここでPunishノブを回してみると……プリセット名の通り、全体的に“これでもか!”というほどのパンチが加わりました。ここからPunishノブで調整してもよいですし、各エフェクト・セクションで細かく設定して自分の思い通りのサウンドに追い込むことも可能です。音楽制作を行う中で、ミックス・ダウン〜マスタリング作業は永遠の課題だと思います。直感的な操作から、精密な設定までできるのは素晴らしいですね。
駆け足で説明してきましたが、トラック・メイキングやミックス、マスタリングといったどの場面でも活用することのできる万能なプラグインとなっています。このプラグインさえあれば、すべての音に迫力を出すことができるでしょう。ぜひ、あなたのコレクションに加えてみてはいかがでしょうか?

(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年5月号より)