「SEIDE EC-ME」製品レビュー:ポップなデザインの単一指向性エレクトレット・コンデンサー・マイク

SEIDEEC-ME
SEIDEは創業10年余りと新しいマイクロフォン・ブランドではありますが、個人で購入できる価格帯でのコンデンサー・マイクの展開に定評があり、新興ブランドの中では定番の一つに数えられています。ブランド名の“Seide”はドイツ語で“絹”を意味するとか。その名に違わずシルキーな音色を聴かせてくれるのか、実力をチェックしていきましょう。

小型カプセルの採用により
高感度/低ノイズを実現

今回テストするEC-MEは、単一指向性のエレクトレット・コンデンサー・マイクです。フル・アルミニウム・コーティングの小型カプセルを使用し、高感度/低ノイズを実現しています。最大入力SPLは135dBと高め。これはNEUMANN U87でPADを入れたときよりも高く、かなり大音量にも耐えられる仕様です。バス・ドラムに立てない限り問題ないレベルなので、宅録環境では何でも録れると思って良いかと思います。S/Nは76dB、周波数特性は30Hz~18kHz。現行のスタジオ定番マイクと比べると、少しだけ狭く感じますが、1970年代のマイク、NEUMANN U47 FETなどと同じくらいと考えると、日常的に使うものとしては優秀過ぎると言えるでしょう。

エレクトレット型ではありますが、電池駆動ではなく48Vのファンタム電源が必要です。PADやハイパス・フィルターは省いたシンプルな設計。ショック・マウントとマイク・ケーブル、スポンジ型のウィンド・スクリーンが付属します。ボディ・カラーはブラックとホワイトの2種が用意されており、ホワイト・モデルの方はロゴがピンク、ショック・マウントがエメラルドグリーンとポップなカラーリングになっています。

ところでエレクトレット・コンデンサー・マイクとは? 普通のコンデンサーじゃないの?と疑問の声も挙がるかと思います。両者の違いは、一般的なコンデンサー・マイクはDCバイアス型と言って、バック・プレートに直流電圧をかける必要があるのに対し、エレクトレット型は半永久帯電素子を代わりに使用していることです。小型化できるため、ヘッドセットなど簡易なマイクにも使われているのですが、安くて音が悪いと思い込んでいる方も多いはず。けれども実は、国産メーカーのスタジオ用マイクでも使われている方式なので、方式自体の問題ではないことが分かります。要は出音!ということで、実際にチェックしてみましょう。

コンデンサーの質感を持ちながら
ダイナミック・マイクのレンジ感

まず開封して目についたのが、カラーリング。こちらに届いたのはホワイトのモデルなので特にだと思いますが、機材というより家電という印象を受けました。ドライヤーなどと同じ種類のもので、女の子の部屋に置いてあっても違和感のなさそうな雰囲気です。小ささや軽さもイメージに影響しているのかもしれません。ボディの重量は210gとかなり軽量。U87の半分以下、AKG C414の2/3程度しかありません。これなら卓上の小さなブーム・スタンドに設置しても、お辞儀をしてしまったり倒れたりといったアクシデントも少なそうですね。

そして、驚いたのが値段。検索してみたところ、実売価格が7,000円を切っていますね。一般的なダイナミック・マイクに比べても、かなり安いです。今回はボーカルやアコースティック・ギターをU87やC414と比較してみました。

まずはボーカルから。予測はしていましたが、定番マイクとは全然違う音ですね。200Hzから下の量感を感じる周波数がざっくりと落ちていて、中高域に張り出しがある感じです。ぱっと聴いて思い浮かんだのが、ザ・バグルスの「ラジオスターの悲劇」でした。コンデンサーのサラサラした質感はありつつも、ダイナミック・マイクのレンジ感。最近の安価なコンデンサー・マイクのような高域のギラつきはありません。近付いても低域がボワつかないので、ウィスパー系の録音では使いやすいかもしれませんね。次にアコギです。こちらはずいぶんとカワイイ音になりました。カラっとした録り音で、ほかのマイクより音が近くに感じます。EQで上下を切ったような不自然な感じ無しに、エフェクトをかけたようなまとまりがありました。

打ち込みがメインで生音をひと味足したい、だけど生の録音やミックスは不慣れで苦手というユーザーにはお薦めなマイクです。原音に忠実に余分な音までキャプチャーするマイクより、本機のように加工済みの音になる方が、サンプル素材として使いやすいのではないでしょうか? 既に高級なマイクを持っている方でも、キッチュで明るい雰囲気の味付けをしたいときには重宝すると思います。トイ・カメラのような楽しさのあるマイクです。

▲ブラックのカラー・モデルに付属のショックマウント・アダプターを装着した状態。付属品はこのほかに、マイク・ケーブルとウィンド・スクリーンがあるので、すぐに録音できるのがありがたい ▲ブラックのカラー・モデルに付属のショックマウント・アダプターを装着した状態。付属品はこのほかに、マイク・ケーブルとウィンド・スクリーンがあるので、すぐに録音できるのがありがたい

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年2月号より)

SEIDE
EC-ME
オープン・プライス(市場予想価格:6,500円前後)
▪形式:エレクトレット・コンデンサー ▪指向性:単一 ▪周波数特性:30Hz〜18kHz ▪感度:-36dB±2dB(0dB=1V/Pa@1kHz) ▪S/N:76dB ▪出力インピーダンス:250Ω ±30% ▪負荷インピーダンス:≧1,000Ω ▪等価雑音レベル:18dB A ▪電源:DC48Vファンタム 3mA ▪外形寸法:40(φ)×157(H)mm ▪重量:210g ▪付属品:ショックマウント・アダプター、マイク・ケーブル、ウインド・スクリーン