「EMBERTONE Intimate Strings Solo Bundle」製品レビュー:生々しい4種類のソロ・ストリングス・ソフト音源を収録したバンドル

EMBERTONEIntimate Strings Solo Bundle
アメリカのメーカーEMBERTONEからソロ・ストリングス音源集のIntimate Strings Solo Bundleがリリースされた。ソロ・バイオリンのFriedlander Violinをはじめ、Fischer Viola、Blakus Cello、Leonid Bassと、各弦楽器ごとに発売されていた音源をバンドルしたものだ。エンジンにNATIVE INSTRUMENTS Kontakt 5 Playerを採用しており、スタンドアローンのほかVST/Audio Units/AAXプラグインとして動作する。EMBERTONEはChapman TrumpetやSensual Saxophoneなどユニークでクオリティの高いソフト音源を生み出していて、このバンドルに対しても同じく期待が持てる。価格がリーズナブルでコスト・パフォーマンスが高いのも、このメーカーの良いところだ。さて、どのような仕上がりになっているのか深く探っていくことにしよう。

作り込みがいのあるリアルなレガートと
速さ/強さを個別に設定可能なビブラート

まず各楽器を鳴らしてみて驚くのはその音のつやっぽさ。解像度がかなり高く、弦がこすれるときの音がとても心地良い。一般的にバイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスは各楽器ごとに全く異なるキャラクターを持っているが、それが見事にサウンドに現れている。EMBERTONEのWebサイトに行くと、とてつもなくリアルに打ち込まれたデモが聴けるのでそちらでぜひ体感してほしい。

使えるアーティキュレーションはスタッカート、サステイン、レガート、ピッチカート、トレモロ、コンソルディーノ、スルタスト、スルポンティチェロなど基本的なものはすべて入っている。レガートのつなぎ目はとてもきれいで、“サンプル音源もここまで来てしまったか”という印象を受けた。設定でレガートの移り変わりのスピードを変えられるため、楽曲のテンポによって音の移りが遅れてしまったりする場合にも対応可能。音源にはトリルのパッチは入っていないのだが、このレガートであれば自力で打ち込んでもしっかりとリアルに鳴ってくれる。ビブラートは波の速さと強さを別々にかけることができ、強めていくととてもエモーショナルで、ストリングスのラインを練るときも積極的に各声部を動かしたり、泣きの主旋律を弾かせたくなってしまう。

また、レガート・モードとPOLYモードを切り替えられるようになっていて、レガート・モードのときは次のノートのベロシティによってポルタメントとレガートが切り替わるようになっている。POLYモードにするとポリフォニックで音が鳴るようになり、コードも演奏できる(アーティキュレーションはサステインに固定)。サステインは反応が良く、サンプルごとのムラも少ないので使いやすい。

アンサンブル・モードというものもあり、こちらは8人分のサンプルを重ねてセクションのように鳴らせるモード。ソロ音源だけでなくセクション音源としても使えるありがたい機能だ。

TouchOSCとの連携で
直感的な操作も可能

このバンドルは、ストリングス・セクションのおまけのソロ・パッチという扱いではなく、ソロ専門に作られた音源であるため、無伴奏の楽曲での使用にも耐えうるし、創作に必要なイメージもわいてくる。コンチェルトのソロ・バイオリンとしても使いやすそうだし、ゴリゴリっとした音も出るためフィドルっぽい使い方もよさそうだ。ウェットなサウンドで収録されているストリングス音源が多い中、こちらは搭載されているリバーブを切ると完全にドライなサウンドになるため、クラシカルな編成以外にもさまざまなジャンルで使用ができるだろう。

ほかにもセクション音源にファースト・チェア(首席の意)として混ぜ込むという方法もある。筆者は歌ものに激しめのストリングスを入れるとき、既存のセクション音源でシミュレーションをすることが多い。しかし生のストリングスをレコーディングしたときと違い、アタックがぼやけがちだったり、フォルテの迫力が出ず、いまいちイメージがわきにくい場合がある。この音源は、荒々しくスピード感のあるフォルテを出すことができるので、セクション音源に混ぜ込むといいあんばいで迫力が出てくる。

また、MIDIコントローラー・アプリHEXLER.NET TouchOSCのテンプレート(タブレット用)が用意されており、APPLE iPadなどのタブレットを使用したパラメーターの直感的な操作が可能だ。通常、キー・スイッチやパラメーターなどがどこの鍵盤/コントロール・チェンジにアサインされているのか分かりづらく、それを把握しようとしているうちに使用する気が失せてしまうことも多い。しかしこのレイアウトは必要なものがすべて1画面に現れているため、アプリを使えばすぐにこの音源のすべての力を引き出すことができる(画面①)。

◀画面① HEXLER.NET TouchOSCでFriedlander Violin用テンプレートを表示したAPPLE iPad画面。さまざまなパラメーターをリモート・コントロールでき、直感的な操作が可能になる(TouchOSCは別売り) ◀画面① HEXLER.NET TouchOSCでFriedlander Violin用テンプレートを表示したAPPLE iPad画面。さまざまなパラメーターをリモート・コントロールでき、直感的な操作が可能になる(TouchOSCは別売り)

Intimate Strings Solo Bundleは、今までのソロのストリングスのソフトウェア音源のクオリティをはるかに超えていた。サウンドの生々しさや、TouchOSCのレイアウトの使い勝手の良さ、これまでの打ち込みストリングスに求めていたニュアンスやサウンドの価値観を変えていってくれるだろう。

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年12月号より)

製品ページ:INTIMATE STRINGS SOLO BUNDLE

EMBERTONE
Intimate Strings Solo Bundle
39,140円(価格は為替相場によって変動)
REQUIREMENTS ▪Mac:OS X 10.9以降 ▪Windows:Windows 7以降 ▪共通項目:INTEL Core 2 Duo 2.1GHz以上、4GB以上のRAM、20GB以上のディスク空き容量