
軽量で単三電池×2本での駆動にも対応。Hシリーズの専用マイク群を接続可能
U-44の基本スペックはUSB 2.0接続、24ビット/96kHz対応、4イン/4アウト。でもそれだけでは収まらないさまざまなアイディアがてんこ盛りなのです。
まず最初は見た目がハンディ・レコーダーと似ている点。手に持った感じが軽く、形も縦長で片手でしっかり持つことができるので、ノブ類の操作が安定して行えます。ライブの録音、あるいはフィールド・レコーディングといったときに、この軽さと形状は非常にありがたいです。
次に単三電池×2本で駆動できること。後述するAPPLE iPadとの接続はiPadから給電できないため、今までのインターフェースはUSBバッテリーなどを用意しなければいけませんでした。これが電池駆動で一気に解決しているのです。さらに単体でもマイク・プリアンプとして機能しますし、S/P DIFデジタル入出力も備えているため、AD/DAコンバーターとしても使用できます。
そしてさらなるキモが入力部。本体にあるのはXLR/TRSフォーン・コンボ端子のマイク/ライン入力なのですが(ch1はHi-Zにも対応)、本体下部を見るとMIC IN [3−4]と書いてある端子があります。ここからが真骨頂!ZOOMのハンディ・レコーダーで定評のある専用マイク・ユニットを接続できるのです。マイクだけでなく入力拡張ユニットもあり、これを使えば本体と合わせて4系統のマイク/ライン入力が実現できます。
アウトが4系統あるためクリック出しも容易。高級機にも引けをとらないハリのある音質
まだまだアイディアのてんこ盛りは続きます。アナログ・アウトはTRSフォーンのMAIN OUT(1−2)のほかにRCAピン端子のLINE OUT 1(1−2)、同2(3−4)を装備しており、LINE OUT 2にクリックなどをパラ出しできます。さらにヘッドフォンは1−2と3−4のバランス・ノブが付いていて、ヘッドフォンだけ3−4のクリックをミックスしてモニターする、といったことも可能なのです。加えて前述のS/P DIFデジタル入出力(コアキシャル&オプティカル)やMIDI IN/OUTまで備えています。
この値段でこれだけ多機能でもうすべて満足。あと気になるのは音質だけということで、録音/再生の検証をしてみました。AVID HD I/Oと比較してみます。
まずは再生音の比較から、パッと聴いた感じで“なかなかいいじゃん”と声を出してしまいました。いつも聴いている曲が前に張り付いて聴こえ、ハリのある音に感じ。よく聴くとHD I/Oに比べてバスドラの超低域やシェーカーのちょっとケバケバした超高域などが若干丸く聴こえますが、コストを考えたら全然二重丸です。位相特性もなかなか良いと思います。
ヘッドフォンも非常に抜けのある音がします、何よりも中央の大きなノブ2つがメイン・ボリュームとヘッドフォン、その間にあるやや小さなノブがダイレクト・モニタリングのバランスで、これらの操作のやりやすさは群を抜いていると思います。
録音に移りましょう。音質は中域にパワーのある音です。再生音と同じくやや低域と高域が丸めてある感があるのですが、実際のミキシングや生録音の素材としてはこのくらいの方が使いやすいかなと感じました。
あと、お借りした専用マイク群と入力拡張ユニットも全部試しましたが、このマイクはいいですねえ。ありのままにというか、狙った通りに録音できます。超指向性マイクなどはほとんど使った経験が無かったのですが、こんなに使い分けできるのかと感心しました。
最後にiPadとの接続もテストしましたが、こちらもバッチリ音が出ました。幅広い用途に使える、欲張りな人にはぴったりな製品です。僕も欲張りになってきたので、ZOOMさんにリクエスト。iPadだけでなくiPhoneで、ぜひマルチ録音ができるようにしてください。あとカメラ三脚対応のネジ穴が欲しいです。


![▲ボトムのMIC IN [3-4]端子にオプションのEXH-6(7,810円)を装着したところ。これでマイク4本を同時接続可能となる。なお、姉妹機としてこのMIC IN[3-4]端子とデジタル入出力を省いた2イン/4アウト・モデルのU-24(オープン・プライス:市場予想価格14,667円前後)も発売されている](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/snrec/20220913/20220913012842.jpg)
(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年8月号より)