
制作の即戦力となる
ソフトウェアを多数バンドル
それぞれを詳しくチェックしていきましょう。ちなみにNano Studioシリーズには、ダウンロードして使うことができるiOS、Mac/Windows用ソフトウェア音源“KORG Software Bundle”をバンドルしているので、本体を買ってすぐに音楽をスタートすることができます。この付属の音源はコルグ名機をプラグイン化したKORG Legacy Collection M1 LEやUVI Digital Synsationsなど即戦力なものばかり。
まずはNanokey StudioをMacにUSB接続して演奏してみました。鍵盤はベロシティ対応の25鍵となっており、ベロシティ・カーブも演奏ニュアンスに合わせて4種類から選べます。弾いたキーが光るのもテンションが上がりますね! さらに、設定したスケールで使われる音の鍵盤が光るスケール・ガイド機能や、どの鍵盤を押してもスケールに沿ったメロディや和音を演奏できるイージー・スケール機能などを搭載。鍵盤演奏が苦手な人の手助けになるでしょう。また右上の8つのトリガー・パッドは、ドラム入力だけでなく、指1本でコード演奏ができるコード・パッド機能に使えます。演奏が得意な人も、コード・パッド機能を使ってみると、自分の好みの音色で和音のサンプルを弾いている感覚になれるので、手癖から抜け出すいいきっかけになるかもしれません(写真①)。

中央に配置された同社Kaoss Pad譲りのタッチ・パッドは、タッチ・スケール、X-Yコントロール、Pitch/Modモードがあり、指で触れるだけでシンセやエフェクトをコントロールできます。タッチ・スケールでさまざまなフレーズを生み出すことも可能です。
左上には8個のアサイナブル・ノブを搭載。ソフト・シンセのパラメーターをアサインするのにもってこいです。ノブの重さも軽過ぎず重過ぎずちょうど良いですね。タッチ・パッドでフレーズを演奏させながら同時にノブで音色を変化させたり、トリガー・パッドにオーディオ・クリップをアサイン可能なので、かなり制作を詰めることができます。そして地味ですが個々のノブやパッドの位置、レイアウトも抜群。これは感覚でしか言い表せないのですが、ノブやパッドのレイアウトが逆の位置でもちょっと違うし、絶妙なバランスだと感じました。
Bluetoothによるワイアレス接続は
レイテンシーもほとんど無く快適
続いてNanokontrol Studioをチェックしていきましょう。こちらにはストロークの長い8本のフェーダー、8個のノブ、ジョグ・ホイールなど、DAWをコントロールするために必要な操作子を備えています(写真②)。
▲写真② Nanokontrol Studioは、スライダーとノブ、Mute/Solo/Rec/Selectの4つのボタンを備えた1ch分のセクションを8つ装備。またDAWのコントロールやDJパフォーマンスに役立つジョグ・ホイールやトランスポート・ボタンも搭載している
Nanokey Studioはやはり作曲やアレンジに向いていますが、こちらはエディットやミックスに重宝しそうです。Nanokey Studioで作り上げたトラックのボリューム・バランスを取ったり、ミュートやパンの設定なども可能。お互いを補完し合える機材なのではないでしょうか。またDJ、ライブ・パフォーマンスなどにも対応できる万能マシンだと思います。僕は前機種Nanokontrol 2でDJパフォーマンスをしたことがあるのですが、Nanokontrol Studioではフェーダーのストロークが長くなった分、より繊細な表現できるようになっています。ミュートやソロのボタンにはあえて違う役割を、例えばABLETON Liveで、クリップやエフェクトのオン/オフを割り当てたり、ノブをパンではなくエフェクトのセンドに設定したりして、リアルタイムに操作するのも面白いと思います。Nano Studioシリーズのカスタマイズは、専用エディター・ソフトKORG Kontrol Editorで可能となっており、操作も容易なのがいいですね(画面①)。

最後に、APPLE iPadにBluetoothでワイアレス接続してみましょう。Bluetoothで使う場合には本体を電池駆動させる必要があるので、背面にあるUSBとBatteryのモード切り替えスイッチで、Batteryを選びます。本機は、Apple Bluetooth LE MIDIに対応しているので、Mac/iOSではドライバーは必要なく簡単に接続可能。またWindowsではBluetooth 4.0が必要で、KORG BLE-MIDI Driverを使用することで接続できます。実際にKORG Software BundleのiOS用アプリであるKORG Module LE For iPad(ピアノ/キーボード音源)をNanokey Studioで演奏してみると、レイテンシーは全く気にならず快適に使用できました。ここでもし良いアイディアが生まれたら、KORG Gadget LEにすぐ録音可能です。さらにNanokontrol Studioを使って、ロケートやフェーダー、パンの設定をしながらミキシングまで行えます。このように外出先で思いついたアイディアをiPadとNano Studioシリーズで制作し、Dropboxなどでオーディオ・ファイルをアップロードしておけば、続きを自宅のパソコンで仕上げるのも簡単です。
これまで幾つかのMIDIコントローラーを試してきましたが、Nanoシリーズはコンパクトなのに(これ重要です!)必要なノブやフェーダーはしっかりあるという点で非常に重宝していました。実際僕はNanokontrol2を使っていますが、今回のNano Studioシリーズは、ノブの位置や数、ワイアレスで使える部分など、“こうなっていたら……”が実現したものでした。普段の制作にはもちろん、ちょっと取り外してそのままモバイルでも使える気軽さはとても魅力的な機器だと思います。<
製品サイト:
(Nanokey Studio)
http://www.korg.com/jp/products/controllers/nanokey_studio/
(Nanokontrol Studio)
http://www.korg.com/jp/products/controllers/nanokontrol_studio/
(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年7月号より)