「CELEMONY Melodyne 4 Studio」製品レビュー:解析機能や音質が向上したピッチ補正ソフトの最新バージョン

CELEMONYMelodyne 4 Studio
ピッチ補正の専用ツールとして多くのユーザーから信頼されているCELEMONY Melodyneの新バージョン4がリリースされました。どのような進化を遂げているのでしょうか? 早速見ていきましょう。

機能別に4つのグレードを用意
ボカロっぽい効果も手軽に得られる

Melodyne 4は、まずすべての機能を使用できる“Studio”、複数のトラックにわたって編集可能な機能とサウンド・エディターを省いた“Editor”(60,000円)、さらに和音解析/音階編集を省いた“Assistant”(30,000円)、単音に対する基本的な編集機能のみに絞った“Essential”(12,000円)という4つのグレードで構成。すべてスタンドアローンのほかVST、Audio Units、RTAS、AAXプラグインとして動作します。

基本的な使い方としては、ピッチを編集したいトラックにMelodyneを立ち上げて“Transfer”ボタンを押します。これはDAWで言うところの録音ボタンのようなもので、読み込みたい個所を再生し停止すればMelodyneに必要なオーディオを転送、自動で音声が解析されピアノロールに波形が表示されます。波形に見えるのは“ピッチセンター”と呼ばれるもので、ノートごとの音程を表します。音程を移動させる場合はこの波形をつまんで上下左右に動かすという具合です。また、ピッチセンターの中にうねうねと上下する曲線が描画されます。これは“ピッチモジュレーション”といい、音の中の細かい揺れを解析したものです。実際のピッチ編集では、このピッチセンターをつまんで上下し楽曲の調性に合わせたり、ピッチ・モジュレーションで音程の揺れ具合を調節します。

音程だけでなく、タイミングが良くない音に対してはノートの分割ツールを用いて波形を切り分け、左右に動かすことで編集が可能です。分割ツールには“ソフトな分割”と“ハードな分割”の2種類があります。前者は、その分け目を起点に前後させてタイミングを調整でき、編集に応じて前後の波形が自動でタイム・ストレッチされます。後者ではタイム・ストレッチがキャンセルされ、DAW上の波形と同じような感覚で切り分けます。

ANTARES Auto-Tuneを極端にかけたケロケロ声が市民権を得て久しいですが、Melodyneを使用した場合、ピッチ・モジュレーションを語尾までまっすぐにできるうえ、編集にかける時間も短くて済みます。この効果をさらに押し進めて、人間の歌声をボカロっぽい処理にすることも簡単にでき、その強度も自由に調節できるので、人間とボカロの間を取ることも可能。“Auto-Tuneエフェクト”と言いつつ、実はMelodyneを使っているクリエイターは、筆者の周りにも多くいる印象です。

強化された和音解析機能DNA
複数トラックにまたがっての調整も可能

Melodyneには2009年に実装されて以来、進化を遂げてきた優れた機能があります。StudioとEditorのみに装備されている和音解析機能です。Direct Note Access(DNA)といい、ポリフォニック(和音)で入力された音を単音へと分離させます。バージョン4ではこの機能がさらに進化しました。和音解析のアルゴリズムに“ポリフォニック・サステイン”“ポリフォニック・ディケイ”が用意され、前者はその名の通り長い持続音に対して、後者はギターなど減衰する音源に対して有効に働きます。和音を解析して何ができるかというと、例えばアコースティック・ギターのアルペジオ演奏のアルペジオの音の並びを変えたり、ピアノのバッキングで演奏したメジャー・コードをマイナーにしたり、7thを加えるといった具合。もちろんミス・トーンも修正できます。また音階/調律による音程の編集も可能で、クラシックで使用される純正律に対応していたり、演奏のクセを調律として解析し音程グリッドとして表示できるので、これを元にノートを透明性のあるハーモニーへと編集できます。

Studioであれば、複数のトラックにおいて包括的に編集作業を進めることもできます。例えばトラックに分けて録音したコーラスの音程を修正しつつリズムを整えたり、リード・ボーカルを参照しながらハモリのラインを構成したりという使用法です。実際にSTEINBERG Cubase、ABLETON Liveなどで作業してみましたが、各トラックに立ち上げたMelodyneがまとまって1画面に表示され(画面①)、操作したいトラックをボタンなどで選択します。再生、停止などの操作は原則的にホストDAWに依存しますが、Melodyne 4はショートカットが変更できるようになり、格段に扱いやすくなりました。

▲画面① Melodyne 4 Studioに実装されたマルチトラック編集機能。画面ではDAW上の4つのトラックに立ち上がったMelodyne 4を1画面に集約して表示しており、楽曲のハーモニーやメロディ、リズムなどを包括的にコントロール可能になっている ▲画面① Melodyne 4 Studioに実装されたマルチトラック編集機能。画面ではDAW上の4つのトラックに立ち上がったMelodyne 4を1画面に集約して表示しており、楽曲のハーモニーやメロディ、リズムなどを包括的にコントロール可能になっている

操作性ばかりでなく、音質面の向上も強調しておきたいポイントです。例えば数十本のコーラスを数時間でまとめなくてはならない状況などは頻繁にあります。この場合、編集した各チャンネルのオーディオの音質が少しでも劣化すると、良い結果は出ません。今回のアップデートで筆者が一番うれしかったのは、音質の向上です。こぶしの効いた歌い回しなど、ノート内での音程変化が急激な個所を編集しても、音程の推移をできる限り自然な形でつなげてくれたりします。この滑らかさや、倍音を含めた音程をより正確に把握できるようになったことが、これまでより深めに編集しても明らかに音質劣化が少なく、良い結果につながっていると感じました。

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年4月号より)

CELEMONY
Melodyne 4 Studio
100,000円
REQUIREMENTS ▪Mac:OS X 10.6.8以降、INTEL Dual Coreプロセッサーを搭載したコンピューター(Quad Core以上を推奨)、4GB以上のRAM(8GB以上を推奨) ▪Windows:Windows 7以降、INTELまたはAMD Dual Coreプロセッサーを搭載したコンピューター(Quad Core以上を推奨)、4GB以上のRAM(8GB以上を推奨)