
ソースや設置場所に合わせて
音質を選べるDSPのモード
EKXシリーズのキャビネットはいずれも15mm厚の木製。軽量かつコンパクトで、EKX-12Pは375(W)×607(H)×356(D)mm/18.8kg、EKX-15SPは530(W)×455(H)×551(D)mm/26.2kgのサイズ/重量だ。2ウェイ・モデルには、独自の“Signal Synchronized Transducer”(SST)ウェーブ・ガイドやシリーズ専用に開発されたウーファー・ユニットが採用され、大音量時も指向性や音質が崩れにくい。パワー・アンプの方式はクラスDで、出力は最大1,500W。内蔵の“QuickSmartDSP”の温度管理を行うファンが備わっており、複数のオンボード・センサーによって速度が調整される。
DSPのコントロール・メニューは多岐にわたり、ソースに応じた音質を選べる“MODE”(全4種類)、設置場所に合った音質を選択できる“LOCATION”(全4種類)、サブウーファーと組み合わせる際のクロスオーバー周波数を設定可能な“SUB”(OFFを含め全8種類)、3バンドEQ、フロントLEDの設定(点灯/消灯/内蔵リミッターのかかり具合)、環境設定、5種類のユーザー・プリセットのストア/リコールなどが挙げられる。リア・パネルにはマイク/ライン・イン×2やライン・インL/R、リンク・アウトといった入出力のほか、マスター・ボリュームとDSPを操作するためのノブを装備。設置方法についてもバリエーション豊かで、ポール・マウントや足元への設置、壁への取り付け、つり下げなどが可能だ。
サブウーファーは、スロット・ポートに十分な容積を設けたことで、ひずみの少ない音質と伸びやかな低域を実現したという。クラスDアンプの出力は最大1,300Wで、2ウェイ機と同様にDSPも備えている。コントロール・メニューには、ステージへの回り込みを軽減したり、安定したカバー・エリアを作り出すためのカーディオイド設定などがある。リアの入出力は2chで、各チャンネルにマイク/ライン・インとライン・アウトを1つずつ配置。
各帯域のバランスが良い“MUSIC”
低域を強める“CLUB”
まずは電源を入れたばかりの初期状態で、コンピューターから歌モノやエレクトロ、ロック、R&B、クラシックなどさまざまなジャンルの楽曲ファイルを再生。DSPのMODEはデフォルトの“MUSIC”だ。音質は各帯域のバランスが素晴らしく、どのジャンルも聴き疲れしない。MODEを“CLUB”に切り替えると低域が出っ張り、キックやベースの迫力が増す。しかし単に低域が持ち上がるのではなく、中域や高域のバランスも合わせて変化しているので嫌味は無く、あくまで味付けが変わったという印象だ。次にマイクでワン・ツーしてみると、“MUSIC”では少し低域が強いように感じたので、“LIVE”を選んでみた。すると125Hz辺りから自然に下がる印象で、ボーカリストに歌ってもらう場合も強めのEQなどは不要だろうと感じた。続いてMODEを“SPEECH”に変えると、低域がごっそりとカットされた。今回の環境では物足りなく感じたが、周囲に雑音が多い場合は抜けが良く聴こえるだろう。
サブウーファーと組み合わせる際は、クロスオーバー周波数を80/100/120/150Hzから選べるほか、シリーズ製品のEKX-15SPやEKX-18SP、そして同社ELX-118Pに最適化された設定を選択可能。併用したEKX-15SPについては非常に性能が良いサブウーファーという印象で、迫力のある気持ちいい低域が得られた。
今回はEKX-15SPにEKX-12Pをポール・マウントして試したが、各スピーカーのDSPを設定するのに少々忙しかった。しかしそれをも一瞬で忘れさせる音質の良さ、そして迫力はとても魅力的で、リスナーに音楽の素晴らしさを存分に伝えられる製品となっている。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年12月号より)