
ポール・マウント時に下振りが可能
クセが無く定位が正確
Eシリーズは、塗装仕上げのバーチ材をエンクロージャーに採用。スピーカー・グリルも頑丈で、耐久性を考慮した設計となっている。オプションの金具で壁掛けや天吊り、ワイアーでの吊り下げにも対応可能だそうだ。
キャパ500のホールにスピーカーをセッティングしてみる。まずサブウーファーのE18SWは、重さも大きさも一人で持つには少し大変だった。ネジ込み式のポールを立てた上にE12を差し込む。底面に穴が2カ所あり、スタンダードな真正面向きに立てるのと、10°下向きに立てるのを選べる。E12を差し込むのも一人でもできなくはないが、少し大変であった。
Eシリーズはパッシブ・タイプなので、パワー・アンプが必要になる。今回はQSC PLD 4.3で駆動。E12をフル・レンジ、E18SWをサブロー帯域設定のプリセットで使用した。
ミキサーを用意してマイクのSHURE SM58をつなぎ、声を出してみる。アンプとの兼ね合いによって音の印象の違いはあるとは思うが、同メーカーのもので統一はしたので、そのレポートであることはご了承願いたい。
第一印象としては、クセの無い感じがした。無音に声だけという状態なので、キャパ500のホールでは十分に響きわたる音量が提供できる。またスピーカーを内側に向けサイドフィル・モニターの位置にしてしゃべってみると、センターでしっかりとした定位を確認できた。
85°の水平指向性で広いエリアをカバー
E18SWのしっかりとした量感もポイント
続いて定番のリファレンスCDを使いチェックしてみた。ホールの奥行きは17mあるが、最後列までハイレンジは届いていた。85°の水平指向性を持つので、横方向に関しても一本で十分にカバーする。QSCの独自技術であるDMT(Directivity Matched Transition)デザインのウェーブガイドは、各周波数のバランスを最適なレベルに補正し、広範囲に臨場感あふれるサウンドを出力することを可能にしているらしい。確かに近距離でのハイレンジからはヒステリックさが感じられずに、中域とのスピード感がどの場所でもそれほど変わらない印象があった。ポールはE18SWに付属していて、設置したときにはスピーカー位置が少し低いのではないかと感じたが、DMTデザインの効果なのか、低くてもそれほどうるささを感じなかった。
特筆すべきはE18SWの量感だ。18インチ・ユニットを搭載したダイレクト・ラジエーター型(直接放射型)なので、古き良き平面バッフル的なサウンドが感じられた。このクラスではアンプ内蔵でも一人で持てるような大きさ、重さのものが主流だが、しっかりとした重さのキャビネットは、音にも効果が表れることを感じた。
本体の裏は、スピコンとバリア・ストリップがついているだけのシンプルな形なので、アンプの選定にも、ほかのスピーカーとの組み合わせにも自由度がある。汎用のスタンド・スピーカーはあるがダンス・イベントには対応できないなどの場合に、E18SWだけを追加するといった使い方もできるだろう。持ち運びは大変だが、大きさと重さは逆に量感をアピールするには好都合とも思える。
実際に、ちょっとした催しのステージ内側に向けての音源再生に使用したが、特にEQすることもなく、自然な音質で使用することができた。音とは関係のないことだが、E18SWの物理的などっしりとした安定感は、ステージ袖にあっても転倒などの心配をする必要は全くなく、安心である。このクラスのスピーカーでは特に軽量化が重視されがちだが、量感を重視したキャビネットには好感が持てた。



(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年9月号より)