「JBL PROFESSIONAL Eon612」製品レビュー:新開発のウェーブ・ガイドを搭載するPA用パワード・スピーカー

JBL PROFESSIONALEon612
JBL PROFESSIONALのPA用スピーカーEonシリーズが一新され、Eon600シリーズとなって発売された。2ウェイ・パワード・スピーカーが3機種そろっており、それぞれ低域のドライバー径が10インチのEon610、12インチのEon612、15インチのEon615となっている。今回はEon612をチェックした。

iOS/Androidデバイスから
Bluetooth経由で各種設定が行える

Eon612は、前Eon500シリーズの丸みあるルックスから変ぼうを遂げた“角ばった”デザイン。上下左右のハンドルも相まって、屈強さを感じさせる。サイズは378(W)×660(H)×320(D)mm。エンクロージャーがポリプロピレン製ということもあり、重量は14kgと12インチのパワード・スピーカーとしては軽めだ。ユニット構成は12インチ・ウーファー+1インチ・ドライバーで、パワー・アンプの方式はクラスD。低域700W+高域300Wのバイアンプ駆動となっており、クロスオーバー周波数は1.8kHzだ。設置方法については、底面のソケットでスピーカー・スタンドやポールなどにマウント可能なほか、トップ・パネルの2カ所とリアの1カ所にあるM10サスペンション・ポイントを使ったリギングにも対応している。

リア・パネルには、XLR/TRSフォーン・コンボのマイク/ライン・インが2つとそれらのゲイン・ツマミ、ゲイン通過前の信号をミックスして出力できるXLRのスルー・アウト、マスター・ボリューム・ツマミ、内蔵リミッターのインジケーターなどを配置。さらに上部の“EQ PRESETS”ボタンで“MAIN”“MONITOR”“SUB”“SPEECH”の各設定を切り替えられるほか、“BLUETOOTH”ボタンでiOS/AndroidデバイスとのBluetooth接続、“EQ+”ボタンでiOS/Android用の無償アプリEon Connectで設定したEQのON/OFFが行える(写真①)。Bluetooth接続したデバイスからはEQプリセットの切り替えやマスター・ボリュームの調整はもちろん、スピーカー本体では操作できない3バンド・パラメトリックEQ、高域/低域のシェルビングEQ、ディレイも設定可能だ(画面①)。

▲写真① リア・パネルの上部。4つのEQプリセットを切り替えられるボタン(写真左下)、iOS/AndroidデバイスとのBluetooth接続をON/OFFするボタン(同左上)、専用のコントロール・アプリEon Connectで設定したEQを適用させるためのボタン(同右下)などが並ぶ ▲写真① リア・パネルの上部。4つのEQプリセットを切り替えられるボタン(写真左下)、iOS/AndroidデバイスとのBluetooth接続をON/OFFするボタン(同左上)、専用のコントロール・アプリEon Connectで設定したEQを適用させるためのボタン(同右下)などが並ぶ
▲画面① Eon Connectの画面。iOS 7.1以降/Android OS 4.4以降の端末に対応している ▲画面① Eon Connectの画面。iOS 7.1以降/Android OS 4.4以降の端末に対応している

中高域のつながりがスムーズ
フット・モニター時はミラー設置可

今回は野外のライブ・イベントに持っていき、スタンドに立ててステージのサイド・モニターとして使用してみた。ケースから本体を取り出すと、かなり軽く感じる。スピーカーは、持ち方やハンドルの位置によって“体感的な重さ”が違ってくるものだが、本機はちょうど良いところにハンドルがあり、それも軽く感じる要因だろう。

チューニングの段階では、EQプリセットをMAINモードに設定。4〜8kHzがやや持ち上がっており、クッキリとした音質だ。1kHz近辺に若干のピークを感じたが、これはステージ上部の仮設テントの影響もあるように思えた。低域はタイトで好印象である。

次にスペクトラム・アナライザーを使用して、各プリセットの違いをチェック。MAINに対しMONITORは100Hz以下が緩やかに落ちていて、床置きのときの低域の膨らみを抑えられる。SUBはサブウーファーとの併用を想定したもので、どうやら120Hz前後のハイパス・フィルターのよう。MONITORよりスロープが急な感じだ。SPEECHは、500Hz以下を若干抑えた特性となっている。

今回はスタンド立てということで、MAINモードを使うことにした。マイクでワン・ツーしてみると、あらためて中〜高域のつながりがスムーズだと感じた。これは新開発のウェーブ・ガイド“パターン・コントロール・アパチャー”の効果だと思われる。中域の指向性を大きく拡張することで、エリア全域で低域〜高域を滑らかにつないでいるそうだが、まさにその通りの印象だ。

本機はフット・モニターとしての使用も配慮されている。この手のパワード・スピーカーでは、左のサイド・パネルを下に置いたときと右のサイド・パネルを下にしたときとでツィーターの向きが変わってしまうので、ボーカルのフット・モニターをダブルにするときなどは左右対称にならず使いにくい。しかし本機は左右のどちらでもツィーターの向きが変わらないため、ミラー設置が行えるのだ。また消費電力が55W(1/8パワー時)と低いためカフェ・ライブなどにも最適で、メインとモニターで使う台数を合わせても、家庭用コンセント1回路で十分賄える容量。ミュージシャンがセルフ・モニターとして持ち歩くのも便利だし、価格も10万円を切っているので導入もしやすいだろう。機材庫から持ち出す頻度が高そうな機材だと感じる。

▲リア・パネルには2chの入力が設けられている。各チャンネルはマイク/ライン・イン(XLR/TRSフォーン・コンボ)と入力レベルの切り替えスイッチ、ゲイン・コントロールを装備。写真中央下の端子はスルー・アウトで、両チャンネルの入力をミックスして出力可能。ただしゲイン前段の信号が送られる ▲リア・パネルには2chの入力が設けられている。各チャンネルはマイク/ライン・イン(XLR/TRSフォーン・コンボ)と入力レベルの切り替えスイッチ、ゲイン・コントロールを装備。写真中央下の端子はスルー・アウトで、両チャンネルの入力をミックスして出力可能。ただしゲイン前段の信号が送られる

製品サイト:http://proaudiosales.hibino.co.jp/information/3267.html

サウンド&レコーディング・マガジン 2015年12月号より)

JBL PROFESSIONAL
Eon612
88,000円/1本
▪スピーカー構成:12インチ・ウーファー(低域)+1インチ・コンプレッション・ドライバー(高域) ▪パワー・アンプ方式:クラスD ▪パワー・アンプ出力:1,000W(ピーク) ▪クロスオーバー周波数:1.8kHz ▪周波数特性:48Hz〜20kHz(−10dB) ▪外形寸法:378(W)×660(H)×320(D)mm ▪重量:14kg