
単三乾電池で約30時間駆動する送信機
LEDで各種情報を伝える受信機
WMS40 Pro Mini Vocalを箱から取り出してみると、まずはそのコンパクトさに驚きました。受信機用のラック・マウント金具もオプションで用意されていますが、かばんに入れていろいろな会場へと持ち運ぶのも良さそうです。重さは受信機が466g、送信機が192gと非常に軽量。筐体は従来の製品の流れをくんだブラックの仕上げで、特に送信機は細身の円すい形で持ちやすいです。この送信機は単三アルカリ乾電池1本で約30時間駆動させることができ、ランニング・コストの削減に貢献。同じ単三であれば、ニッケル水素充電池やリチウム乾電池にも対応します。さらには本体上のLEDで、電池残量を確認できるのも便利。電源スイッチはスライド式で、OFF/ミュート/ONを手元で切り替えられます(写真①)。

受信機は、電源のONや電波の正常な受信、過大入力を示すLEDを装備。少し注意すべき点はボリューム・ツマミが出力音量になっていることで、使用中に動かさないようにしないと、事前の調整が無意味になってしまいます。オーディオ・アウトはTRSフォーンの端子1つのみ。もちろん通常のフォーンで接続することも可能です。
テスト中の音切れは無かった
音色は歯切れが良くて好印象
先日、あるショッピング・モールの弊社が管理している野外ステージでイベントがあったので、持ち込んで使ってみることにしました。この会場は周囲をぐるっとお店が囲んでいて、本番では司会を務めるプロのMCの方に試してもらうことにしました。
会場に入ると早速セッティング。まずは受信機を音響機器のあるPAブースに設置しました。MCが立つステージとは8mくらいの距離です。受信機とミキサーの接続には、TRSフォーンからXLRへの変換ケーブルを使用。ミキサーの入力ゲインはライン・レベルで大丈夫でした。そして受信機のボリュームを3時くらいに設定し、送信機にアルカリ乾電池を入れてセッティングは完了。それ以外の設定は必要無いので、とても簡単でスピーディです。
まずはブース内で、送信機に自分の声を入れてみました。音色/レベル共に問題ありません。次はステージにマイクを持って行ってしゃべってみると、これも特に音が途切れる様子は無く、安定して使用できました。送信機のゲインは比較的高めですが、この機材が使用される環境を想定すると使いやすい設定でしょう。オフマイク気味でチェックしてもしっかりと音を拾っていて、音色も歯切れ良く奇麗ですので好印象です。本番についても、準備のときと同様に安心して運用できました。ただし送信機の軽さ故なのか、ミュートをONにする際、スイッチのハンドリング・ノイズが入ってしまう場面も。とは言え特にこうしたイベント会場で使用する場合、ミュート機能というものは大変便利で、とても助かりました。
今回はボーカル・マイクとしては使いませんでしたが、運用できる周波数が808.625MHzもしくは809.125MHzに固定されているため、そこを自由にプランできるようになればより使い道が広がると感じます。お店などに常設する場合のワイアレス・マイクとしては、電波の安定性や音色がマッチしていてオススメです。
ワイアレス・マイクは、実際の運用状況を考えた上で導入するのが大切です。このWMS40 Pro Mini Vocalは価格帯や使用に際しての簡単さ、音色が良いことで、イベント会場や店舗の常設機材、ライブでのワイアレス・マイクの候補に挙げて良い機材と思えます。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年3月号より)