「MACKIE. FreePlay」製品レビュー:電池/AC電源の両方で駆動するモバイル仕様のPAスピーカー

MACKIE.FreePlay
今の時代、スマートフォンやタブレットの所有は当たり前になりつつある。譜面表示や音源再生、デジタル卓の調整もこういったスマート・デバイスによるコントロールが業界標準と言っても過言ではない。そんな時代の流れにピッタリの可搬型パワード・スピーカー、FreePlayがMACKIE.から発売された。

Bluetooth対応機器とワイアレス接続し
音楽再生やミキシングが行える

FreePlayは、低域に8インチ・ウーファー×1、高域に1インチ・ツィーター×2を装備。ステレオ・フル・レンジ再生に対応し、内蔵パワー・アンプの出力は300W(ピーク)だ。サイズは452(W)×241(H)×231(D)mmとコンパクト設計なので、大きめのカバンには入る。重量は5kgで、何かと荷物の多いミュージシャンや女性にとってうれしい。こんなにコンパクトなのに4chデジタル・ミキサーが内蔵されているのに驚くが、さらにBluetooth対応のプレーヤーとワイアレス接続して音楽をストリーミング再生できたり、iOS/Android用無償アプリのFreePlay ConnectによるBluetooth経由のミキシングや各種遠隔操作が可能なのだ。キュー・ボックスが手元にあるような感覚である。アプリではボーカル用リバーブやディレイなど16種類もの内蔵エフェクトを選択することもでき、チャンネルごとにエフェクト・レベルも決められる。そのほかに3バンドのチャンネルEQが備わっていたり、マスター用のEQモード4パターン(FLAT/DJ/SOLO/VOICE)を用途に応じて切り替え可能だ。ライブPAの天敵であるハウリングは、内蔵の“フィードバック・デストロイヤー”によって除去できるので、安心して音量が上げられる。ピーク/RMSリミッターや温度保護回路も内蔵しているので、連続使用でもスピーカーへのダメージを軽減してくれる。

フラットな周波数特性
ミュージシャンにも喜ばれる操作性

リア・パネルのマイク/ライン・イン(XLR/TRSフォーン・コンボ)にSHURE Beta 58Aを接続して声を出してみる。最初から“このマイクに合わせて設計してあるのか?”と思うほどナチュラルで違和感なく音が出たのには驚きしかない。業界で一般的な計測ソフトで確認してみたら、思った以上にフラットな周波数特性で二度ビックリ。次にAUXイン(ステレオ・ミニ)へつないだCDプレーヤーと、Bluetooth接続の携帯音楽プレーヤーから音楽を再生してみた。バランス的にはCDよりも、MP3やM4Aなど不可逆圧縮の音源の方が聴覚上しっくりくる感じの音作り。なおAUXインが優先されるので、AUXインとBluetoothを同時に使おうとすると後者の音源はカットされる。このサイズでステレオ出力対応とは信じがたいが、確かにそれらしい音の広がりがある。大きさからして、すごいとしか言えない。もう少し低音が欲しいと感じたが、小型/軽量なので限界はあるだろう。

リア・パネルにはマイク/ライン・インが2chあるので、ボーカル2名+ステレオ・バッキングのパフォーマンス、ボーカルとギターの弾き語りなどがこれ1台で賄える。譜面台にFreePlay Connectを入れたタブレットを置き、ミュージシャンに使ってもらったところ、“音量やバランスを手元で操作できるのがうれしいし楽! ストリートでやっていたころにこういうのが欲しかった!”との声をもらった。ミュージシャンが手軽に扱えて安価な機材は少ない。そういう意味で、ようやく理想的なアイテムが出てきたのではないか。公共ホールでメイン・スピーカーとして使うにはちょっとパワー不足でありBluetooth接続の不安は拭えないが、スタンドに立てられるPole Mount、ミュージシャンの足元に設置する際に便利なKickstandなど、オプション品を使えばステージ・モニターになる。

こうした小型システムが使われるシチュエーションは意外と多い。例えばカフェ・ライブ、ストリート・ダンス、小規模イベント、ワークショップ、学校の教室、町内会イベント、ダンス系のリハーサル、そして結婚式の二次会演出など。ちょっと拡声装置が欲しい現場で活躍するシステムだ。防水仕様ではないので、野外で使う際は屋根のあるところに設置してほしい。

そのほか可搬型最大の魅力が“電源”。リチウム・イオン・バッテリーが内蔵されており、何と最大10時間連続で使用できる。もし充電が足りなければ市販の単一電池×8本での駆動も可能だ。とにかく小規模イベントやストリートPAに最適なアイテムの出現! さすがはMACKIE.だ。

▲リア・パネル。左から電源スイッチ、電源端子、マイク/ライン・イン(XLR/TRSフォーン・コンボ)×2、AUXイン(ステレオ・ミニ)/Bluetoothレシーバー、モニター・アウト(フォーン)、入出力レベル・メーター、インプット・チャンネル1&2の選択ボタン、メイン・アウト選択ボタン、AUXイン/Bluetoothイン選択ボタン、レベル・ノブ(各入出力/エフェクト)、内蔵エフェクトのうち4プリセットを選べるFXボタン、フィードバック・デストロイヤーのON/OFFボタン、メインEQの選択ボタンが並ぶ ▲リア・パネル。左から電源スイッチ、電源端子、マイク/ライン・イン(XLR/TRSフォーン・コンボ)×2、AUXイン(ステレオ・ミニ)/Bluetoothレシーバー、モニター・アウト(フォーン)、入出力レベル・メーター、インプット・チャンネル1&2の選択ボタン、メイン・アウト選択ボタン、AUXイン/Bluetoothイン選択ボタン、レベル・ノブ(各入出力/エフェクト)、内蔵エフェクトのうち4プリセットを選べるFXボタン、フィードバック・デストロイヤーのON/OFFボタン、メインEQの選択ボタンが並ぶ
▲レコーディング・ブースでFreePlayを試しているシーン。コントロール・アプリFreePlay ConnectをAPPLE iPadに入れて使っている ▲レコーディング・ブースでFreePlayを試しているシーン。コントロール・アプリFreePlay ConnectをAPPLE iPadに入れて使っている
▲FreePlay Connectのフェーダー画面。FreePlay本体の4chミキサーをリモート・コントロールできる。このアプリは、iOS 7.1以降もしくはAndroid 4.1以降に対応している ▲FreePlay Connectのフェーダー画面。FreePlay本体の4chミキサーをリモート・コントロールできる。このアプリは、iOS 7.1以降もしくはAndroid 4.1以降に対応している

製品サイト:http://mackie-jp.com/speakers/freeplay/

サウンド&レコーディング・マガジン 2015年12月号より)

MACKIE.
FreePlay
オープン・プライス(市場予想価格:64,000円前後)
▪スピーカー構成:8インチ・ウーファー(低域)+1インチ・ツィーター×2(高域) ▪内蔵パワー・アンプ:クラスD ▪パワー・アンプ出力:300W(低域150W+高域75 W×2/ピーク) ▪周波数特性(−10dB):65Hz〜20kHz ▪クロスオーバー周波数:3kHz ▪外形寸法:452(W)×241(H)×231(D)mm ▪重量:5kg