
フィット感の良い大型イア・パッド
全体的にナチュラルなサウンド傾向
まずは見た目ですが、プロユースというだけあって、とてもしっかりした作りで高級感があります。合成レザーのイア・パッド、アルミ・ダイキャスト製のアーム、ケーブルは程良く柔らかいストレート型を採用しており、取り回しが良く、さまざまなシチュエーションに対応できるようになっています。
見た目はとても重厚感のあるイメージですが、実際に装着してみるとそれほど重さを感じず、長時間の作業でも苦にならないと思いました。フィット感も程良く、大型イア・パッドで耳全体を包み込んでくれる安心感があり、ヘッドバンドにもしっかりとクッションが入っていますので痛くならなくて良いです。密閉度も高いので外部からの音も入りにくく、外出時の作業でも周りの環境音を気にせず作業に没頭できるでしょう。
それでは肝心のサウンドを聴いてみましょう。僕は普段から同社のHPH-MT220を愛用しているのですが、同機種と同じカスタム・ドライバー(CCAWボイス・コイルと強磁力ネオジム・マグネットを採用)を使っているだけあって、音の傾向も似ている部分がありました。全体的にナチュラルなサウンドの傾向で、良いバランスなのです。厚みのあるイア・パッドのおかげでエア感があり、ベースなどの低音楽器のモニタリングもしやすく、長時間聴いていても疲れにくいです。輪郭もハッキリしているので定位感も分かりやすいと思いました。
具体的なソースとして、まず歌モノ・ポップス系で試してみましょう。ボーカルの存在感もしっかりあり、音像も広く少し明るめです。エイジングして落ち着いてくるとちょうど良いバランスだと感じました。今時の音数の多い楽曲の中でも各楽器が分離良く聴こえるので、自宅作業はヘッドフォンがメインという方にも良いでしょう。
次にダンス・ミュージック系の楽曲を聴いてみました。打ち込み系のリズム、シンセ・ベースの低音にダブ付きもなくとても分離が良いです。低音が出過ぎてほかの音がマスキングされることもなくクッキリハッキリと輪郭があります。定位も分かりやすくボリュームを上げても音が飽和することなくモニタリングできます。
続いてギター・ロック系の楽曲を聴いてみましょう。ひずみギターの音がとても気持ち良いですね。中低域はややスッキリしていますが、ヌケが良くカラッとした音色です。ピッキングの粒立ちも良く、ベース・ラインや音程感も見えやすいです。ドラムもとてもタイトにモニタリングできるので、タイミングにシビアな判断が必要とされるレコーディング時のモニター用ヘッドフォンとしても重宝しそうですね。
最後にコンサートのライブ音源も聴いてみました。アンビエンスが気持ち良くとても臨場感があります。これはリスニング用としても良いですね。
モニタリングとリスニングを兼ね備えた
コスト・パフォーマンスに優れたモデル
ざっと駆け足でチェックしましたが、いろいろなソースで聴いてみて、とてもバランスの取れた使いやすいヘッドフォンだと実感しました。
ヘッドフォン選びは、スピーカー選びと共通している部分があります。それは、“気持ち良く聴こえるもの”か“なるべくフラットで派手過ぎないもの”というポイントです。作曲やアレンジなどの制作時にはなるべくテンションを上げたいので、細かいことは気にせず気持ち良く作業できるものが良く、ミックスなどの細かい作業をする場合は、音が派手過ぎると相対的に仕上がりが地味になってしまう傾向があり、この辺りが製品選びとしてなかなか難しいところですね。今回レビューしたHPH-MT7は、どちらかというと“気持ち良く作業する”という用途にベストだと思います。なので、自宅作業がメインのクリエイターに大変オススメできますね。とは言え派手過ぎたり、ドンシャリ傾向な音ではありませんので、ミックスなどに使ってもとても良い仕上がりになるのではないでしょうか。リスニング時の気持ち良さも兼ね備えているので、モニター・ヘッドフォンとしてのコスト・パフォーマンスに優れた製品だと思います。


(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年2月号より)