
旧OSでも使用可能な汎用性の高さ
マイク部だけを汎用スタンドに設置可能
箱から取り出し手に取ってみると予想していたよりも剛性があるしっかりした作りのマイクとスタンドで、実売価格が税込みで7千円以下の製品であるということに少し驚かされます。また1930年代ごろに流行した、リングとワイアーやスプリングなどでマイクをフローティングするデザインをモチーフとしており、レトロ感のあるルックスに機材好きとしては軽く所有欲をくすぐられました。
そんなレトロな外見を持ったRetro-Iですがマイクとしては新興勢力であるUSB接続で、ケーブル1本でコンピューターと接続して使用できます。また前面に入力ゲイン、−10dBのPAD、マイク・ミュート、ローカット・フィルター、ヘッドフォン・モニター音量などがコントロールできるようタッチセンス・タイプのボタンが装備されているところは、レトロな外見とは裏腹のモダンな仕様となっていて面白いです。
デスクトップでの使用を前提としてデスク・スタンドが付属していますが、簡単に取り外すことが可能で、5/8インチ・ネジの汎用マイク・スタンドにアダプターなしで取り付けることができるようになっています。2mと長めのUSBケーブルが付属していますので、グースネック・タイプのスタンドを使用するなどユーザーのニーズに応じた自由なセッティングが可能ではないかと思います。
コンピューター側での設定ですが、専用のドライバーをインストールする必要はなく、Mac/Windowsともに接続するだけで“USB Advanced Device”として認識されます。ちなみにWindowsは最新のWindows 10から古くはWindows XPまで幅広いOSに対応し、MacもOS XであればCPUのタイプは問わないのでINTEL Core 2 DuoやPowerPC G5などの古いタイプのマシンでも問題なく使用することができるのもうれしいポイントです。
扱いやすいバック・エレクトレット方式
しゃべり声とのマッチングが良い音
PAD、ミュート、ローカットに関してはマイク本体にあるグリーンのインジケーターで状態が表示され、ヘッドフォン・ボリュームはOSの機能を使用するので、Mac/Windowsともにボタンを操作すると、コンピューター側に自動的にレベルが表示されます。ヘッドフォン・レベルに関してはボタンのレスポンスも良く、表示もスムーズで全くストレスはありません。一方、入力ゲインに関しては注意が必要でMac/Windowsそれぞれ少しクセがあります。まずMac/Windowsともに、ヘッドフォン・レベルとは異なりOS側では入力ゲインのコントロールはできません。DAWなど入力レベルが表示できるソフトウェアにRetro-Iを認識させ、入力ゲイン・ボタンを操作すると、入力音量の増減が確認できますが、ヘッドフォン・レベルのようなOSレベルでの値の表示が無いのはちょっと残念です。ちなみに、入力ゲインの変更はマイクの出力を直接モニターするダイレクト・モニターには反映されない仕様になっています。
またマイクからの入力はダイレクト・モニターができるので問題ありませんが、Windowsでソフト音源などを演奏しRetro-Iのヘッドフォン・アウトでモニターする場合は、レイテンシーを改善するためにフリーウェアのASIO4Allなど、汎用ASIOドライバーを使用した方がよいでしょう。MacはCore Audioなので大丈夫です。
最後になりましたが肝心な音質について。Retro-Iはバック・エレクトレット・コンデンサーというタイプで、いわゆるコンデンサーとダイナミック・マイクの中間的なキャラクターを持っています。一般的なコンデンサー・マイクよりも解像度は少し劣りますが、湿気などに対する耐性がありタフなのが特徴です。歌やギターなどの楽器の録音にももちろん使用できますが、ナレーションなど“しゃべり”の録音とのマッチングが良いと感じました。レトロな雰囲気を持ちながらUSB接続で手軽に使用できるコスト・パフォーマンスに優れた製品であります。


(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年12月号より)