「ZOOM G5N」製品レビュー:先進的なモデリング技術を投入したギター用マルチエフェクター

ZOOMG5N
今回はZOOMから発売されて間もないギター用アンプ・シミュレーター/マルチエフェクターG5Nのレビューをお届けします。G5Nの前の世代にあたるG5は筆者もユーザーであり、各現場でお世話になりました。そのG5を知っているからこそ、今回のG5Nには非常に興味があり、ぜひとも使ってみたいと思っていたのです。

特にアンプのひずみが優秀
肉厚ながら空気感があり反応も良い

G5Nは、5種類のアンプ・モデリング/5種類のキャビネット・モデリング/2種類のマイク・モデリング/68種類のギター用エフェクトを搭載。アンプは、実在のモデルの回路やパーツ特性を徹底的に解析し、その結果をソフトウェアで再構築。キャビネットは、インパルス応答を用いたテクノロジーにより再現されています。エフェクトやアンプなどを組み合わせたプリセット・パッチは計100種類。Mac/Windowsに対応する2イン/2アウトのUSBオーディオI/Oを内蔵し、付属しているSTEINBERG Cubase LE 8などのDAWを使った録音が楽しめます。

それでは実際に使用して、G5からどのような進化を遂げたのか書いてみましょう。併用するのは、手持ちのエレキギターと10Wの練習用トランジスター・アンプ。まずはG5Nにギターを差し、出力をアンプへつなぎます。それからプリセット・パッチを一通りチェック。これだけでも、G5を大きく上回るサウンド・クオリティだと強く実感できます。中でも優れているのが、アンプ・モデリングのひずみ。どのモデリングも一皮むけた感のある、リアルな音です。肉厚ながら空気感のようなものを帯び、密度のバランスが絶妙。まとまりがありつつもモコモコとはしません。まさにレスポンスの良い音ですね。自身のピッキングやフィンガリングが、しっかりと届きます。

特に気に入ったアンプは、BOGNER Ecstasy Blue Channelのモデリング。筆者はこのアンプの実機を鳴らしたことがないので、比較することはできないのですが、先入観無しに音を出してみると“お! 良いひずみだ”と感じました。スムーズでありながらピッキングの強弱にはしっかりと反応しますし、ゲインを上げ過ぎなくてもロング・サステインが得られ、とにかく心地良いのです。

ペダルっぽい質感のひずみエフェクト
真空管サウンドを再現する出力部

ひずみエフェクトも、単体のペダル・エフェクトにひけを取らないクオリティ。実際のアンプと併用するときは、アンプ・モデリングをOFFにしてエフェクトでひずませることもあるので、そうした場面でも即戦力になりそうです。どれも納得のいく質感ですが、中でも気に入ったのは“GoldDrive”と“RedCrunch”。前者はブティック系のオーバードライブをモデリングしたもので、後者はエディ・ヴァン・ヘイレンばりのウォームなひずみ“ブラウン・サウンド”が得られるクランチです。どちらにもペダルっぽいまとまりがあり、扱いやすく反応が良いと感じます。

後段につないだ実機アンプのゲイン・ブースターとして使うなら、“RC Boost”もオススメ。アンプのキャラクターを変えることなく、ごく自然にゲインを上げたりサステインを加えられます。また出力の直前には、真空管サウンドをエミュレートしたアウトプット・ブースターを搭載。音量アップとともに真空管ライクな粘りやサチュレーションを加えられ、その質感をトーン・ノブで調整することが可能です。とりわけ、併用する実機アンプがソリッド系の音質である場合に効果を発揮しそうです。

ひずみ以外では、空間系やモジュレーション系などのエフェクトも充実。これらのエフェクトは最大9種類を同時に使用でき、接続順を自由に変えられるため、オリジナリティの高いサウンドも作りやすいと思います。

次にG5NをパソコンとUSB接続してみました。内蔵オーディオI/Oのチェックというわけですが、本機ではエフェクトのかかった音をDAWに送ることが可能。そこからの返しと、DAWを介さない音のバランスを自由に調整しつつモニタリングできます。DAWからの音を本体のヘッドフォン端子から聴いてみると、やはり納得の音質。キャビネット・モデリングがリアルに鳴り、ラインの音ながら太いです。“使えるサウンド”とは、このことでしょう。

専用のMac/Windows対応アプリケーションGuitar Lab(無償)を使用すれば、エフェクトやパッチを効率的に整理できるのも魅力。コンピューター上から、USB接続したG5Nに対して好きなプログラムをロードしたり、滅多に使わないものを消したりできます。本体ディスプレイだけで作業するのはストレスがたまりやすいですし、誤った操作を防ぐためにもコンピューターの大きな画面を見ることはアドバンテージとなるでしょう。

G5Nは、前モデルの良い部分を踏襲しつつ大きく進化していると思います。コスト・パフォーマンスが極めて高く、正直、本当にこの価格で良いのかと疑ってしまうほど。ギタリストの方には、ぜひ一度体験してほしいものです。

▲リア・パネルには左から、ギター・イン(フォーン)、AUXイン(ステレオ・ミニ)、オーディオ・アウトL/R(フォーンとステレオ・ミニ)、FP01やFP02などのエクスプレッション・ペダルを接続するためのコントロール・イン(フォーン)、内蔵オーディオI/O用のUSB端子、電源スイッチ、電源端子が並ぶ ▲リア・パネルには左から、ギター・イン(フォーン)、AUXイン(ステレオ・ミニ)、オーディオ・アウトL/R(フォーンとステレオ・ミニ)、FP01やFP02などのエクスプレッション・ペダルを接続するためのコントロール・イン(フォーン)、内蔵オーディオI/O用のUSB端子、電源スイッチ、電源端子が並ぶ
▲Mac/Windows対応の無償ソフトGuitar Lab。プリセットの管理やG5N本体へのインポート/本体からのデリートなどが行える ▲Mac/Windows対応の無償ソフトGuitar Lab。プリセットの管理やG5N本体へのインポート/本体からのデリートなどが行える

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年5月号より)

ZOOM
G5N
30,000円
▪エフェクト・タイプ:78(68エフェクト、5アンプ・モデリング、5キャビネット・モデリング) ▪エフェクトの最大同時使用数:9 ▪サンプリング周波数:44.1kHz ▪AD/DA:24ビット128倍オーバー・サンプリング ▪信号処理:32ビット ▪内蔵オーディオI/Oのビット&レート:16ビット/44.1kHz ▪周波数特性:20Hz〜20kHz(+1dB/−3dB) ▪外形寸法:454(W)×75(H)×225(D)mm ▪重量:3.4kg REQUIREMENTS(内蔵USBオーディオI/O) ▪Mac:OS X 10.9〜10.11 ▪Windows:Windows 7/8.1/10(32/64bit)